下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

青年団第98回公演 子ども参加型演劇『サンタクロース会議』@こまばアゴラ劇場

青年団第98回公演 子ども参加型演劇『サンタクロース会議』@こまばアゴラ劇場


 青年団平田オリザ)には会議シリーズ(会議もの)という系列の作品がある。登場人物が会議の場で論じ合うことをそのまま観客の前で提示し、そこでの問題群を観客に自分自身で考えてもらおうという内容だが、歴史に材をとった「ヤルタ会談」「御前会議」、平田版「忠臣蔵」がその系列に入る。子ども参加型演劇と銘打っていることからそういうなかでは異色の作品ともいえるが「サンタクロース会議」もそうした作品のひとつと言っていいであろう。
とはいえ、この作品の特徴はそれだけではなくて、サンタクロースにまつわる様々な疑問、問題を話し合う会議に会場の子どもたちにも意見を聞き、発言をさせる場面を用意しており、子どもたち自らを参加させる仕掛けを設けていることだ。もちろん、子どもたちがどのような発言をするかにはあらかじめ想定はあるのだが、なかには予想外の発言をする子どもたちもおり、そういうのも踏まえて、臨機応変に進行していくことができるような構えに「サンタクロース会議」はなっており、そうすることで客席前方のエリアに陣取る子どもたちの反応が最初は慣れない経験に緊張していたのが次々と「はい」「はい」と自ら手を挙げて参加するように活気に溢れた空気感が生まれてくるのが素晴らしかった。
 最近は公立ホールなどを中心に子ども向け演劇の企画は珍しくないが、私の観劇経験からすると子どもが本当に楽しんでいるものは多くはない。
 この種の企画としては老舗格といえる円子どもステージなどはやはり前方に子どもエリアを設けて、舞台上の俳優と子どもたちの間にやりとりをさせる演出を多用するなど、長年の経験が生きたノウハウが生かされて、子どもも大人も楽しめるものになっているのだが、青年団のこの作品にも以前から付き合いもあるそうした集団のノウハウを学んで取り入れたのではないかと思わせるものがうかがえる。
 

作・演出:平田オリザ
サンタクロースはいるの? どこから来るの? 普段は何をしているの?
世界中の子どもたちの、永遠の問いかけに正面から答えます。
全国各地で大好評、親子で楽しめる参加型演劇。

サンタクロースの存在を信じている
すべての子どもと大人のための会議に、ようこそ。

こまばアゴラ劇場地域貢献公演》

平田オリザ
1962年東京都生まれ。劇作家・演出家。青年団主宰。芸術文化観光専門職大学学長。江原河畔劇場・こまばアゴラ劇場芸術総監督。
平田の戯曲はフランスを中心に世界各国語に翻訳・出版されている。2002年度以降中学校の国語教科書で、2011年以降は小学校の国語教科書にも平田のワークショップの方法論に基づいた教材が採用され、多くの子どもたちが教室で演劇を創作する体験を行なっている。


撮影:田中 流

出演
たむらみずほ 天明留理子 川隅奈保子 島田曜蔵
福田倫子 井上三奈子 村井まどか 立蔵葉子 山本裕子
岩井由紀子 中藤 奨 稲川悟史 山田遥野

【出演者変更のお知らせ】
出演を予定しておりました木崎友紀子は、体調不良のため休演させていただくこととなりました。
木崎に代わり、岩井由紀子が出演いたします。

スタッフ
舞台美術:杉山 至
照明:西本 彩
音響:泉田雄太 秋田雄治
衣裳:有賀千鶴 正金 彩
衣裳製作:藤木智美
舞台監督:中西隆雄 三津田なつみ
フライヤーデザイン:kyo.designworks
チラシイラスト:木野聡子
制作:金澤 昭 赤刎千久子 込江 芳