燐光群『地の塩、海の根』@下北沢ザ・スズナリ
燐光群『地の塩、海の根』@下北沢ザ・スズナリを観劇。坂手洋二の作品には現在進行形でこの世界に起こっている出来事への怒りにも似た感情をそのまま遡上に乗せたドキュメンタリー演劇的な作品群と幻想的な世界を舞台により具現した作品群と大別して2つの方向性があるが、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに構想されたと思われるこの作品は典型的に前者のドキュメンタリーに近い作品であろう。
ただ、この作品ではただ単に現在のウクライナの状況を直接描き出すのではなく、劇中劇的にユダヤ系ポーランド作家ユゼフ・ヴィトリンによる現ウクライナ地域の第一次世界大戦時の民衆の苦悩を描いた反戦小説『地の塩』のテキストを取り込み、坂手自身が2022年にその小説を京都大学の西部講堂でリーディング作品として製作した時の経験を盛り込み、他にも燐光群がヤルタの演劇フェスに参加した時のエピソードや小説「地の塩」をウクライナ語に翻訳しようと尽力した作家とその家族のエピソードを作品の所々に散りばめることで、直接的なドキュメンタリーというよりは重層的な構造を持つ演劇作品として構築した。
坂手作品の場合、坂手が考える不正義への糾弾への熱意のあまり、作品全体がプロパガンダのように感じられることも少なくないのだが、この作品は小説「地の塩」という直接今回のウクライナ紛争を描いたのではないテキストを間に挟み込んだことでこの問題により多面的に切り込むことができたのではないか。
燐光群は、2023年、燐光群創立40周年記念公演として『ストレイト・ライン・クレイジー』『わが友、第五福竜丸』の2作品を上演、両作とも好評を博すことができました。
新たな一歩となる2024年第1作『地の塩、海の根』を6月21日(金)より下北沢ザ・スズナリにて上演致します。
燐光群は2013年、ウクライナで『屋根裏』を上演しています。その小説を読みたい、と少年は言った。
ただ、ロシア語になっている翻訳では、読みたくないのだと。ユゼフ・ヴィトリンの幻の小説『地の塩』のリーディングをするため、集められた人たち。
彼らもまだその小説を読んではいなかった。ユダヤ系ポーランド作家ユゼフ・ヴィトリンによる現ウクライナ地域の第一次世界大戦時の民衆の苦悩を描いた反戦小説『地の塩』。世界的に知られていますが日本では未紹介でした。
ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年6月22日、大阪城野外音楽堂で、非戦イベントが行われ、「渋さ知らズ」の演奏や、様々な舞踊と共に、この小説をもとにした「非戦リーディング」が関西の演劇人と坂手洋二により、実施されました。
あれから二年、ロシアの侵攻は依然として続き、イスラエルによるガザへの攻撃も激化しています。混迷する世界で、私たちにとって必要な演劇とは何かを考え、新たな劇世界を提示してゆきます。ジャーナリスティックな視点と今日的な課題を劇世界へと昇華させる、坂手洋二の書き下ろし新作にご期待ください。
ユゼフ・ヴィトリン作『地の塩』は、田中壮泰翻訳により、年内に松籟社から発刊予定です。CAST
森尾舞 南谷朝子 土屋良太 円城寺あや
鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋
樋尾麻衣子 武山尚史 大対源 徳永達哉 瓜生田凌矢
尾形可耶子 西村順子 坂下可甫子 高木愛香 青山友香
声の出演 = 中山マリツジイシュウジ役で出演予定の大西孝洋は、怪我のためしばらく出演を見合わせます。
ツジイシュウジ役については、オオミヤカンパチ役の猪熊恒和が兼任します。STAFF
照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○森下紀彦
美術○じょん万次郎
衣裳○小林巨和
擬闘◯山村秀勝
演出助手○水野玲子
進行助手○宅間脩起
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ
衣裳助手○樋尾麻衣子 中山マリ 遠藤いち花
人形制作○秋葉ヨリエ
インターン○山本一翔
舞台収録・写真撮影○姫田蘭
宣伝意匠○高崎勝也
協力○田中壮泰 常田景子 名取事務所 浅井企画 アットプロダクション プロダクション・タンク 公益財団法人セゾン文化財団 高津装飾美術
制作○ Caco 尾形可耶子 島藤昌代
Company Staff○内海常葉 桐畑理佳 田中結佳 鈴木陽介 宮島千栄
主催○有限会社グッドフェローズ