下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

燐光群「悪魔をやっつけろ~COVIDモノローグ~」@ 座・高円寺2

燐光群悪魔をやっつけろ~COVIDモノローグ~」@ 座・高円寺2

英国を代表する劇作家のひとりであるデヴィッド・ヘアが自らコロナ(COVID)ウィルスに感染した体験をモノローグ(独白)の形で語った戯曲を劇作家・演出家の坂手洋二が朗読劇として自分で演じている。
口にするすべてのものがドブのような臭気、味がする、などと事細かに闘病中の自らの症状が語られていく。病状は時々刻々と変化していき、ひどい下痢や40度以上の発熱、激しい悪寒などが次々と現れるのだが、この病気は個人個人で症状は大きく違うと説明しながらも、すべてが自分で体験したことを基にしているだけにきわめてリアルなのだ。この舞台を見ていると逆に日本で療養を終えた人たちがよく語る「味や匂いがしなくなる」などのステレオタイプな症状の説明はどうせ分かってもらえないからと感じて、同調圧力でそういう風に言うようにしているのではとの疑いを持ってしまうほどだ。
 ヘアはかなり厳しく英国政府のコロナ政策批判もしているのだが、そこで批判されていることはかなりの部分は日本にも当てはまる。むしろ運良く英国と比べると当初は患者の数もそれほど多くなかったのだけれど、ここで手厳しく描かれている英国政府の振る舞いは日本の政府も似たような不手際をやっていたよと思わせたり、アベノマスクの体たらくや五輪への異常なまでの執着、いまだに世界で日本だけがPCR不要論をとなえている人がいるような現状を容認した政府の態度などを考えれば英国はまだましでしょなどと思ったりもする。
 ひとつだけ羨ましいのは英国ではなぜこういう作品が出てきたのに日本では演劇に限らず出てこないんだろうということ。もちろん、この作品を支えている要素のひとつが作者本人が感染したという当事者性なので、日本の場合それに該当するような事例があまりなかったんだろうということも考えられはするけれど、個人がブログなどで自分の体験を語るということはあるにしても、ある程度以上知名度の高い表現者が自分の個別的な体験を表現として綴るということはあまりないように思う。
 

時間 | 19:00
会場 | 座・高円寺2
お問合せ | 燐光群/(有)グッドフェローズ
Tel:03-3426-6294
Eメール:rinkogun@alles.or.jp
Webサイト:http://rinkogun.com