下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

燐光群創立40周年記念公演 第1弾「ストレイト・ライン・クレイジー」@ザ・スズナリ

燐光群創立40周年記念公演 第1弾「ストレイト・ライン・クレイジー」@ザ・スズナリ


燐光群が創立40周年の記念公園として英国の劇作家デヴィッド・ヘアの「ストレイト・ライン・クレイジー」(坂手洋二演出)を上演した。現代アメリカの都市計画を推進したカリスマ行政官ロバート・モーゼスの評伝劇で、2022年にニコラス・ハイトナー演出、レイフ・ファインズ主演により初演されたばかりの最新作。昨年秋にナショナルシアターライブに上演された初演はナショナルシアターライブとして映像化されて日本でも公開され話題になった。
 燐光群は英国鉄が引き起こした事故と国鉄民営化の関係性に迫る「パーマネント・ウェイ」(2005年)、イラク戦争を主導した米国を始め、英仏などの首脳らがどのような遣り取りを交わして開戦に至ったかを描いた「スタッフ・ハプンズ」(2006年)*1、「世界金融危機はなぜ起こったか」をテーマにした「ザ・パワー・オブ・イエス」(2010年)*2と、デヴィッド・ヘアの〈報告劇(バーベイタム・シアター)シリーズ〉三部作のすべてを上演。昨年は作者本人のコロナ感染の顚末を独り芝居に仕立て上げた「悪魔をやっつけろ~COVIDモノローグ~」を坂手自身が出演して上演。これが5作品目となる。
 「ストレイト・ライン・クレイジー」が面白いのはロバート・モーゼスという評価の分かれるような強烈な個性の持ち主の姿を型にはめることをしないで描きだそうとしていることだ。そして、彼を演じた大西孝洋は若き日の仕事への情熱あふれる姿とその妥協を知らない姿勢が時代の趨勢の中で孤立していく晩年を見事に演じ分けてみせた。戯曲ともいえようが、演出の坂手洋二もいつもだったら、開発反対の先頭に立つ市民運動家の立場に肩入れしそうなところをそうはせずにできるだけスクエアの立場に立ち、判断を観客自らに委ねるようにした演出がこの作品に説得力を持たせていたのではないかと思う。
 この手の開発がらみの話になると開発に絡む業者や政治家=悪、それに反対する住民やジャーナリスト=善の勧善懲悪的な構図になりがち。坂手洋二の作品でもいくつかそういう構図に落とし込まれて描きこまれたものもあるけれど現実はそんなに単純なものではないだろう。
 ロバート・モーゼスの話にしても若き日の理想に向かって情熱的で権力者や政治家の選挙協力者らからの圧力に立ち向かっていく姿は颯爽としている。だが、その同じ人物が時代の変遷に伴い時代遅れの偏狭な人物とみなされていくのもやはり現実である。
 主人公におもねることなく、場合によっては冷徹にそれを描き出しているのが「ストレイト・ライン・クレイジー」という作品の魅力だと思う。

1983年に旗揚げした燐光群は今年、創立40周年を迎えました。
その記念公演の第1弾として『ストレイト・ライン・クレイジー』を上演します。
デヴィッド・ヘア戯曲作品の日本初演、第5弾となります。
『ストレイト・ライン・クレイジー』は、ニコラス・ハイトナー演出、レイフ・ファインズ主演により、2022年に初演されました。ニューヨークの「都市計画」史にまつわる「報告劇」の手法を折り込みながら、作者デヴィッド・ヘアが物語型のストレイト・プレー『スカイライト』『エイミーズ・ビュー』などの醍醐味をも存分に発揮し、昨秋<ナショナルシアターライブ>上映でも好評を博した、最新作です。

 主人公は、現代アメリカの都市計画を推進したカリスマ行政官ロバート・モーゼス。アメリカじゅうに公園や道路を多く建設し、スラムをなくし、文化施設リンカーンセンターを建造、国連をニューヨークに誘致するなどして、市民の生活を変えました。彼が実現した都市形態の多くは、現在もそのまま残され、運用されています。世界都市ニューヨークのマスタービルダー(創造主)と称された彼は、全長627マイルの高速道路を建設し、直線狂(ストレイト・ライン・クレイジー)と呼ばれました。政治家でも実業家でもない立場であるにもかかかわらず、彼は計画の実現に腕力をふるい、時に「民主主義」の味方とされ、または傲慢な野心家と揶揄されることもありました。その半生の光と影を、ジェイン・ジェイコブスらモーゼス以外の実在の登場人物たちの姿と共に、描き出します。

デヴィッド・ヘアは、ロバート・モーゼスという人物を、決してジャッジしない。この男はこうして生きるしかなかったのだ。劇という形でこの「まっすぐな一本線」をシェアできることは、私たちにとっても僥倖である。
坂手洋二 NTL『ストレイト・ライン・クレイジー」パンフレットより)

CAST
大西孝洋 猪熊恒和 森尾舞 武山尚史 南谷朝子
鴨川てんし 川中健次郎 坂下可甫子 遠藤いち花
中山マリ 樋尾麻衣子 尾形可耶子
西村順子 徳永達哉 瓜生田凌矢 島藤昌代

ダブルキャスト星組花組)の出演者と出演日は下記の通りです。


ヴァンダーヴィルト 鴨川てんし
シャーリー・ヘイズ 尾形可耶子

マライア・ヘラー  遠藤いち花


ヴァンダーヴィルト 川中健次郎
シャーリー・ヘイズ 樋尾麻衣子
マライア・ヘラー  坂下可甫子

ダブルキャスト星組花組)の出演日は下記の通りです。

7月14日(金・プレビュー) =星、15日(土)14:00 =花、16日(日) 14:00 =星、17日(月・祝) 14:00 =花 、18日(火) 19:00 =星、19日(水) 19:00 =花、20日(木) 14:00 =星、 21日(金) 19:00 =花、22日(土) 14:00 =星、22日(土) 19:00 =花、 23日(日) 14:00 =星、 24日(月) 19:00 =花、25日(火) 14:00 =星、26日(水) 19:00 =花、27日(木) 14:00 =星、 27日(木) 19:00 =花、28日(金) 19:00 =星、 29日(土) 14:00 =花、29日(土) 19:00 =星、 30日(日) 14:00 =花

STAFF
照明 竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響 島猛(ステージオフィス)
舞台監督 森下紀彦
美術 じょん万次郎
音楽 太田恵資
衣裳 小林巨和
擬闘 山村秀勝
演出助手 水野玲子
文芸助手 清水弥生 久保志乃ぶ
進行助手 中山美里 宅間脩起
衣裳助手 中山マリ ぴんくぱんだー
舞台収録・写真撮影 姫田蘭
宣伝意匠 高崎勝也
協力 名取事務所 アットプロダクション株式会社

Company Staff
秋葉ヨリエ 内海常葉 桐畑理佳 田中結佳 鈴木陽介 宮島千栄

制作 Caco 尾形可耶子  島藤昌代
主催 有限会社グッドフェローズ


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