下北沢通信

中西理の下北沢通信

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Théâtre des Annales(テアトル・ド・アナール)『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならないという言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語』

作・演出:谷賢一
変人か、偉人か?狂人か、天才か?志願兵として前線にいたウィトゲンシュタインが、 暗号混じりの文章で日記帳に書きつけた『論理哲学論考』の草稿、そこから浮かび上 がる、軍隊生活、死との戦い、「仕事」への責務と欲求、愛、そして自殺の誘惑。かの 有名な「語り得ぬことについては人は沈黙せねばならない」という言葉の裏に隠された ウィトゲンシュタインの真意と祈りを、戦火の東部戦線という背景が炙り出す、 Théâtre des Annales第二作。
プロフィール 2012年1月、作家・演出家・翻訳家の谷賢一が立ち上げた新ユニット。
先端的な科学や技術・思想などに着想を得、かつ触発されながら、人間存在の深淵に 光をあて、エロスを浮かび上がらせる演劇作品を創造することを目指す。
出演者 伊勢谷能宣 井上裕朗 榊原毅(三条会) 西村壮悟 山崎彬(悪い芝居)
スタッフ 舞台監督:川田康二
照明:松本大
美術:土岐研一
WEBデザイン:仮屋浩太郎(HiR design)
WEB作成:三浦学
宣伝美術:今城加奈子
写真撮影:引地信彦
ドラマトゥルク:野村政之
制作:小野塚央 赤羽ひろみ
プロデュース:伊藤達哉

 第1次世界対戦に従軍中のウィトゲンシュタインを描いた群像劇。作演出の谷賢一は以前から名前は耳にして気になっていたのだが、実際に作品を見るのはこれが初めて。谷賢一は青年団に所属していて、この芝居もその青年団の本拠地であるこまばアゴラ劇場で上演されている。この芝居にはウィトゲンシュタインが登場して彼の著作である「論理哲学論考」が引用される。
 青年団を主宰する平田オリザの著書である「演劇入門」には彼の演劇論を体現するような言葉としてウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」からの引用があるのだが、果たして今回のこの舞台はそのことを意識したものなのだろうか。そんな興味を持って観劇に出かけた。