下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

横浜ダンスコレクション「コンペティションI I」(1日目)

2017年2月9日(木)・10日(金)
神奈川県 横浜赤レンガ倉庫1号館 2F スペース

ファイナリスト:江上真子、金井崇、上村有紀、久保田舞、志村知晴、下島礼紗、鈴木隆司、土屋望、中川絢音、永田桃子、蓮子奈津美、横山八枝子
審査員:伊藤千枝、ヴィヴィアン佐藤、柴幸男、浜野文雄

【本選出場者】(五十音順・ 年齢(2016年7月22日応募締切時点)/出身地)

江上 真子  (24歳/埼玉)
金井 崇   (21歳/埼玉)
上村 有紀  (25歳/千葉)
久保田 舞  (21歳/東京)
志村 知晴  (23歳/東京)
下島 礼紗  (23歳/鹿児島)
鈴木 隆司  (24歳/神奈川)
土屋 望   (24歳/岡山)
中川 絢音  (24歳/東京)
永田 桃子  (21歳/茨城)
蓮子 奈津美 (24歳/福岡)
横山 八枝子 (22歳/神奈川)

横山八枝子「Food」
蓮子奈津美「memento mori
中川絢音「絶滅危惧種
永田桃子「Brain in a vat」
金井崇「Lost Child」
江上真子「チルドレン」

 江上真子の「チルドレン」がこの日の一番の注目だった。1日目の全作品を見終わった後の印象でもこれが一歩抜きんでているのではないかと思った。これ以外の作品は正直言って一長一短がある。江上は3年連続のファイナリストノミネートである。昨年は次席の奨励賞を受賞している。実績は十分で今年の本命は彼女ではないかと思いながら1日目を観劇した。正統派だが、あえて不満を述べればやや優等生的な作品作りが相変わらず気にはなったものの、ダンサー、パフォーマーとしても魅力的であり、これが受賞作品であったとしても異論はない。予想にたがわぬ水準のソロダンスだった。明日どんな作品が登場するかは分からないが、この後の選考はこの作品が基準となるだろうと思った。
という風に一応書いたが、江上さんには申し訳ないが、これまでも何年も見続けてきて、私の見立てと実際の受賞作品がことごとく食い違ってきた*1のが、この横浜ダンスコレクションのコンペ部門。そういうこともあり、この日見た他の作品にも手短に触れておくことにしたい。
 横山八枝子振付のデュオ作品「Food」。よく分からない。よく練られていてダンスの完成度としては高いのかもしれないが、私には退屈。この手の作品はたまにあり、賞を取ることもあるのだが、こういう作品にぶちあたると私はあまりダンスというものが好きじゃないのかもしれないと思ってしまう*2
 蓮子奈津美によるソロ作品「memento mori」。照明効果も活用した空間構成や音楽の構成はうまい。ただ踊った、という作品ではなく、その点は評価したい。ただ、ダンスのムーブメントや組み立ては全体に平板に感じられる。
 中川絢音「絶滅危惧種」。デュオ作品。相手役の根本紳平も中川も非常に身体能力が高い。分類すれば激しく身体負荷をかけ続けるオーバードライブ系だろうか。この日の作品で江上以外が選ばれるとしたらこれもありかなとも思ったが、作り込みが甘い部分が散見される。
 永田桃子「Brain in a vat」。ガラプログラムの中に1本入っているならこれもあり。だが私が考えるこのコンペの趣旨からすれば少し違う。ただダンサーは技術レベルの高さを感じさせ、退屈せずに最後まで見ることができた。次の金井崇「Lost Child」も洋舞コンクールの創作舞踊部門とかならいい作品かもしれない。なにかフィギュアスケートアイスダンスのエキジビションの演目みたい。
 コンペの審査員は今回は珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝が入っており、評価基準がどう変わるのかは分からないが、横浜のコンペは大衆性とかポピュラリティーとかはほとんど考慮されず、革新性や可能性が評価されるきらいが強かった。
 

*1:濱谷由美子=CRUSTACEAの闘いを見届けた横浜ソロ×デュオ苦闘の10年の終わり http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20050131

*2:逆に経験則からいえばこうした傾向の作品は作り手からは高く評価されることが多い