下北沢通信

中西理の下北沢通信

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リモージュ国立演劇センター付属演劇学校『カガクするココロ』@こまばアゴラ劇場

リモージュ国立演劇センター付属演劇学校『カガクするココロ』@こまばアゴラ劇場

作・演出:平田オリザ フランス語翻訳:マチュー・カペル
(1990年初演)*科学シリーズ第1作
フランスの某国立大学の生物学研究室。
類人猿の成長過程を操作し、猿を人間に進化させるという壮大なプロジェクト「ネアンデルタール作戦」が準備されている。この研究室に集められた様々な分野の研究者、学部学生などによって遺伝子操作や分子化学の話題が繰り広げられる中、恋愛、就職、失恋による自殺未遂、結婚など様々な人間関係が展開していく。生命倫理という壮大な問題を抱えつつ、実生活のだらしなさが渾然一体となって、漂流していく物語。
今回は、初演から三十年、国内外で上演され続けてきた『カガクするココロ』を、フランスを舞台に翻案し上演する。そこには現代フランス社会を生きる若者の群像が鮮やかに描かれる。
[フランス語上演/日本語字幕付き]

『その森の奥』

島田曜蔵 申 瑞季 村井まどか 森内美由紀 佐山和泉 森 一生
キム·ヘヨン ファン·リハン チョン·テゴン ソ·ジウ ナム·ダソム キム·ソイ
ロマン·ベルトラン アシール·コンスタンタン エステル·デルヴィル ロール·デコン アントナン·デュフートレル イザベラ·オレクショフスキー


『カガクするココロ』

ガブリエル·アレ クレール·アンジュノ カンタン·バリフ マティアス·ボードワン ロマン·ベルトラン エレーヌ·セルル アシール·コンスタンタン エステル·デルヴィル ロール·デコン アントナン·デュフートレル ニナ·ファビアニ マリーヌ·ゴドン イザベラ·オレクショフスキー ニコラ·ヴェルディ

「カガクするココロ」は1990年初演の平田オリザの初期作品のひとつ。今回はリモージュ国立演劇センター付属演劇学校からの委嘱に基づき、舞台を現代のフランスの国立大学の生物学研究所に翻案して、再制作している。初演版には学部生の模擬講義のリハーサルの形で科学の進歩による人類の明るい未来が語られる。それはもちろん作者がそれをそのまま信じているというわけではなく、若干のアイロニー(皮肉)が込められているシーンではあるのだが、今回のフランス版ではそれが完全にカットされている。ひとつにはおそらく、フランスの大学のカリキュラムの中では日本版でやられた模擬授業のようなシチュエーションが生まれることが考えにくいということと、1990年時点ではまだある種の人々には楽観的に語られることのあった科学による明るい未来が一般人にとってさえ説得力を持つものとしては語りにくくなっているという時代の空気の変化があるのかもしれない。