脚本・演出:青木秀樹
音響効果:笠木健司(とんかつ工房) 照明:床田光世 美術:ステファニー(劇光族)
、さくらの 舞台監督:塚本修 小道具:辻本直樹 美粧:増田加奈
パフォーマンス指導:石田陽介 宣伝美術:野間口幸子ほか 制作:塩田友克ほか
企画・製作:office crome
出演:
金沢涼恵 :痴漢された女・サワコ
幸田尚子 :男役の女・ヒゲロウ
木村美月 :痴漢たちを閉じ込めた女・サキ
渡邉とかげ:列車事故から生き残った女・カッコ
奥田ワレタ:雑誌社の女・ミク久保貫太郎:痴漢の男・コジマ
板橋薔薇之介:痴漢に間違われた男・ヨシモト先生
森下亮 :アジミ
板倉チヒロ:フミヒコ
クロムモリブデン「テキサス芝刈機」を青山円形劇場の「演劇村フェスティバル」で見た。クロムモリブデンの舞台は演劇よりも映画に触発されて創作されていることが多く、この「テキサス芝刈機」も「テキサス・チェーンソー」*1 *2から取られた表題であり、これが下敷きのようなものとなっている。もっとも、下敷きになっている、ではなくて下敷きのようなものになっているとあえて書いたのは「閉じられた空間で人が次々と殺されていく」というモチーフを除けば冒頭近くのチェーンソーを持ち出してのダンスシーンを除けばストーリーにおいてはほとんど関係はないといっていいかもしれない。
ただ、関係が直接はなくても、この芝居の当日パンフには「チェーンソウよりも去勢されたモノという意味で芝刈機を持ってきました」とあり、フライヤーの裏面にも「チェーンソウは、荒々しく、兇暴で、木々をなぎ倒す、そして殺戮の道具にも使用されていました。僕は美しいグリーンを美しく整えるだけ 僕はチェーンソウに憧れます」とある。この舞台が「チェーンソウのようになりたい芝刈機」の物語として構想されたことは確かだ。
電車で痴漢に間違われた男と痴漢した男と女がもめている。この舞台の実際の物語はそこからはじまる。痴漢した男と冤罪の男は、気が付くと不思議な森に迷いこんでいる。その森では、痴漢たちが集められ芝刈りをさせられていた。男たちはそこで腑抜けになるまで芝を刈るのだ。そこに電車脱線事故の唯一の生き残りと称する女とそれを取材している記者が現れる。女によるとこの森は本当は森ではなく、脱線した電車のなかであり、自分が置き石をしたことでの脱線を止めるためにタイムマシンでやってくるが、そうすると必ずこの森である電車のなかに来てしまい、助けようとしても乗客である森の住人たちは全員が死んでしまうのだという。
舞台が進行するうちに妄想が妄想を増殖させるというエスカレーションが起こって、すべてが外側のない妄想の世界だと思わせるのが特徴と「マトリョーシカ地獄」のwonderlandレビューでクロムモリブデンのことを書いたが、そういう特徴はこの「テキサス芝刈機」にもほぼそのまま当てはまる。
ただ少し違うのは「マトリョーシカ地獄」などでは多重の入れ子構造となった「妄想」のうちなにが現実でなにが非現実化かの区別がほとんどつかない状態のまま、演劇的なカタルシスだけが進行して怒涛のクライマックスになだれ込んでいくのだが、この「テキサス芝刈機」ではどうやらこの妄想の連鎖は実は事故に巻き込まれながら命が助かった女性のインナーワールドを「妄想劇」の形式で提示したものではないかと思われてくることだ。
クロムモリブデンの関連原稿
クロムモリブデン「スチュワーデスデス」
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20071213
クロムモリブデン「マトリョーシカ地獄」wonderlandレビュー
http://www.wonderlands.jp/index.php?itemid=686&catid=3&subcatid=4
クロムモリブデン「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20041229
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20050124
クロムモリブデン「ユカイ号」
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20040628
クロムモリブデン「なかよしshow」
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20040325
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/00000111
*1:出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』『テキサス・チェーンソー』(The Texas Chainsaw Massacre)は2003年製作のアメリカ映画である。マイケル・ベイ製作、マーカス・ニスペル監督。1974年のトビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(The Texas Chain Saw Massacre)のリメイクである
*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%BC