下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「ゼロ年代の演劇ベスト10」雑誌「シアターアーツ」アンケートから

1,チェルフィッチュ「三月の5日間」 (神戸アートビレッジセンター)=2004 作・演出岡田利規
2,ポツドール「愛の渦」 (新宿シアターTOPS)=2005 作・演出三浦大輔
3,維新派「呼吸機械」 (びわ湖さいかち浜特設水上舞台)=2008 作・演出松本雄吉
4,ミクニヤナイハラプロジェクト「3年2組」 (吉祥寺シアター)=2005 作・振付・演出矢内原美邦
5,クロムモリブデン「なかよしSHOW」 (アイホール)=2004 作・演出青木秀樹
6,五反田団「ながく吐息」 (こまばアゴラ劇場)=2003 作・演出前田司郎
7,シベリア少女鉄道耳をすませば (王子小劇場)=2002 作・演出土屋亮一
8,ポかリン記憶舎「短い声で」 (東京デザインセンターガレリア)=2005 作・演出明神慈
9,弘前劇場・畑澤聖悟「月と牛の耳」 (下北沢ザ・スズナリ)=2001 作・演出畑澤聖悟
10,デス電所「夕景殺伐メロウ」 (精華小劇場)=2006 作・演出竹内佑

切断点は2000年ではなく、2000年半ばにある。概ねゼロ年代前半は平田オリザの系譜に連なる現代口語演劇中心の流れが継続し、そうした流れの中からポツドール三浦大輔五反田団の前田司郎らが出てきた。三浦、前田ともにどの作品を選ぶかが悩ましいところ。三浦は「騎士クラブ」にするか「激情」にするかなど悩むが岸田戯曲賞受賞の「愛の渦」を選ぶ。前田は逆に初見の衝撃性を重視して初期の代表作でインターネット演劇大賞受賞作品でもある「ながく吐息」を選んだ。
現代口語演劇の極北からチェルフィッチュ岡田利規が登場したのが大きな転回点。まずゼロ年代を象徴する作品として絶対はずせないのがチェルフィッチュ「三月の5日間」。もし1本というなら私は躊躇なくこれを選ぶ。チェルフィッチュの登場は群像会話劇あるいはリアル志向の演劇に入らない作家たちが相次ぐきっかけとなり、デス電所シベリア少女鉄道などこれまでの演劇の範疇ではその実態がとらえにくい演劇が現れ、その延長線上についに柴幸男「わが星」が登場した(これは実際の舞台を見ていないのでここでは選らばかったが、もし見ていたなら必ず入るべきもの)。新たな世代への予感を感じさせた。
 最後に補足しておくと迷ったけれども、平田オリザ長谷川孝治、はせひろいち、長谷基弘、宮城聡、上海太郎ら90年代に代表作があり、「90年代の演劇ベスト10」に入るであろう作家はあえて落とした。ちなみにチェルフィッチュ「三月の5日間」と同様に90年代を象徴するこの1本は青年団東京ノート」であろう。そして、チェルフィッチュの「三月の5日間」にはそのゼロ年代的な変奏曲という側面もあると思う。