「いきなりベッドシーン」38分
作・演出:中屋敷法仁 出演・七味まゆ味
舞台美術:酸素工房 音響:上野雅 照明:富山貴之
衣装:飯田裕幸 舞台監督:本郷剛史 宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:内堀義之、堀奈津美(*rism/DULL-COLORED POP)
制作:赤羽ひろみ、斎藤努 主催・企画製作:柿喰う客
柿喰う客の七味まゆ味の一人芝居。以前にも大阪の一人芝居フェスティバルで上演されていて、話題になっていたのだけれど、見逃していたのを今回ついに見ることができた。柿喰う客を初めて見たのは「恋人としては無理」の大阪公演*1。「恋人としては無理」はイエス(作中ではイエスくんと呼ばれる)とそれに従う12人の弟子たちを巡る物語だが、その演技はどうやら単純なルールに基づいて行われた。弟子たちはもちろんのこと、ピラトやエルサレムの住人たちといった周囲の人物までをすべて5人の役者で演じるために、それぞれの人物はそれぞれ帽子、傘、本、酒瓶といった持ち物を属性として持っていて、それを持っている人がその人物だというルールに従って演技が行われた。その際の感想にこの劇団がどういうスタイルの劇団かはほとんど知らないで見たため、最初に思ったのは「これは惑星ピスタチオがやっていたスイッチプレイじゃないか」ということだが、どう考えても作演出の中屋敷法仁をはじめメンバーは惑星ピスタチオの舞台を見たことがあるはずがないので「これはいったいどういうことなのか」と思ったのだ。
もっとも、その後見た「悪趣味」は全然惑星ピスタチオを思わせるような演出はなく、劇団☆新感線とか大人計画を思わせるような演出。DVDで見た「真説・多い日も安心」は野田秀樹を連想させ、しかも「悪趣味」とも違うというもので、ここまで見てきた時に柿喰う客の特徴は芝居の内容に合わせて、その演技スタイルが変化することだということが分ったのだ。
ところが、この日見た「いきなりベッドシーン」と今回LINX'Sで上演された「八百長デスマッチ」はいずれもやはり惑星ピスタチオに似ているのだ。とはいえ、世界観とか、物語のテイストが似ているというわけではない。似ているのは演出・演技のスタイルである。しかもその似かたというのはどの作品でも同じというわけではなくて、「恋人としては無理」なら同じ役柄を次々と受け渡しながら、別々の役者が演じていくという惑星ピスタチオ時代の西田シャトナーがスイッチプレーと呼んでいた手法である。あるいはこの「いきなりベッドシーン」では七味まゆ味の演技がひとり芝居であり、単に演じられている主人公、鷲津神ヒカルのせりふだけでなく、通常ならナレーションや情景描写の領域にはいるものまですべてひとりで表現するように出来ており、そしてそのハイテンションぶりから、やはりこれは保村大和や腹筋善之助のパワーマイムを彷彿とさせるのである。
ところが興味深いのはそういう類似点がありながら、作者の世界観がまったく違うことである。