下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ポツドール「顔よ」@〔FINNEGANS WAKE〕1+1

〔FINNEGANS WAKE〕1+1で開催している舞台映像連続上映会「演劇の新潮流 ゼロ年代からテン年代へ」でポツドール「顔よ」@本多劇場を観劇した。この上映会は一昨年から昨年にかけて開催していた連続レクチャーセミネールの第2期として私が主催して月1で開催しているものだが、今回が3回目。これまで第1回(快快、ミクニヤナイハラプロジェクト、五反田団)、第2回(畑澤聖悟・渡辺源四郎商店)と実施してきたが今回が3回目。今回はセミネール講義でも取り上げたポツドール*1を再び選んで紹介することにして、代表作の1つである「顔よ」を上映した。
 今回は偶々だったのか、それとも選んだのがポツドールだったからなのか、理由はよく分らないのだが、今回は参加してくれたのが8人と超満員とまではいかなかったものの、そこそこの集まりだったため、前回の出席者が2人だけで「演劇の舞台映像上映に果たして需要自体があるのだろうか」とがっくりきていただけに続けていく勇気をもらった気がする。
 しかも選んだのがポツドールのしかも「顔よ」だったのに参加者に意外と若い女性が多く、彼女らの何人かに簡単な感想を聞けたりしたのも少し珍しい経験であった。ポツドールは何度か妻と一緒に見にいったことはあって、彼女の意見は聞いたりしたことがあるのだが、どう考えても内容が内容だけに「どういう風に思ったのか」などということは聞きにくい類のものだからだ。
 また、今回は上映終了後もけっこう何人かが居残って話を聞いてくれたし、そのせいで上映会が終わった後に一部だけではあるけれど、レニ・バッソダムタイプ、快快などの映像も見せられたりしたのもよかった。来月も今回ぐらい参加者があるといいのだけれど。
 次回についてはまた来月はじめぐらいにスケジュールが固まってから告知したいと思うが、今のところこれまでは取り上げていない関西の劇団を初めて取り上げることにして、デス電所を考えているのだけれど、問題は地元で公演を見られる劇団の舞台映像を見に来る人がどの程度いるのかということである。

【作・演出】三浦大輔

【出演】 

 米村亮太朗今井裕一(アパート住人)
内田慈  :橋本智子(一軒家住人)
古澤裕介 :田村(アパート住人 フリーター)
白神美央 :裕子(田村彼女)
岩瀬亮  :上村(田村遊び仲間)
 脇坂圭一郎:隆司(裕一の弟)
安藤聖  :里美(隆司の恋人)
井上幸太郎:浩二(一軒家住人 智子夫)
松村翔子 :久美(一軒家住人 浩二妹)  [チェルフィッチュ]
横山宗和 :小野(久美遊び仲間 加害者)
後藤剛範 :山本(久美遊び仲間 王様) [害獣芝居]
片倉わき :絵里
新田めぐみ:香織
梶野晴香[国分寺大人倶楽部]:女

【スタッフ】

照明/伊藤孝(ART CORE design) 音響/中村嘉宏 舞台監督/矢島健 舞台美術/田中敏恵 
映像/冨田中理SselfimegeProdukts) 小道具/大橋路代(パワープラトン) 衣装/金子千尋
演出助手/富田恭史(jorro) 尾倉ケント(アイサツ) 宣伝美術/two minute warning 写真撮影/曳野若菜
広報/石井裕太 制作/木下京子 運営/山田恵理子(Y.e.P) 協力/吉住モータース マッシュ 
企画・製作/ポツドール


「覗き見」の快楽。ポツドール「愛の渦」のレビューでそう書いたことがあるのだが、この「顔よ」も観客に見てはいけないものを覗き込んで見ている時のような背徳的な喜びを与えてくれた。

 住宅街の一角をリアルに写したような舞台装置が秀逸である。舞台上手には古いアパートの1、2階と外付けの階段。下手側はやはり二階建ての一軒家となっている。向かって手前は通りで上手端には電信柱とごみがいくつかネットからあふれるように放置された置き場。ディティールの質感にまで拘った美術である。

 下手の家から主婦と思われる女(内田慈)が出てきて、2つの家の間の空間の掃除をしている。右手のアパートの階段から若いカップル(脇坂圭一郎、安藤聖)が降りてくる。どうやらそこには男の兄が下宿して暮らしているらしい。一方、一軒屋には若い女(松村翔子)がいて、その女は頭を包帯でぐるぐる巻きにしている。その兄らしい男、浩二(井上幸太郎)はなにやらケバケバしい風貌の女と携帯電話でやりとりしている。アパートの1階にはオタク風の男(古澤裕介)が暮らしていて、なにやらさえない風貌の女(白神美央)が時折訪問している。家やアパートは最初は窓のカーテンが閉められ、壁もある状態でスタートするが、物語の進行にしたがってじょじょにひとつずつ壁が取り払われ、内部の様子が細かいところまで観客の目に露わに晒されていく。

 そして、壁が取り払われていくに従い観客は次第にそれぞれの部屋に出入りする人たちによるそれぞれの物語が同時進行していくのをあたかも、アリの観察キットからアリの巣の様子を覗き見て観察するように「覗き見」させられることになる。
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