下北沢通信

中西理の下北沢通信

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悪い芝居vol.20『ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング』

悪い芝居vol.20『ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング』@東京芸術劇場 シアターウエス

【作・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎

2018年3月3日(土) 12:00~ チケット予約受付中!

【キャスト】
中西柚貴 植田順平 渡邊りょう 山崎彬 北岸淳生
長南洸生 東直輝 野村麻衣 川人早貴 佐藤かりん
(以上、悪い芝居)

永島敬三(柿喰う客)
潮みか


【会場・日程】

●東京公演
東京芸術劇場 シアターウエス
2018年4月26日(木)~30日(月)
26日(木) 19:00
27日(金) 19:00
28日(土) 14:00/19:00
29日(日) 13:00/18:00
30日(月) 13:00

悪い芝居の山崎彬はポストゼロ年代に登場した若手のなかでは珍しく人間存在の闇の部分も抉り出すような重厚感のある世界を構築する作家だ。前作「メロメロたち」が2017年のOMS戯曲賞を受賞。注目の受賞後第1作となのだが、19年前に引き起こされたひとつの犯罪が尾を引いていろんな人たちを巻き込んで、結果的にはより大きな悲劇の連鎖へとつながっていくのをかなり直球で描いている。先行世代でいうと「Heaven's Sign」など一時期の松尾スズキ作品を以前に見たときの衝撃を思わせた。だが、いずれにせよ映画ではあってもこうした作風は若手の作者たちのなかでは珍しいかもしれない。
 「ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング」という表題はスタイリッシュな感覚で、ロロなんかを思わせるところもあるが、中身は全く違う。ロロの三浦直之やこの前日に見たままごとの柴幸男が典型的だが、この世代の劇作のひとつの特徴は人間の持つ悪意のようなものは意図的に捨象されあまり描かれることがない。ままごと「ツアー」に登場した「くらやみ」が人間存在を外部から襲う脅威として描かれていた。悪い芝居はこの作品で人間の心の中の闇のような存在により真正面から挑んでいる。この挑戦がなにをもたらすかに注目したい。