下北沢通信

中西理の下北沢通信

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悪い芝居「悪いけど芝居させてくだ祭」@浅草九劇 

悪い芝居「悪いけど芝居させてくだ祭」@浅草九劇

悪いけど芝居させてくだ祭・浅草九劇
【作品】
・山崎彬 作・演出
 『純白』 『神様それではひどいなり』 『マボロシ兄妹』

・渡邊りょう 作・演出
 『それはそれとした』

東直輝 作・演出
 『夢を見た後見てる夢』

【劇場】浅草九劇

悪い芝居の5本立て公演。山崎彬の新作「純白」はすでに観劇していたため、この日は残り4本を一挙に見た。山崎彬の旧作2本の再演はもちろん見ごたえがあったが、驚かされたのはともに今回が初の作演出だった渡邊りょう、東直輝の作演出作品のレベルが予想以上に高かったことだ。さらにいえばいずれも作風が山崎彬のものと共通点が多い上にこういう形で複数演目を同時上演する場合には出演作品を振り分けることが多いのだが、今回はそれぞれの俳優が複数作品に出演したうえに作演出を手掛けた山崎彬、渡邊りょう、東直輝もともに他人の作演出作品には俳優として出演もした。
劇作としてもっとも面白かったのは「マボロシ兄妹」かもしれない。最近の山崎彬の作品の特徴のひとつは複数のレイヤーの物語、それは基本的にはある人物の現実とその人物の脳内だけにあるような回想や妄想だったりするインナーワールドの世界だが時にはそれが交錯して地と図の関係が逆転したりする。
ここで指摘するのもおかしな話だが、山崎がモノモースに書き下ろした「エンドルフィン」も回想シーンに見える部分に実は原案小説*1があり、それを原案としてクレジットしてなかった瑕疵もあり、一部チケット代金返金などの騒ぎになり、物議を醸したのだが、山崎はこの作品に小説ではテープに録音された過去の回想に過ぎなかったものを改変、本当に起こったことなのか、インナーワールドに過ぎないのかが解釈上揺れ動くように設定し直した。この部分こそがあの作品の最大のアイデアであり、小説からの引用部分があってなお舞台作品としてのオリジナリティーはあると考えている。

*1:沙藤一樹『D-ブリッジ・テープ』