下北沢通信

中西理の下北沢通信

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こまばアゴラ演出家コンクール@こまばアゴラ劇場(二次審査)

こまばアゴラ演出家コンクール@こまばアゴラ劇場(二次審査)

二次審査

1 和田ながら(したため)

『お気に召すまま』ロザリンド|小瀧万梨子 オーランドー|吉田 庸 シーリア|長野 海

2 額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
ロザリンド|永山由里恵 オーランドー|佐藤 滋 シーリア|寺田 凜

3 野村眞人(劇団速度)
『お気に召すまま』

『お気に召すまま』ロザリンド|木引優子 オーランドー|大竹 直 シーリア|福士史麻

□二次審査結果

最優秀賞:額田大志(ヌトミック / 東京塩麹

観客賞 :和田ながら(したため)

※奨励賞は該当なし

額田大志(ヌトミック / 東京塩麹)が最優秀賞受賞となった。東京藝術大学音楽環境創造科出身の額田は大学の卒業制作として上演した『それからの街』(2016年)の劇作が第16回AAF戯曲賞大賞を受賞。今回は演出家として第1回となるこまばアゴラ演出家コンクール最優秀賞受賞を受賞。
 演劇製作のキャリア自体はまだ浅いが、作と演出の2つの部門のコンペティションで高い評価を受けたことでこの世代の舞台芸術の作り手として一気にトップランナーの地位に躍り出た感もある。  
 二次審査に残った3人ではひとりだけアプローチがまったく異なり、それがこのコンクールのレギュレーションでの勝因となったのかもしれない。
 それは他の二人がまずテキストからスタートしてそこに自分ならではのスタイルをどのように付け加えてきたのに対し、額田はまず俳優にヒヤリングしてどんなことが出来るのか徹底的にリサーチしたのだという。自分の手持ちの材料のなかで、テキストと演技をどのように組み合わせていけばもっとも面白く出来るのかを逆算して作っているのが、額田の特徴でこの回の場合であればロザリンド役の永山由里恵が白目を剥いたりして異常な演技ができるというメリットを存分に活用している。面白いのは額田の場合は他の演出家が皆それぞれおそらく『お気に召すまま』というテキストから出発して、そこから導き出された解釈(趣向)をどのように実現していこうかと腐心しているのに対して、永山由里恵がいるからこそ、その永山の面白さ、魅力を分かりやすく観客に伝える方法を考えてこれになっているわけで、それも見てみたい気はするが、ロザリンド役が小瀧万梨子だったり、木引優子だったりしたら、おそらくまったく違う趣向の作品を作ったのではないかということが想像されることだ。これまで彼の作品ではテキストの音楽的構造とか、実際に使用される彼が制作する音楽と作品の構造との関係性などに目がいっていたが、このコンクールを通じて分かってきたのはこの人はいろんな素材を組み合わせてコラージュして面白く見せるというもう少し広い才能を持っているんじゃないかということが分かってきた。