こまばアゴラ演出家コンクール@こまばアゴラ劇場(一次審査)
企画:こまばアゴラ演出家コンクール実行委員会
この度、こまばアゴラ劇場は、劇場とその支援会員が今後支援していきたい新しい若手演出家との出会いを目的とする、こまばアゴラ演出家コンクールを開催いたします。
現在、日本の演劇界では、演出家に対する賞、特にその演出能力のみを評価する賞がないこと、また、特に若い演出家は自分と異なる文脈を持つ戯曲や俳優と触れることが少ない現状を踏まえて、全く新しい形式のコンクールを企画しました。参加する若手演出家は、コンクール側が指定する戯曲を青年団・無隣館および関連団体所属の俳優のみを使って限られた時間で演出し、どこまで独創的な世界観を提示できるかを競い合います。※本企画の上演審査は劇場支援会員のみが観覧できます。
※コンクールに参加を希望する方は下記ページの募集要項をご覧ください。こまばアゴラ演出家コンクール2018 募集のご案内 (2018.02.1)
新しい才能を発見し、世に送り届けることは劇場の使命です。こまばアゴラ劇場は、日本を代表する民間小劇場として、新しい演出家コンクールを設定しました。
一方、このコンクールはゲーム性の強い、観客にも楽しんでいただけるものとなっています。ぜひ、多くのお客様に、まだ観ぬ才能との出会いを経験していただきたいと願います。審査員
平田オリザ(こまばアゴラ劇場芸術総監督・劇作家・演出家)
岩井秀人(劇作家・演出家・俳優)
佐々木敦(批評家)
松田正隆(劇作家・演出家)
柳美里(小説家)こまばアゴラ演出家コンクール2018
審査員発表 (2018.02.16)課題戯曲
一次審査:古典戯曲から一部抜粋(上演時間:最長20分)
ヘンリック・イプセン『ヘッダ・ガブラー』より抜粋岡本昌也(安住の地)
小原花
蜂巣もも(グループ・野原/青年団 演出部)
和田ながら(したため)アントン・チェーホフ『かもめ』より抜粋
出井友加里(ティッシュの会)
額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
野村眞人(劇団速度)(五十音順)
*注意事項*
●俳優はコンクール主催者側が指定する組み合わせの中から、5月11日の朝に抽選で決定いたします。
●抜粋箇所、翻訳者はいずれも当日の朝に発表いたしますこまばアゴラ演出家コンクール2018 コンクール課題戯曲発表 (2018.05.3)
二次審査:古典戯曲から一部抜粋(上演時間:最長30分) 一次審査終了時に発表
こまばアゴラ演出家コンクールは今年が第1回の開催なので今後この賞がどのような性格のものとして展開していくのかというのはあまり見当がつかないのだけれど、とりあえず始まる前の現段階で言えることで面白いのは審査員の顔触れだろうか。知人の演劇評論家が「アゴラやゲンロンカフェの周辺」のような言い方をして少し誤解があるのではないかとカチンと来たところがあったのだけれども、今回審査員に佐々木敦が入り、逆に佐々木敦が東浩紀と共同主宰している「批評再生塾」の講師陣に平田オリザが加わったことは両者が一体のものというわけではないのはもちろんだが、今まで以上に蜜月関係を感じさせるのも事実である。
もうひとつのトピックスは今回小説家に専念し演劇界からは遠ざかっていた感のあった柳美里が久しぶりに演劇に関係する場に戻ってきたこと。もちろん、今回の審査員は平田オリザが選んだと思われるが、彼女以外は全員男性なので、岸田戯曲賞の選考委員に女性がいないことが一部で批判されたことも念頭あったかもしれない。さらに言えば彼女は現在福島県南相馬市在住であり、近く劇団ごと豊岡市に移住することを発表している平田にとっても地方重視の人選という意味合いもあるのかもしれない。
もうひとつの特徴は青年団の代表みたいな意味合いもあると思われるが、そこに多田淳之介や柴幸男ではなく、岩井秀人(ハイバイ)を選んだことだ。単純にスケジュールの問題であった可能性は排除できないが、いまや東京アバンギャルド(前衛)派の代表のようなところのある松田正隆を選んだこととのバランスをとったようなところもあるのかもしれない。とりあえずなかなか面白い選考委員がそろった。
さて、候補者の方だが7人のうち3人( 蜂巣もも、和田ながら、額田大志)しかその上演作品を見たことがないので、あまり判断材料がない状態。個人的にはネクストブレイクの有力候補と考えている額田が注目なのだが、時間が限られたところで技量は高いとはいえ、ほぼ初めて出会う俳優と一緒に作品を制作するというレギュレーションでどこまで訴求力のある作品を作ることが出来るのか。注目したい点だ。
本来はこのほかにも綺羅星の如く候補者がいるはずの青年団演出部からは 蜂巣ももが選ばれており、これも興味深い。とはいえ、彼女が勝つということになるとお手盛りの批判が出かねないのは確かなのではっきり言って、彼女の場合は「抜群」でなければ勝てないんだろうなというのはある。こうした逆風のなかでどんなものを見せてくれるのか。それが楽しみだ。
さて、ここからは一次審査の結果。二次審査へ進む権利を手に入れたのは野村真人、和田ながら、額田大志の3人となった。仕事の関係で半分はまったく見られず、それゆえ、観客投票も棄権したが、私の目からしたら、正直他が比べ物にならないほど額田は独走していた。ところが、観客投票は野村と和田の同票1位で額田ではないことに愕然。これで一次審査で選ばれてなかったら暴れだすところだったが、選ばれたので日曜日の二次審査がますます楽しみになりそうだ。
一次審査
1 蜂巣もも(グループ・野原/青年団 演出部)
『ヘッダ・ガブラー』ヘッダ|能島瑞穂 テスマン|折原アキラ エルヴステード夫人|根本江理
2 岡本昌也(安住の地)
『ヘッダ・ガブラー』ヘッダ|天明留理子 テスマン|吉田 庸 エルヴステード夫人|石橋亜希子
3 出井友加里(ティッシュの会)
『かもめ』トレープレフ|木村トモアキ アルカージナ|山村崇子 トリゴーリン|山内健司
4 和田ながら(したため)
『ヘッダ・ガブラー』ヘッダ|兵藤公美 テスマン|山本雅幸 エルヴステード夫人|福田倫子
5 野村眞人(劇団速度)
『かもめ』トレープレフ|串尾一輝 アルカージナ|山村麻由美 トリゴーリン|佐藤 滋
6 小原 花
『ヘッダ・ガブラー』ヘッダ|川隅奈保子 テスマン|中藤 奨 エルヴステード夫人|鈴木智香子
7 額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
『かもめ』トレープレフ|森 一生 アルカージナ|松田弘子 トリゴーリン|古屋隆太
一次審査通過者:和田ながら(したため)、野村眞人(劇団速度)、額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
観客賞:和田ながら(したため)、野村眞人(劇団速度)