下北沢通信

中西理の下北沢通信

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演 『methods』[メソッズ]@下北沢ザ…スズナリ

劇団山の手事情社 創立35周年記念公演 『methods』[メソッズ]@下北沢ザ…スズナ

2019年6月21日(金)~24日(月)

『過妄女』[かもめ](原作=チェーホフ
2019年6月26日(水)~30日(日)

会場=下北沢 ザ・スズナリ

構成・演出=安田雅弘

山の手事情社は今年、創立35周年を迎えます。稽古方法をご紹介する『methods』と、戯曲作品『過妄女』(原作:チェーホフ)。短期間で演劇のウラとオモテをご覧いただけます。演劇の街・下北沢で芝居三昧のひと時はいかがでしょうか。

山の手事情社は今年、創立35周年
皆さまの温かいご支援により、昨年の「存亡の(危)機」を回避し、何とか創立35周年を迎えることができました。1984年の旗揚げ以来、《構成演劇》に始まり、《集団創作》《ハイパー・コラージュ》《四畳半》といろいろな演劇スタイルに取り組み、その間メンバーもずいぶん入れ替わりました。変わらなかったのはおそらく「演劇を深く貪欲に楽しみたい」という気持ちだけです。演劇の聖地で、また新たなスタートを切ろうと思います。

■ 稽古方法《山の手メソッド》
演技様式の試行錯誤の中で、提案・開発されてきたのが《山の手メソッド》という訓練法です。『methods』では、一般にほとんどなじみのない演劇の稽古法を、お客さまに驚いたり楽しんだりしていただく中でご紹介しようと思います。〈演劇的教養〉とは、自分の「身体」や「社会」や「世界」を映し出す鏡を俳優の中に用意することです。ご覧いただければ、舞台や映像の演技の見方が変わると思います。かつて劇団でともに活動した清水宏氏も出演!

チェーホフに初挑戦!
湖畔の田舎屋敷を舞台に、作家志望の青年と、女優を夢見る乙女を軸に、屋敷に集まる人々のさまざまな恋愛模様が描かれます。チェーホフが『かもめ』執筆の際、出版社主宛ての手紙に書いたように「5プード(およそ80キロ)の恋」、すなわちもてあますほどの恋愛が作中に散りばめられています。チェーホフの発見は、人間の行動の根底には「過剰な妄想=恋愛」が横たわっている、ということではないでしょうか。

■ 下北沢・11時開演
大学卒業後、初めて上演した『ゆるやかなトンビリラロの身だしなみ』(本多劇場)も、現代では上演されていない歌舞伎作品『狭夜衣鴛鴦剣翅[さよごろもおしどりのつるぎば]』(ザ・スズナリ)の復曲に挑んだのも下北沢でした。ほかにもたくさんの思い出が詰まったこの街、数多くの劇場があり、海外フェスのように毎日多彩な作品が上演されるこの場所に帰ってきます。今回、劇団初となる午前11時開演の回を設けます。1日に3本鑑賞も可能。贅沢です! 

構成・演出 安田雅弘

 劇団山の手事情社創立35周年記念公演。この日の演目は同劇団の俳優訓練のための方法論を作品として公開したもので、どのような劇団で元来どのような劇団だったのかが、覗き見られるような構成となっていた。
 思い出してみれば20年以上前に「演劇とは何か」と考えはじめていた私の前に現れ、強烈な刺激を与え続けてくれた劇団(演出家)が青年団(平田オリザ)、ク・ナウカ(宮城聰)、上海太郎舞踏公司(上海太郎)、そして、山の手事情社(安田雅弘)だった。
simokitazawa.hatenablog.com

 日本の現代演劇における正史においてはこの後、平田、宮城が彼らに続く演劇人に強い影響を与え、海外での評価も高めていくが、私は個人的には安田と上海のいわば無謀とも言える挑戦に激しく惹かれる部分があった。 
  最近の若手の演劇作家の一部に明らかに彼ら(彼女ら)の先行世代と比べると実験的(以前は前衛的とも言ったが最近はあまり使われない気がする)な作風が目立つ傾向が顕著だが、歴史的に見てそういう実験精神の担い手となってきたのが早稲田大学演劇研究会(劇研)であった。
 こうしたことも若い人たちに取ってはもはや老人の繰り言にしか聞こえないかもしれないが、鴻上尚史