下北沢通信

中西理の下北沢通信

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melomys「Dreamtime」@アトリエ春秋舎

melomys「Dreamtime」@アトリエ春秋舎

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 田崎小春は青年団俳優部に所属の女優。青年団演出部にも最近は女性の作家が多いが、過去に男性では松井周、伊藤毅の実例はあるとはいえ、まだ青年団本公演出演が一度だけだという新人に近い女優が自らの集団melomysを率いて公演も打てるという現在の青年団周辺の状況はおそらく過去の演劇界にはなかったことであろうし、彼女も含めてこういう環境からどのような作家が登場してくるのかという期待が一層に高まった。
 ただmelomysは田崎のひとりユニットというわけではなくて、この作品も協力者として参加したメンバーの内田龍太郎(舞台美術)、野村玲央(スタッフ名にクレジットはされていないが内田とともにドラマトゥルク的な役割を果たしたと思われる)、そして舞台で使用された映像を提供した稲川悟史(青年団所属の映像作家)と音響プランの櫻内憧海(お布団、青年団)と実質的に多くの作り手が参加した共同制作になっていたようだ。
 作品もそういう作り手の状況を反映してか、いわゆる普通の演劇のように物語のある戯曲があって、それを俳優が演出家の意思通りに演じるというのではなく、はっきりした物語のラインはなく、緩やかなつながりはあるが、互いに独立した言語テキスト、そしてそれをセリフとして音声化する俳優、舞台空間にばらばらに配置されているオブジェ(美術)、舞台背後の白い幕に映し出される実写、アニメーションなど様々な種類の映像と組み合わせられて、コラージュのように展開していく。
 言語テキストはほとんどがモノローグで会話体だけではなく、地の文にあたるような部分もあり、それを現代口語的な口調で発していくところにはチェルフィッチュなどを連想させるところもないではないが、身体所作のあり方などには影響は見受けられず、最近の若手によくあるスタイルを共有しているという程度のことなのだろう。

作・演出:田崎小春

出演

瀧澤綾音、中條玲、日向子(青年団)、村岡佳奈(屋根裏ハイツ)

スタッフ

制作:河野遥(ヌトミック)
音響プラン:櫻内憧海*(お布団)
音響操作:中村大地(屋根裏ハイツ)
照明プラン:杉本奈月*(N₂)
照明操作:植村真(LIVE RALLY)
舞台監督:蒼乃まを*
舞台監督補佐:黒澤多生*
舞台美術:内田龍太郎(非・売れ線系ビーナス)
映像協力:稲川悟史*
衣装協力:藤井美代子
フライヤーグラフィック:小指/小林紗織
総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力:大池容子(アゴラ企画)
制作協力:蜂巣もも(アゴラ企画)
(*)=青年団


ここではないどこかのこと、自分ではない誰かのこと。私が今ここに生きていることと遠くのどこかで起きていることは無関係ではないはずだ。ここにいるまま、私のまま、旅をしよう、夢をみよう。私たちのドリームタイム