バストリオ『一匹のモンタージュ』リクリエーション@こまばアゴラ劇場
バストリオの名前は以前から知っていて公演にも何度か見に行っているはず*1だが、調べてみると前回に見に行ったのが早稲田どらま館での公演(2017年2月)*2であるから、6年ぶりということになる。「一匹のモンタージュ」は再演(リクリエーション)ということになっているが、SCOOLでの初演は見ておらず、今回が初めてである。
バストリオは演出家/映画監督の今野裕一郎が主宰ではあるが複数のパフォーマー・アーティストによる共同創作を行う集団となっている。こうした形態の集団には古くはダムタイプ、最近では矢内原美邦らによるニブロールの例もあるが、一時的にそうした形式で活動を行うことはあっても継続的に長期間活動を続けている例は非常に少なく(バストリオは2010年設立のため13年目)、そういう意味でも注目していきたい集団*3なのである。
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作り方以外にもこの3つの集団のクリエイトにはいくつか共通点があって、それは作品に首尾一貫した物語(ナラティブ)がないことだ。私の考えでは演劇の定義として、言葉と身体、それ以外の要素(音楽や美術、映像)などがひとつの空間の中で特定の長さの作品として展開するということがあり、そういう意味ではバストリオは演劇だと考えるし、言語が重要な要素として存在すという意味ではダムタイプやニブロール(あるいはミクニヤナイハラプロジェクトももちろん)は演劇と呼んでも問題ないと考えているのだが、この世界には物語の存在を演劇とそれ以外のアート分野との分水嶺と考えるひともいるようで、バストリオが「演劇ではないのではないか」と見なされる理由のひとつがそのことなのかもしれない。
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「一匹のモンタージュ」という表題だが、作品自体はモンタージュというよりは短いパッセージが連続的に展開するコラージュのような作られ方をしている。しかもダムタイプやニブロールの作品が表現スタイルが作りこまれて洗練されたプロダクツ感を感じさせるのに対して、これはバストリオだけではなく2010年以降に出てきた集団全般に感じることなのだが、表現されている部分のひとつひとつが生に近いまま無造作に放り出されて配置されているというような質感があって、そのため舞台作品というよりは美術インスタレーションに近いような部分もあるように感じられるのだ。それは音楽や道具の扱い方にも反映されていて、舞台で使われる音楽はゆるい感じの生演奏や音楽というよりは水や石、コインなどいろんなオブジェを使って作り出された「音楽というよりは音」ということが多く、そういったところもバストリオの生み出す空気感となっているのではないか。
作・演出:今野裕一郎
作:黒木麻衣、坂藤加菜、佐藤桃子、SKANK/スカンク、鈴木健太、高橋由佳、中條玲、橋本和加子、本藤美咲、他一匹は一匹、
十でも百でも千でもないです
じっと見つめたらこちらを見たり見なかったりして生きてるということがわかりますわかりようがないんを肝に銘じた
目を瞑ることさえも自由な
四方八方からやってくる
一匹の野性、モンタージュの嵐
バストリオ
パフォーマンス作品を制作するコレクティブ。2010年⽴ち上げ。メンバーは今野裕⼀郎、橋本和加⼦、⿊⽊⿇⾐、坂藤加菜。⽣きていく中で出会うビビットな瞬間を⼩さなシーンへと⽴ち上げるクリエイションを⾏う。様々なメディアを⽤いることで断⽚的な時間を構成し、いくつもの⾏為・出来事・モチーフをバラバラのまま配置する上演は、⾳楽的なグルーブを帯びながら“名付けようのない⽣”を描き出す。存在そのものを肯定するような祝祭的な時間は、観客の想像⼒を喚起し世界を捉える視点に奥⾏きをもたらす。
『一匹のモンタージュ』公演写真 2022年 会場:SCOOL 撮影者:コムラマイ
出演
黒木麻衣、坂藤加菜、佐藤桃子、SKANK/スカンク、鈴木健太、高橋由佳、中條玲、橋本和加子、本藤美咲、他※出演を予定しておりました中澤陽は降板となりました。
詳細はこちらをご確認ください。
http://www.komaba-agora.com/2023/09/15310
スタッフ
空間美術 岩村朋佳
衣装:高橋由佳
音響:岡村陽一
照明:緒方稔記(黒猿)
チラシデザイン:kurokimai(絵)、鈴木健太(デザイン)
記録写真:コムラマイ
制作:橋本和加子