下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

第24回OMS戯曲賞 候補作品決定

第24回OMS戯曲賞 候補作品決定

10月4日に一次選考を行いました結果、以下の8作品が最終選考の対象になりました。
なお、大賞・佳作の発表は授賞式・公開選評会の会場にて行います。

上田 誠    「来てけつかるべき新世界」
植松 厚太郎  「午前3時59分」
岡部 尚子   「ここも誰かの旅先」
田中 遊    「私と本屋の嘘」
棚瀬 美幸   「これっぽっちの。」
田辺 剛    「微熱ガーデン」
村上 慎太郎  「ハイアガール」
山崎 彬    「メロメロたち」

※50音順・敬称略
※候補作品は後日ホームページに掲載いたします

第24回OMS戯曲賞 授賞式・公開選評会

日時:2017年12月19日[火]18時30分~20時30分 *開場18時(予定)
場所:大阪ガス本社ビル 3Fホール
大阪市中央区平野町四丁目1番2号(地下鉄御堂筋線淀屋橋駅徒歩3分)
※入場無料
※お客さま用の駐車場はございませんのでお車でのご来場はご遠慮ください。

以前から疑問に思っているのだが、OMS戯曲賞の選考は選考作品の上演期間から岸田戯曲賞の後追いになってしまうのだ。これまでは関西から岸田戯曲賞受賞作家が出ることはしばらくなかったので、問題にはなっていなかったが、今年はどうなのか?
 選考委員が異なるとはいえ、今年の春の岸田戯曲賞の選考会で全選考委員の抜群の支持でもって受賞作に選ばれた 上田誠「来てけつかるべき新世界」が落ちるということがありえるのか。かと言って後追いは嫌だということになって選考委員が別の作品をあえて選び、ヨーロッパ企画の関係者を憤慨させることになったとして何の意味があるのか。
 個人的には岸田戯曲賞では最終候補作に残らなかった山崎彬「メロメロたち」との同時受賞とかなら意味があると思えるが。

下鴨車窓「冬雷(ふゆのらい)」@こまばアゴラ劇場

下鴨車窓「冬雷(ふゆのらい)」@こまばアゴラ劇場

下鴨車窓の作品は関西在住時代に何度か見ているのだがひさしぶりに見たら大幅に作風が変わっていて驚いた。以前はカフカのような不条理劇というか、物語の舞台がどこの国なのかよく分からない外国のような異世界で、延々と抽象化された不条理な描写が続く作品を何本か見た。
 実はこの作品も冒頭の部分ではなにかこの世のものではないかもしれない荒涼たる世界に登場人物が現れたのかと思ったのだが、舞台は明らかに日本だ。
 まるで異世界のように見えたのはそこが山頂で、以前は山小屋があったのが火事で焼失してしまったために、現在は寒々としたとした風景になっているからだというのが進行とともに分かってくる。
人物それぞれの属性は「姉さん」「○○子(さん)」などと呼び合う日本人家族の通例から最初ははっきりとは分からない。この山に姉弟が何をしにやって来ているのかも不明だが1年前に何かが原因で娘が亡くなり、翌日に法要が営まれる幼い娘が好きだったという思い出の場所に一族が集まってきているのだ。
 亡くなった娘については物語の後半、父母である長姉とその夫が2人だけになって激しくやり合うまでは誰もが話題を避け積極的に話そうとしない。
 この問題は現在のこの夫婦の関係性が破綻寸前になっていることなどに影を落としているが、セリフとしてはっきり語られることがない。「空虚な中心」のように存在しているのだ。
隠蔽された死を「空虚な中心」として描く手法は松田正隆「月の岬」や弘前劇場長谷川孝治の一連の作品群など1990年代の関係性の演劇では典型的な手法といえたが、最近は珍しいかもしれない。
 ただ、過去の「関係性の演劇」の代表作とされている作品群と比較してしまうといやおうなく解像度の低さも感じられる。省筆という手法はあるけれど、やはり単純にここでは娘が亡くなったからうまくいかなくなったということではなくて、この夫婦の心のわだかまりが何に由来するものかということをもう少しきめこまかく書き込まれていたらと少し残念に思ってしまう。
 ただ「娘が好きだった場所だから」というだけでは根拠が薄い。彼らが娘が亡くなった事故現場ではなく、ここに集まるのは何か隠された理由があるはずだ。
 山小屋が焼けたことにも何か理由がある気がする。普段はこの家族ら関係者しか入ってこないところに不審者が侵入して付け火をするのは無理がある。
 山小屋のオーナーは放火犯人として自分の会社で働いていて部下の妹を疑う。それを妹は即座に否定はするがそう考えるには何らかの根拠があるはずだ。亡くなった姪が不審火の原因かとも考えたが、どうにも辻褄が合わない。このことについてはもう少し考えてみたい。
下鴨車窓は京都を本拠としていた(いる)田辺剛の演劇プロデュースユニット。ただ、今回の公演は東京の俳優も含めキャストオーディションを行い、東京や三重に参加メンバーが集まり、創作された作品だという。
 実はこの日アフタートークのゲストだった土田英生はここ3年ぐらいは京都、東京の両方に住居を持ち、仕事のため年に9カ月ぐらいは東京・下北沢に借りている住居の方で暮らしているらしい。
 iakuの横山拓也や悪い芝居の山崎彬も東京・関西の両拠点での活動にシフトしてきているようで、こうした形態で活動する演劇人あるいは劇団は今後増えてくるのかもしれない。そもそも青年団のように地方への拠点の移動を予定している劇団が現れたり、地方のアートセンターでの滞在製作するカンパニーが増えていることも考慮すれば以前と比べれば地方に拠点を残したままで東京でも公演だけではなく、演劇製作も行うということへの壁は薄くなってきているのかもしれない。

脚本・演出:田辺剛


下鴨車窓はふだんは京都を拠点に創作・上演を行っていますが、本作は地域をさまざまな仕方で越えたところでの創作と公演を行う試みとして、東京でのオーディションで決まった俳優らとともに主に都内で創作し3都市を巡演する企画です。海に臨む小さな街で起きた山火事をめぐって、淡々としたリアルさに歪んだ不条理性を滲ますように描かれる男女6人の物語。どうぞご期待ください。


下鴨車窓

劇作家・演出家の田辺剛が主宰する現代演劇の創作ユニット。2004年から前身の劇団から引き継いで活動を京都にて開始した。年に二回ほどの公演を行いさまざまな地域での上演を行っている。2015年には香港・マカオでの海外公演も果たした。こまばアゴラ劇場では『書庫』(2008)、『漂着(island)』(2015)、『渇いた蜃気楼』(2016)に続く四度目の公演となる。

出演
気田睦 横山莉枝子 國松卓 政井卓実 福井菜月(ウミ下着) 篠原彩
スタッフ
[舞台監督]山中秀一
[舞台美術]川上明子
[照明]葛西健一、堀あゆむ
[音響]小早川保隆、下野司
[企画制作]下鴨車窓、三井耶乃ほか

神村恵 『消えない練習』・篠田千明 『ゆーばーん』@SCOOL

神村恵・篠田千明「さっきあった時間はいま」ワークインプログレス@SCOOL

上演作品

神村恵 『消えない練習』篠田千明 『ゆーばーん』

出演

神村恵・篠田千明

日程

2017.11.8(水) 9(木)
19:30開演(開場は30分前)

料金

1,000円


11.8 WED 19:30
11.9 THU 19:30

神村恵 ソロ作品『消えない練習』
2015 年に初演した作品を、再構成して上演します。 過去を思い出せないと、現在の目の前のことを見ることができない。 さっき手が下にあったことを思い出せなければ、手が上に上がるという動きを、見ることができない。しかし手の現在を見なければ、そもそも何も見えない。
(振付・出演:神村恵)
_
篠田千明 ソロ作品『ゆーばーん』
人生で初めてのソロのタイトルは、タイ語で”うちにいる”。これは翻訳なしで文脈で覚えた最初のタイ語でもある。 移動が多い人生がはじまり随分経つが、久々にバンコクで部屋を借りた。その部屋から始めてみる。
(企画・構成・出演:篠田千明)

助成:セゾン文化財
協力:Speedy Grandma, Bridge Art Space, Nut Sawasdee

12月に京都の小スペースでで本公演が予定されており、それに向けてのワークインプログレスということだった。
 前半の神村恵は以前行った公演の再演ということだが、決められたミニマルなプロトコルをひたすらに繰り返すという「いわゆるタスク系ダンス」だったようだ。ようだというのは用事があり遅れてしまい途中からしか見られなかったからで、それゆえここではこれ以上のコメントはしない。
 篠田千明の一人芝居は現在彼女が住んでいるタイのバンコクでの部屋について語ったもの。モニターによって壁に映し出された字幕的な文字テクストとそれを彼女が読んだものを録音した音声、それからここにいる彼女が実際に語るセリフ。前半はそれが3つ重なり合うように展開するのだが、そういうことをする意図は上演を実際に見ているだけではあまりよく分からない。
 上演はほぼ同じ内容に思われるものが、同時に提示されるため、重複感が強くて、冗漫な風に感じるのは否めない。上演が終わってからのワークインプログレスでの説明では舞台上で聞きながら語ったりすることに意味があるらしかったが、正直言って見る側にはそれは分からない。
 中盤以降、英語、タイ語の発話と字幕が重なったりするようになる。ここではテクストが時間的にずれたり、内容が一部異なったりしはじめると次第に上演は複数要素のコラージュ的な面白さを生み始める。
 ここらあたりまでは手法に目が行きがちになるが、映像とテクスト、音声とパフォーマーによる身体所作などをとりまとめて組み合わせる後半部分になると実は手法的により複雑になったようでいて、むしろ描かれる彼女のタイでの実際の生活はどうなのかというようなことに興味は移って、手法は次第に透明に感じられていく。実際にはここが面白いのだが、作り手側はどうも観客側が受けるそういう印象はそれほど重要ではないらしく、結局のところ何がやりたいのかということはよく分からなかったかもしれない。

ロロ+キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」@シアターサンモール

ロロ+キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」@シアターサンモール

【脚本・演出】三浦直之 【音楽】曽我部恵一 【衣裳】伊賀大介 【出演】亀島一徳 篠崎大悟 島田桃子 望月綾乃 森本華(以上ロロ) 緒方壮哉 北村 恵(ワワフラミンゴ) 多賀麻美(青年団) 田中佑弥(中野成樹+フランケンズ) 松本亮
2017年11月2日(木)~11月12日(日)

前回公演「BGM」*1を見たときにロードムービー風作品を前にも見たことがあった。その記憶がおぼろげに甦ってきたが、それがの「父母姉僕弟」の初演(2012年王子小劇場)だったことを今回の舞台を見ている間に思い出した。
ロロの作品は難解というわけではなく、特別な知識がない観客でも肩肘張らずに見ることができるものではあるが、実はアニメ、漫画、小説など様々なテキストからの引用がなされている。この「父母姉僕弟君」でもそうした他作品からの引用は多用されている。
 途中の野球の場面での「ドカベン」「タッチ」など様々な野球漫画からのセリフの引用などはおいておくとしてもまず考えられるのは作者が大好きだと言う高橋源一郎の「優雅で感傷的な日本野球」の影響であろうか*2
 主人公である明夫・ザ・キッド(亀島一徳)ほかヒロインの雨天球(島田桃子)、仙人掌、ダーティ・ダンディ・ダディーマン、エノモトキハチ、笠原園絵、森永重樹、雨陸生、キャット・バ・バーと登場人物の名前はみな来歴がありそうで風変わりなものばかりだが、出典が分かるものは限られている。エノモトキハチはもちろん野球選手の榎本喜八だろう*3
 明夫・ザ・キッドと雨天球は仲の良い若い夫婦。キッドの故郷をドライブしている。そこでなぜか突然のように天球が「私が死んだらすぐに新しい奥さんをもらってほしい、でも私を忘れないでほしい」と遺言のように死後への希望を語り始める。これが物語の冒頭だ。
 天球は死に白衣に羽のついた天使になっている。キッドは自分と天球が出会った日の大きな木の下を目指し、時空を超えた旅に出ることにし、その途中で先に挙げた仙人掌はじめ奇妙で不可思議な仲間たちと出会い、擬似家族的な集団を結成する。これがファンタジーに溢れたロードムービー風の演劇「父母姉僕弟君」の筋立てだ。
 ロロの三浦直之はボーイ・ミーツ・ガールの物語を劇団の旗揚げ以来ずっと描き続けてきた。そこでは主人公の男が愛を捧げる女の子は「もうすでに失われている」ことが多く、初演を見た際はこの物語もそういう一連の系列の物語なんだろうと単純に考えていた。
 ただ、今回改めて再演を見てもう一度考えてみて、ここにはそれだけではない、あるいはそれ以上の何かがあるのではないか。まずヒロインが死別したというのは今までもないことはないのだが、冒頭に登場して病気だからとか何かの説明もなしに突然死んでしまうのはなぜなのか。そして、この作品のもうひとつの主題が「記憶」ということだが、時間の経過によりいやおうなく失われていく記憶のことが天球の口から何度も繰り返されるのだ。
 もうひとつはやはり作品中のあらゆる場面に散りばめられている「死」のイメージだ。物語内で一度ははっきりと死者になってしまうのは仙人掌の父親であるダーティ・ダンディ・ダディーマン、雨陸生、死の国にいる電源……。自分が死者とははっきりと描かれているわけではないが、キッドをはじめほとんどの登場人物はその死者と深い関係を持っている。エノモトキハチももちろん亡くなってほどない元野球選手の名前だ。
 そこで分かってきたことがひとつある。それが直接言及されることはいっさいないけれど、「雨天球」とは東日本大震災津波にのまれそれ以前の景観をすべて失ってしまった三浦の故郷、宮城県女川町のことではないのか。
 東日本大震災の被災地はあまりにもエリアが広いのでどの場所についての知識も広く持っているわけではないが、とある理由で女川町については特に海岸部分は津波の直撃を受けて、東日本大震災の前と後では普段の風景が一変してしまっていることも映像などで見た記憶がある。

 いわき、松島、仙台、石巻の旅程を選んだ土地がすべて東日本大震災の被災地であることには絶対に偶然ではなく大きな意味があるはずだ。この作品の主題が失われてしまった過去の風景であることを考えれば、この作品で設定された10年という歳月にはただの物理的な時間というだけではなくて、2016年から2006年へと過去に遡る際に、その間に2011年3月11日はあり、しかもそれは過去の風景を完全に消し去ってしまうような切断線としてそこにあるんだということを誰も否定できないだろう。
 ところが、この舞台で三浦直之はあえて物語の核心である震災には触れることはない。この芝居を見る全ての観客が設定から予期すること、つまり震災の記憶をあえて描かないのが三浦らしいと思った。

ロードムービー風演劇としてこの「父母姉僕弟君」の続編的な意味合いを持つ「BGM」では震災のことは直接劇中では触れられないけれど「いわき、松島、仙台、石巻」の地名は出てきた。
 「父母姉僕弟君」でそれさえ出てこないのは震災から1年半ぐらいしか経過していない当時の心情ではそれに触れることもできないほど傷は深かったからかもしれない。なんとも言えず「せつない」のがロロの持ち味ではあるのだが、この「父母姉僕弟君」がいつもにもまして「せつなさ」濃度が高いのは失われてしまった雨天球にはもう一度出会えても「さよなら」の思いをもう一度告げることしかできないわけだし、そのことに失われてしまった故郷の風景への思いが力いっぱい盛り込まれているからだろう。
優雅で感傷的な日本野球 〔新装新版〕 (河出文庫)

ロロ「父母姉僕弟君」
ロロ http://llo88oll.com/
「父母姉僕弟君」
佐藤佐吉演劇祭2012参加作品

2012/8/5(日)〜14(火) @王子小劇場 14st.

【脚本・演出】 三浦直之

【出演】
明夫・ザ・キッド:亀島一徳(ロロ)
雨天球:島田桃子
仙人掌:望月綾乃(ロロ)
ダーティ・ダンディ・ダディーマン:内海正考
エノモトキハチ:田中佑弥(中野成樹+フランケンズ)
笠原園絵:葉丸あすか(柿喰う客)
電源:多賀麻美
森永重樹:篠崎大悟(ロロ)
雨陸生:山田拓実
キャット・バ・バー:小橋れな

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:書評家・豊崎由美はキャサリン・ダン「異形の愛」を参照項として指摘しているようだが、その著作は未読なため判断は留保する

*3:私の年代ではあまり現役時代のことは分からないのでソースは沢木耕太郎「敗れざるものたち」なのだが、初演の上演時期に近い2012年3月に亡くなっているので、当時話題になったのかもしれない

庭劇団ペニノ「地獄谷温泉 無明ノ宿」 神奈川・神奈川芸術劇場大ホール(KAAT)

庭劇団ペニノ「地獄谷温泉 無明ノ宿」 神奈川・神奈川芸術劇場大ホール(KAAT)

2017年11月4日(土) 〜12日(日) 〈大スタジオ〉

作・演出:タニノクロウ

出演:マメ山田  辻孝彦(劇団唐組) 飯田一期  日高ボブ美(ロ字ック) 久保亜津子  森準人  石川佳代

「地獄谷温泉 無明ノ宿」はタニノクロウ岸田戯曲賞受賞作品でそれゆえ代表作といっていい作品なのだと思うが、これまでなぜか見逃してきていて、実際に上演を見たのはこれが初めて。今回は庭劇団ペニノとしてはこの作品の最終上演*1ということなので、スケジュール的に厳しかったのだが、なんとか調整して公演に駆けつけることができた。
 戯曲から起ち上がり描き出される世界も戯曲賞受賞作らしく、独自性は感じるけれど、この公演でもっとも印象的なのは宿の部屋、温泉の更衣室(?)、湯殿の3つの場面が盆に載って回り舞台と展開していく舞台装置である。
 無明とは劇中でも簡単に解説されるように仏教用語で「邪見・俗念に妨げられて真理を悟ることができない無知。最も根本的な煩悩で、十二因縁の第一」なのだが、それだけではなく時として闇の中に窓からの明かりで部屋がぼんやりと照らし出されるような「無明=闇に浮かび上がる世界」というイメージが今回の美術、照明によりビジュアル化されていく。
初演時の劇評で安藤光夫氏が書いているが、劇団の常連出演者であるマメ山田へのあてがき的書き下ろしのような性格がこの芝居にはあり、彼の存在なしに成立しないような舞台だ。物語の中心は東京から田舎の寂れた温泉町にある宿にやってきた人形遣いの親子、小人症の父親マメ山田)とそれに付き添う息子、一郎である。
 親子はそれぞれがどこか欠けた人物だが、それを迎える宿の住人も口の利けない三助と盲目の男とそれぞれ障害がある。
 彼らの織り成す闇深き夜の出来事。「ダークマスター」を前に見ていたから「ひょっとしたら人形の方が人形遣いの男たちを操っているという類のホラーかな」と思った瞬間もあったが、男たちが人形に取り付かれているというような部分はあっても、人形が人を操るとかそういう怪談話ではない。
 

*1:初演時の安藤光夫氏によるレビュー spice.eplus.jp

ももクロと元SMAP(稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾)の「3人だけの72曲生ライブ」@AbemaTV

ももクロと元SMAP(稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾)の「3人だけの72曲生ライブ」@AbemaTV

SMAPの熱心なファンというわけじゃないのだけれど人気グループになる前に演劇の舞台に出ている草なぎ剛稲垣吾郎を見て俳優としての実力に感心させられたことがあった。その頃から俳優集団としてのSMAPには注目し、ドラマなども折に触れ見てきた。

今は私がファンであるももクロドリフターズや嵐やSMAPのような息の長いグループを目指したいと以前から言い続けていることもあり、ジャニーズを退社した3人がどうなるかというのが気になった。

もうひとつは新しい地図の3人が今回ももクロが主戦場としているネット配信の世界に入ってきたことで、目標のひとつであったSMAPももクロの距離が測れるのではないかということだった。

 そして、まず分かったのは(というかこれまでも薄々分かってはいたが、はっきりしたことは)、国立競技場でのライブを成功させたことなどで最近でこそ時折「国民的アイドルグループ」と呼ばれることもあるももクロではあるが、真の国民的アイドルグループとはどのくらいの人気なのかということについて改めて思い知らされたことだった。AbemaTV史上最高の7400万超の総視聴数というのはそのまま本当の視聴者数というわけではないとディスる声もネット上ではあるけれど、これがどの程度の数字なのかというと今年初めのももクロカウントダウンライブ「第二回ゆく桃くる桃 ~年またぎ笑顔 三昧~ 」が220万視聴越え(4時間)を記録しこれがその時点でのAbemaTV生中継史上初で、これだけでもネット中継の世界ではモンスターグループと呼ばれたものだが、これを1時間当たりに換算すると55万。一方、72時間ホンネテレビは7400万だから1時間当たり102.8万。単純計算で言えば単位時間倍近い総視聴数の差をつけられているわけだが、ももクロの方は大みそかの4時間という視聴数が伸びやすい時間帯。それに対し今回は再放送を流しただけの夜中の時間帯を含む数字だから本当はもっと大きな差があるかもしれない*1

いずれにせよSMAPはずっと以前からももクロの目標だった。しかし、同じく目標に掲げたドリフターズはこれまで個々のメンバーとつちかってきた関係を基に今月12日放送のフジテレビ「三宅裕司春風亭昇太のサンキュー歌謡曲」に出演、ドリフターズ3人(加藤茶高木ブー仲本工事)と共演しドリフ名曲メドレーを一緒に演奏する。嵐も何度も番組に読んで貰い、嵐のライブにはおそらくジャニーズ側の招待でメンバーが見に行ったりとそれなりの関係は保ってきたが、ことSMAPに関しては完全にももクロ側の片思いでこれといった接点はこれまでなかった。

 興味深いのは先日行われた「ももいろフォーク村」でももクロが初めてSMAPの「ススメ!」を歌ったことだ。ももクロKinki Kidsの番組で「硝子の少年」を歌ったりもしているし、ジャニーズグループの歌を歌ったことはこれまでもあるけれど、この微妙な時期にこれまで歌ったことのないSMAPの曲を歌ったことは明らかにたまたまではない、はっきりした意図があるのは確かだ。



『3人だけの72曲生ライブ』のセットリスト

1.『学園天国』小泉今日子
2.『バンザイ~好きでよかった~』 ウルフルズ

3.『今宵の月のように』 エレファントカシマシ

4.『innocemt world』 Mr.Children

5.『キセキ』GReeeeN

6.『イージュー★ライダー』 奥田民生

7.『あの素晴らしい愛をもう一度』 加藤和彦北山修

8.『Around The World』 MONKY MAJIK

9.『WON’T BE LONG』 バブルガム・ブラザーズ

10.『WOW WOW TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~』 H jungle with t

11.『ガッツだぜ!!』ウルフルズ

12.『CHE.R.RY』 YUI

13.『涙のリクエスト』 チェッカーズ

14.『LOVE SOMEBADY』 織田裕二

15.『スリル』 布袋寅泰

16.『ラブリー』 小沢健二

17.『OH MY LITTLE GIRL尾崎豊

18.『Diamonds』プリンセスプリンセス

19.『HELLO』福山雅治

20.『愛してる』米米CLUB

21.『サイレントマジョリティー』 欅坂46

22.『打上花火』 DAOKO×米津玄師

23.『恋』 星野源

3人による恋ダンスも!

24.『少年時代』 井上陽水

25.『青空』THE BLUE HEARTS

26.『僕の見たビートルズはTVの中』 斉藤和義

27.『奇跡の地球』 桑田佳祐&Mr.Children

28.『SOMEDAY』 佐野元春

29.『いつか』 ゆず

30.『涙のキッス』 サザンオールスターズ

31.『不滅の男』 遠藤賢司

32.『ひまわりの約束』 秦基博

33.『Romanticが止まらない』 C-C-B

キーが高くて、稲垣吾郎さん声が裏返る。

「高いんだよ~!」って叫ぶのがかわいらしかった。

34.『PON PON PON』きゃりーぱみゅぱみゅ

35.『R.Y.U.S.E.I.』 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE

ランニングマンステップ披露!

36.『前前前世』 RADWIMPS

37.『愛は勝つ』 KAN

38.『君をのせて』 井上あずみ(『天空の城ラピュタ』主題歌)

39.『Hello, my friend』 松任谷由実

40.『いつかのメリークリスマスB’z

41.『恋しくて』 BIGIN

42.『アララの呪文』 ちびまる子ちゃんwith爆チュー問題

43.『やつらの足音のバラード』 かまやつひろし

44.『心の旅』 吉田栄作

45.『さらば恋人』 堺正章

46.『ハナミズキ』 一青窈

47.『歌うたいのバラッド』 斉藤和義

48.『ら・ら・ら』 大黒摩季

49.『ultra soul』 B’z

50.『負けないで』 ZARD

51.『HOWEVER』 GRAY

52.『PRIDE』 今井美樹

53.『いとしのエリー』 サザンオールスターズ

54.『翼をください

55.『ヘビーローテション』 AKB48

56.『LOVEマシーン』 モーニング娘。

57.『ピンク スパイダー』 hide with Spread Beaver

58.『Don’t wanna cry』 安室奈美恵

59.『君がいるだけで』 米米クラブ

60.『歩いて帰ろう』 斉藤和義

61.『時の過ぎゆくままに』 沢田研二

62.『強く儚い者たち』 Cocco

63.『クリスマスソング』Back number

64.『とんぼ』 長渕剛

65.『Runner』 爆風スランプ

66.『大迷惑』 ユニコーン

67.『止まらないHa〜Ha』 矢沢永吉

68.『ファイト!』 中島みゆき

69.『チェリー』 スピッツ

70.『上を向いて歩こう』 坂本九

71.『雨あがりの夜空に』 忌野清志郎

72.『72』 稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾


simokitazawa.hatenadiary.jp

*1:ただ、ももクロカウントダウンライブはAbemaTVの単独中継ではなく、時間帯によりフジテレビNEXT、テレビさいたまの3元同時中継であったことも逆に考慮する必要はあるかもしれない

『実験と対話の劇場 - 新しい人 / 出来事の演劇 -』@東池袋あうるすぽっと

『実験と対話の劇場 - 新しい人 / 出来事の演劇 -』@東池袋あうるすぽっと 玉城大祐 演劇計画・ふらっと

○参加アーティスト:演劇計画・ふらっと、 / シラカン /関田育子 / 玉城大祐
○キュレーション:松田正隆

○主催:フェスティバル/トーキョー
いま、ここで、生まれ続ける「演劇」を捕まえる
劇作・演出家で、立教大学でも教鞭をとる松田正隆が4組の若手アーティストに声をかけ、自身も強い関心を寄せる「出来事の演劇」をテーマにした実験と対話の場をひらく。
参加するのはいずれも、劇や空間設計の文法そのものを自覚的に利用、解体、再構築する20代のつくり手。本企画では、それぞれが60分以内の作品を創作、2組ごとに発表し、ゲストを交えたディスカッションにものぞむ。
目指すのは、単に戯曲の言葉を再現するのではない、その時その場で生まれる現象=「出来事」としての上演。それはまた、「戯曲を書き、上演する」という、ごく当たり前にも思える行為を解きほぐし、再検討することにもつながる。言葉、身体、空間、観客……演劇を構成するさまざまな要素、その間にある力学をいかに利用し、免れ、出来事を起こすか――。つくり手と観客双方に新しい知覚、思考をもたらす探求と実践がここに始まる。

『実験と対話の劇場 - 新しい人 / 出来事の演劇 -』関田育子・シラカン@あうるすぽっと

『実験と対話の劇場 - 新しい人 / 出来事の演劇 -』@東池袋あうるすぽっと

○参加アーティスト:演劇計画・ふらっと、 / シラカン /関田育子 / 玉城大祐
○キュレーション:松田正隆

○主催:フェスティバル/トーキョー
いま、ここで、生まれ続ける「演劇」を捕まえる
劇作・演出家で、立教大学でも教鞭をとる松田正隆が4組の若手アーティストに声をかけ、自身も強い関心を寄せる「出来事の演劇」をテーマにした実験と対話の場をひらく。
参加するのはいずれも、劇や空間設計の文法そのものを自覚的に利用、解体、再構築する20代のつくり手。本企画では、それぞれが60分以内の作品を創作、2組ごとに発表し、ゲストを交えたディスカッションにものぞむ。
目指すのは、単に戯曲の言葉を再現するのではない、その時その場で生まれる現象=「出来事」としての上演。それはまた、「戯曲を書き、上演する」という、ごく当たり前にも思える行為を解きほぐし、再検討することにもつながる。言葉、身体、空間、観客……演劇を構成するさまざまな要素、その間にある力学をいかに利用し、免れ、出来事を起こすか――。つくり手と観客双方に新しい知覚、思考をもたらす探求と実践がここに始まる。

ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス」

ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス

ヨコハマトリエンナーレ
2017
ディレクターズ 逢坂 恵理子
横浜美術館館長
三木 あき子
キュレーター、
ベネッセアートサイト直島インターナショナルアーティスティックディレクター
柏木 智雄
横浜美術館副館長、主席学芸員
構想会議メンバー
※アルファベット順 スハーニャ・ラフェル
M+美術館 エグゼクティブ・ディレクター
スプツニ子!
アーティスト、マサチューセッツ工科大学メディアラボ助教
高階 秀爾
美術史家、大原美術館館長、東京大学名誉教授
リクリット・ティラヴァーニャ
アーティスト、コロンビア大学芸術学部教授
鷲田 清一
哲学者、京都市立芸術大学学長、せんだいメディアテーク館長
養老 孟司
解剖学者、東京大学名誉教授

 何とか横トリ会期中にぎりぎり間に合った。

青年団若手自主企画vol.72 柳生企画「ひたむきな星屑」@SCOOL

青年団若手自主企画vol.72 柳生企画「ひたむきな星屑」@SCOOL

作・演出 柳生二千翔(青年団|女の子には内緒)

出演者
 坂倉奈津子
折舘早紀
永山由里恵(以上、青年団
矢野昌幸
大重わたる夜ふかしの会

公演日程

11月2日(木)20:00 〔初日割〕
11月3日(金・祝)14:00 / 18:00
11月4日(土)14:00 / 18:00
11月5日(日)18:00
11月6日(月)14:00

チケット料金

予約 2,200円
当日 2,500円
18歳以下(予約・当日とも) 1,000円
〔初日割〕 予約2,000円 当日2,300円
日時指定・全席自由席・整理番号付き
※未就学児童の入場不可


11.2 - 20:00
11.3 14:00 18:00
11.4 14:00 18:00
11.5 - 18:00
11.6 14:00 -
受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前



乾いた空気が纏わりつく、正しさの季節で。
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朝日ケ丘には、新たに建造された高速道路が敷かれている。
街を縦断するように伸びる道。
そこに併設されたサービスエリアが、現在の街の主産業となった。
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小山青子は、久しぶりにこの街に帰ってきた。
そこで姪の加絵と出会う。
彼女は巷で“させ子”と呼ばれており、誰とでも寝る女性として有名だった。
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小綺麗に広がっていく街並みと、昔と変わらず閉じた人々。
私たちは過去を清算できないまま、
触れるもの全てがどんどんコーティングされ、
生まれ変わっていく。

■チケット予約開始日
2017年9月16日(土)
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■チケット予約フォーム
https://komaba-agora.com/ticketsell/#pf756
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■チケット取り扱い・お問い合わせ
青年団
TEL:03-3469-9107(12:00 -20:00)
HP:http://www.seinendan.org/

■スタッフ
美術:金子恵美
音楽/音響:佐藤颯太
衣装:原田つむぎ(東京デスロック)
記録写真:三浦雨林(青年団
宣伝美術:内田 圭
制作:寺田 凜(青年団
特別協力:立蔵葉子(青年団
総合プロデューサー 平田オリザ
 企画制作:柳生企画/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
協力:女の子には内緒、舞台美術研究工房六尺堂、(有)レトル、無隣館、夜ふかしの会、株式会社ワタナベエンターテインメント

simokitazawa.hatenablog.com
せんだい短編戯曲賞受賞の青年団若手の注目株の新作。平田オリザ流の群像会話劇に見せかけてモノローグ風の回想のようなものが混ざり込んでくる不思議な叙述。地方都市にある高速道路にある巨大なショッピングモール風サービスエリアに東京からひさびさに生まれ故郷に帰ってきた女(小山青子)の視点から始まる。
 この作者の前半は青子がこのSAで出会う人たち、変わったようで変わらない故郷の姿が丁寧に描かれていくのだが、