作・演出:柳生二千翔
出演:うらじぬの、鶴田理紗、林ちゑ、吉田庸地上は汚染されて健康的に暮らすのが困難になった時代。ほとんどの人間は地下の巨大な集合住宅に居を構えているが、 部屋の数が限られているため、 一定の住民税を支払えない市民たちは引き続き地上での暮らしを余儀なくされていた。階層が上なほど社会的立場が低く、下にいくほど高い。
上層エリアに住む京子は、心が離れてしまった夫と家庭内別居中。単身では地上行きになりかねないため、 互いに離婚を切り出すこともできない。
そんな中、難民支援法の恩恵を受けて、上階に地上人の男が住み始めた。外から来た彼に興味を持つ京子だったが、 やがて自分との間に底知れない溝を感じるようになる。人類の未来と希望が託されたこの建物は、 今日も増改築を繰り返し、地下へと伸び続けていく。
無隣館柳生企画「メゾンの泡」@アトリエ春風舎観劇。せんだい短編戯曲賞を受賞した柳生二千翔の作品を初観劇。SF的な設定で未来の階級社会に潜む差別感情の問題を描き出すが、現代の階層社会への揶揄の意味合いも持たせているのであろう。若手の中ではもっとも平田オリザ的だが、これが彼の本領なのかどうかには若干の疑念もある*1。破天荒だった綾門と比較すると優等生っぽい構えが気になるのだが、この公演では一部しか見せてないような予感もする。次回公演もぜひ見たい。
無隣館を新劇の劇団によくあるような養成所のようなものと勘違いしている人もいるかもしれないが、到底そんなものではない。柳生二千翔もそのひとりだが、演出部には第1期の綾門優季に続き、次々と才能あふれた人材が集結しており、すでに複数の若手作家の間で引っ張りだこになっている感のある鶴田理紗をはじめ、俳優(特に女優)の水準は非常に高いと思わせた*2。
女の子には内緒「ささやきの彼方」せんだい短編戯曲賞受賞