下北沢通信

中西理の下北沢通信

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サンプルワーク・イン・プログレス公演「ブリッジ 〜モツ宇宙へのいざない〜」@アーツ千代田3331 B104

作・演出 松井 周
出演 古屋隆太 奥田洋平 野津あおい 天明留理子 武谷公雄  伊東沙保 鶴巻紬 山田百次

 「モツ宇宙」(腸からつながったもうひとつの宇宙)を信奉する新興宗教のワークショップ(布教のための集会)という呈で舞台が進行する。設定が思わず笑っちゃいます的に抜けてておかしいので、コントのように受け取りながらしばらく見ていると、登場人物の全員が心に闇を抱えて壊れかけている人間なんだということが分かってきて、松井周の乾いた人間観が思わず恐ろしくなってくる。
 最初から明らかにおかしい電波系の野津あおい、トラウマが障害になってしまった奥田洋平、変態ぶりが絶妙な山田百次、自壊している鶴巻紬、一番普通に見えるが実はもっとも不気味な武谷公雄、もっとも付き合いたくない偏執タイプの伊東沙保……。いくら新興宗教の現場だといっても普通もう少しまともな人が交じっているものだが、全員おかしい世界を創造する松井周の内在した狂気(要素)に戦慄させられた。異常な世界にただ1人投げ込まれた主婦役の天明留理子のリアクションがリアルで見事。
 ワーク・イン・プログレスというがよくあるようにこの作品を再構築して再演するというのではなくて、この教団の儀式が劇中に出てくる新作を製作するための準備ということらしい。
http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/19991019