下北沢通信

中西理の下北沢通信

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猫のホテル「秘境温泉名優ストリップ」@駒場東大前こまばアゴラ劇場

猫のホテル「秘境温泉名優ストリップ」@駒場東大前こまばアゴラ劇場

作・演出:千葉雅子
ああ、ネオンよ。
自分の下積みは?往年の功績は?
老境に入った俳優の、ため息さえも照らし出すのか、スポットライト!

昨年、紀伊国屋ホールでの落語会「きょんとちば」で原作として書き下ろし、柳家喬太郎師匠によって上演された新作落語「秘境温泉名優ストリップ」。それを芝居にすることにしました。若い頃に、紀伊国屋ホールで熱狂した芝居をエッセンスにした落語。カーテンコールに沸いた師匠の落語を、今度は芝居に創りなおすのです。俳優達の黄昏を描いた芝居噺は、芝居で見せることのなんたるかを探す旅に繋がりました。嬉しい展開ですが、まさに秘境をめざす心持ちです。花開く季節にふさわしい芝居となりますように。 
    
千葉雅子

出演  中村まこと 森田ガンツ 佐藤真弓 千葉雅子 水間ロン 今奈良孝行 福田転球

スタッフ
舞台監督 中西隆雄
照明 櫛田晃代
音響 佐藤こうじ(Sugar Sound)
演出助手 吉中詩織
舞台美術 中村裕
衣装協力 植竹ナツコ
宣伝美術 寺部智英
宣伝写真 犬川ヒロ
制作 大橋さつき

 猫のホテルは設立から28周年だという。もはや古手の方に入るのかもしれない。ただ、作演出の千葉雅子をMONOの土田英生の舞台で見るなど劇団員のそれぞれの姿を舞台や映像などで見かけることはあっても公演をみるのは何時以来なのかが思い出せないぐらいだ。
 猫ニャーなども出ていた伝説の「猫演劇フェスティバル」(2000年2月、三鷹市芸術文化センター)に出ていたことははっきりと覚えているが、それももう18年前で話題に出しても「知っている、そうそう」という人も少ないかもしれない。
 実はこの猫のホテルは作風からは今の人にはあまりピンとこないかもしれないが、いまほど有名ではない時代にこの「こまばアゴラ劇場」を常打ち小屋としていた時代があった。その意味では今回の舞台はこの劇団にとっては「里帰り」公演といってもいいもので、タイミングとしては昨年作者の千葉雅子柳家喬太郎に原作を提供、落語として上演された芝居噺を今度は演劇に作り直して上演。しかもそれを劇団にとって縁の劇場で上演すると言うことは大きな意味合いがあったのかもしれないと感じた。
実はその落語会が開催されたのが紀伊国屋劇場で千葉はその落語の原案を書き下ろすのに際して、つかこうへい、東京乾電池、東京ボードヴィルショー、夢の遊眠社第三舞台などなど、10代の頃から共に見続けた芝居の話で意気投合したらしい。
 もちろん、今回の舞台は猫のホテルのオリジナルでありそうした劇団の特定の作品を模倣したものとはいえないであろうが、中村まことの演じる時代劇映画黄金時代を担った老優の姿に柄本明、佐藤B作ら東京乾電池、東京ボードヴィルショーの中心俳優らと近しい匂いを感じたことも確かだ。