下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

「現代日本演劇・ダンスの系譜vol.6 ダンス編・レニ・バッソ」セミネールin西心斎橋     

VOL.6[北村明子とクール&スタイリッシュ] WEB版講義録
【日時】2009年2月20日(金)p.m.7:30〜
【場所】〔FINNEGANS WAKE〕1+1 にて
【料金】¥1500[1ドリンク付] (※学生¥1200・1ドリンク付)
 西心斎橋のBAR&ギャラリーを会場に作品・作家への独断も交えたレクチャー(解説)とミニシアター級の大画面のDVD映像で演劇とダンスを楽しんでもらおうというセミネール「現代日本演劇・ダンスの系譜」の第6回目です。チェルフィッチュ(第1回)を皮切りにニブロール青年団イデビアン・クルー弘前劇場とダンス・演劇隔月で今もっとも注目の演劇・ダンスの集団(作家)を選んで紹介してきましたが、今回取り上げるのはレニ・バッソ(=北村明子)です。
 レニ・バッソは関西でも過去に公演したことはあるのですが、海外などで同規模の活動をしている集団のなかでは少なく、その全貌は知られていないので、この企画をスタートさせた時点からまず取り上げたいと考えていました。カンパニーから提供を受けた映像による最近作の紹介に加え、映画やCMなどでの活動も紹介していき、北村明子の全貌に迫っていこうと考えています。
 私がいいと思うダンスには大きく分けると面白い系*1とカッコイイ系がありますが、レニ・バッソ北村明子の世界は群を抜いてカッコイイのが特徴です。北村はダンサーとしても並はずれた身体能力を見せる優れたダンサーで、映画出演した黒沢清監督をして「怪物的」といわせたほどで、私自身もH・アール・カオスの白河直子などと並び日本を代表するコンテンポラリーダンサーだと考えているのですが、それ以上にすごいと思っているのはその作品にこめたクール&スタイリッシュな感覚でこれはまさにローザスやラ・ラ・ラ ・ヒューマンステップスなどの世界の一線級のカンパニーと比較してもひけをとらない水準だと思っています。ここで参考までにいま挙げた2つのカンパニーの映像を少しだけ見ていただきましょう。
参考映像
ローザス

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ラ・ラ・ラ ・ヒューマンステップス

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 いかがでしょうか。いずれもダンスをあまり見たことがない人が見てもダンスってけっこう「カッコイイ」って思わせるような映像だと思うのですが。
次の映像が実際のレニ・バッソの映像です。こちらもYOU TUBEの映像ですが予告編として代表作である「FINKS」を見ていただきたいと思います。

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 いかがでしょうか。私は個人的にはカッコよさという基準でいえば負けてない。むしろ勝ってると思うのですが。さて、それではイントロダクションも終わり本論に入ることにしましょう。前回に引き続いてまず日本のコンテンポラリーダンスの概況について復習しましょう。以下の文章は以前のセミネールでも取り上げましたが、ポルトガルで行われたダンスフェスティバルの日本特集のために私が簡単にまとめたものです。後から、簡単に目を通してください。

 欧米の目から日本のコンテンポラリーダンスを見た時には山海塾(SANKAIJUKU)、勅使川原三郎(SABURO TESIGAWARA)+KARAS、ダムタイプ(Dumb Type)が代表的なイメージとなるかもしれない。だが、現在の日本のコンテンポラリーダンスの全体像を俯瞰して眺めた時、実はこの3つの集団がそれを代表する傾向のものかというとかならずしもそうではない。
 いささか逆説めいた言い方になるが、日本のコンテンポラリーダンスの特色はひとことでこれといえるような特色がないこと。およそ現代において考えられるダンスにおける様式が「いま・ここ」で同時に共存している様式的多様性、なんでもありのカオス状態が日本のコンテンポラリーダンスの特異な状況なのである。
 最近の大きな特徴として東京を中心に既存のダンステクニックとは一線を画した通常の意味でのダンサーとしての経験を持たなかったり、バレエなど欧米において正当とみなされるテクニックを持っていても、それをいっさいださないようなダンスの流行がある。ここでは既存のダンスの枠組み自体を問い直すというような実験性が、60年代のアメリカのポストモダンダンスのような前衛的な身振りにおいてではなく、ポップやキッチュなファッション性をともなってなされている。そうした流れを代表するカンパニー・振付家として、珍しいキノコ舞踊団(伊藤千枝)、康本雅子イデビアン・クルー井手茂太)、ボクデス(小浜正寛)などが挙げられる。
 日本のコンテンポラリーダンスにおけるもう1つの大きな流れは映像・美術・音楽など他分野のアーティストとのコラボレーションによるマルチメディアパフォーマンスのグループである。舞台芸術作品だけではなく、大規模な美術展覧会への映像インスタレーションの展示など分野を超えた活動で注目を集めているニブロール矢内原美邦)がその筆頭といえるが、他にも海外公演でのツアーを中心に作品を発表し、映像・音楽・照明などの高度なスタッフワークとソリッドでアグレッシブなダンスが「日本の今」を感じさせるレニ・バッソ北村明子、押尾守を思わせるようなメカニカルでいてどこか懐かしさも感じさせる特異なビジュアルワークを見せてくれるBABY-Q(東野祥子)などがいる。こうした集団は明らかにDumb Typeの作り出した流れの元に出発してはいるが、Dumb Typeがどちらかというと美術系の作家のコラボレーションによるアートパフォーマンスの色合いが強いのに対し、これらのカンパニーの作り出す作品はよりダンスパフォーマンスに重点を置いたものとなっている。
 他のアジアの国と比較しても日本のコンテンポラリーダンスは特殊な状況にある。それは日本のコンテンポラリーダンスが日本にもともと存在していた伝統的な舞踊・演劇(歌舞伎・能・日本舞踊)とダンスとしての技法においてまったく切れてたところから発祥していることと関係があるかもしれない。ここが例えば同じアジアの国でも、伝統的民族舞踊と西洋舞踊の融合を志向しているように見える中国、台湾、韓国、インドなどのコンテンポラリーダンスとの大きな違いなのである。
 それではそれはただの輸入品で西洋のダンスの物真似にすぎないのか。ダンスに限らず他の文化、あるいは産業製品においても例え最初の技術ないし、コンセプトを外から取り入れたとしてもそれをいつの間にか換骨奪胎し、日本独自のものに変質させてしまうのが、日本の文化の特徴(例えば一例を挙げればポルトガルから最初に火縄銃を輸入して数十年もたたないうちに日本では銃を完全に国産化、一時は世界の銃の数の半分が日本に存在していたとも言われる)で、それはダンスにおいても変わらない。

 日本のコンテンポラリーダンスとして西洋でもっとも知名度の高い舞踏(BTOH)は西洋人の目に東洋的なもの・伝統的なものと映るかもしれない。しかし、舞踏は土方巽(TATSUMI HIJIKATA)というひとりの天才的なダンサー・振付家の手により生み出されたものだ。低い重心、ゆがんだ身体のありようなどその特徴は日本の伝統舞踊との関係は直接にはない。アメリカのモダンダンス、ドイツの表現主義舞踊などの影響を受けながらも日本において独自の発展をした現代舞踊(GENDAI BUYOU)出身の土方がバレエに代表される西洋舞踊へのアンチテーゼとして構想したオリジナルの現代ダンスなのである。舞踏以外では勅使川原三郎もいずれも西洋のオリジンであるバレエとマイムの技法を学んだ後、それらを換骨奪胎して、世界に類をみないユニークなムーブメントのダンスを独力で生み出した。
 舞踏は日本のコンテンポラリーダンスのなかでも依然として大きな流れを形成しているが、なかでも始祖というべき土方が去り、大野一雄(KAZUO OHNO)も老齢のために公演活動が困難になっているなかで、彼らと並ぶ第一世代でありながら、世界中の公演活動を積極的におこない、そのエネルギッシュな活動ぶりが異彩をはなっているのが、笠井叡Akira Kasai)である。
 先ほど土方という天才がひとりで作り上げたと書いたことには反するようだが、笠井は土方の弟子ではなく、舞踏創世記から土方とはまた異なるアプローチでダンスにとりくんできた。その作品は静かで非常にゆっくりとした動き、足は地面についたまま低い重心で踊るなどといった「舞踏」といわれたときに連想するような動きとはまったく違う激しい動きである。オイリュトロミーの影響や独自に生み出された呼吸法など独自のメソッドもあるが、なんといっても特筆すべきは年をへても衰えないそのエネルギー。勅使川原三郎の例を見ても、ダンサーの表現は年齢とともに成熟していくのが普通だが、ことこの人に関しては年を感じさせないそのアバンギャルドな軽みに脱帽せざるをえない。
 舞踏系では山海塾や白虎社、大駱駝艦といった土方直系の弟子であった第2世代に続き、第3、第4の世代の活躍も目立つ。白虎社出身で京都に本拠を置くMassami Yurabeもそのひとりだが、即興色の強いソロダンスを得意とする彼の特色は通常舞踏が持つグロテスク。奇怪といったイメージとは一線を画し、流れるようなエレガントな動きの連鎖をそのダンスにおいて生み出していくことだ。
 舞踏出身ではありながら、現在はともに舞踏の伝統的なスタイルからはやや離れてバレエダンサーに振り付けるなど、勅使川原に続く日本のコンテンポラリーダンスの代表的な振付家・ダンサーと見なされているのが、伊藤キム(Kim Itoh)、山崎広太(Kota Yamazaki)。ともに自分のカンパニーでの振付も行いながら、ソロダンサーとしても卓越した個性を見せてくれるという共通点を持つ。
 伊藤は自らの活動のみでなく、カンパニーでダンサーとして活動していた白井剛(TSUYOSHI SIRAI)、黒田育世(IKUYO KURODA)が自らのカンパニーを設立して独立、ともに国内外の振付賞を相次ぎ受賞するなど若手有望株に成長するなど、日本のコンテンポラリーダンス全体の底上げにも貢献している。しかも、彼らは伊藤のスタイルを踏襲するわけではなく、例えば黒田の場合はバレエ団所属のバレエダンサーでもあるということから、伊藤から受け継いだ舞踏的要素とバレエの動きをミクスチャーした激しい動きの群舞で独自性を見せたり、白井の率いる発条トは映像・音楽などを駆使したマルチメディア系の作品で高い評価を受けるなど、舞踏の枠組みからは離れたものとなっている。
 山崎広太もまずそのソロダンサーとしての爆発的な身体能力の高さが魅力であるが、舞踏に加え、バレエや最近ではアフリカのカンパニーとの交流によって、アフリカンダンスの動きも取り入れるような柔軟性を持っている。
 一方、フランスなど海外のアーティストとの交流や海外の留学経験により、欧米流のスタイルを踏襲しながらも、そこに独自のテイストを付加した作品を創作しているグループもあり、今回のフェスティバル参加カンパニーであるMonochrome Circus(坂本公成)、Ludens(岩淵多喜子)、J.A.M. Dance Theatre(相原マユコ)らが挙げられる。
 京都在住でありながらフランスを拠点に作品を製作しているヤザキタケシやイリ・キリアンの弟子筋でNDT出身の金森穣もその活動に注目しなければならない振付家である。これらの振付家の特色はMonochrome Circusはコンタクトインプロビゼーション、金森穣はコンテンポラリーバレエと欧米流の技法を踏襲しながらも、日本人特有の表現の繊細性において欧州やアメリカのダンスとは違う個性を見せていることだ。
 特にMonochrome Circusは出前ダンスの「収穫祭」というコミュニティーアートとダンスの中間形態の新たな表現のありかたを模索。最近ではDumb Typeの照明家、藤本隆行とのコラボレーションやフランスの振付家、Didier Théronへの作品の委嘱など単独のカンパニーとしての枠組みを超えた多彩な活動を展開しており、そのボーダレスな活動形態が今後どのような舞台成果を生み出すのか注目している。

 ここではレニ・バッソダムタイプに代表されるようなマルチメディアパフォーマンスの系列に属することを頭の片隅に置いておいてください。これはまた後から触れたいと思いますが、その前にレニ・バッソとそれを率いる北村明子について紹介します。
 まずレニ・バッソを率いる北村明子という人がどんなダンサーであるかを知ってもらうために黒沢清監督の映画「回路」(第54回カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞)の出演場面を見ていただきたいと思います。ここでは北村はその卓越した身体能力を生かして「幽霊」を演じているのだが、黒沢監督は「北村明子のダンスを見て、いつも驚愕のうちに思うのは「これは人間ではない」ということだ。世界と相対する存在、ここに至ってしまった存在のことを、私なら怪物と呼ぼう。」と北村についてコメントしています。
(映画「回路」の映像を一部見せる)
 北村のプロフィールについては以下の英文の紹介に注目してください。

Japanese avantgarde performance
Akiko Kitamura is a Japanese avantgarde dancer and choreographer. Kitamura´s performances stimulates audience´s senses with stylish, quick movements, film, lights and sound.
Kitamura´s performances depicts the ever searching attitude of modern citizens.
Her expressions are based on Japanese accuracy, high-tech film and video projections, and electronic composition over the Asiatic metropolis.

A unique perspective on contemporary Japanese dance Founded in 1994 by Akiko Kitamura, Leni-Basso is a contemporary dance company whose creations have been called "multimedia theatre" productions. Featuring artistic stage lighting, computer graphics, intense sound effects and spatial design, these elements all freely intertwine then evolve. Known for its visual and physical stimuli, Leni-Basso performances build an interactive relationship between stage and audience.

The director of Leni-Basso, Akiko Kitamura has choreographed commercials for the Japanese pop group, MORNING MUSUME, as well as various other projects in a wide range of media.

"Kitamura is an up-and-coming, energetic choreographer who is recognised as one of the most eminent artists in the field of performing art of the day. She has the cool style of her own, which many other Japanese don´t, and also has a brilliant gift for creating the amazingly accurate dance formation" Advertisement Review, 99.2)

「The director of Leni-Basso, Akiko Kitamura has choreographed commercials for the Japanese pop group, MORNING MUSUME, as well as various other projects in a wide range of media. 」という部分に注目してください。北村はコンテンポラリーダンスの世界で知られるようになる以前の十代のころからショーダンスの世界の振付ではすでに知られる早熟の俊才で、前回取り上げたイデビアン・クルー井手茂太と同様にコンテンポラリーダンスの世界にとどまらない仕事を数多く手掛けています。CMの振付の仕事もそのひとつでおそらく名前が出てないものも相当あると思いますが、モーニング娘。のコマーシャルの振付というのは次の映像です。
モーニング娘。 飲茶楼CM

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 これなんかは言われてみればそうかもという感じですが、いかがでしょうか。ではいよいよレニ・バッソのことを考えていきます。こちらが公式サイトからの抜粋です。

about Leni-Basso

1994年、先鋭的な若手振付家として注目を集めていた北村明子を中心に東京で結成。同年、セゾン文化財団の支援を受けて第一回公演『The Crying Cherry Tree』を発表。以来、日本のコンテンポラリーダンス・シーンを牽引するカンパニーのひとつとして活動を展開、オランダのユリダンス・フェスティバルにて紹介され評判を呼んだのをきっかけに2001年からは海外での活動を本格化。代表作の『Finks』は3年間に14か国25都市以上で上演され公演数は40を越える。欧米での活動規模は年々拡大しており、近年では海外の劇場やフェスティバル、カンパニーとの共同製作作品も多い。2004年度からは松本市まつもと市民芸術館との事業提携を開始し、毎年同劇場にて新作ほかを上演予定。
スピーディーかつスタイリッシュなダンスと、映像、光、音、時間が交錯し展開する視覚的でグルーヴ感にみちた作品は、ともすれば内省や感傷に陥りがちなダンスを、魅惑的な運動の大きなうねりへと開放し、幅広い観客層からの支持を得ている。

 レニ・バッソはここにも書かれたように1994年に北村明子らにより発足しました。初期の作品のいくつかを除けばその作品はマルチメディアパフォーマンスといっていいもので、海外では「ポストダムタイプ」として位置づけられていることが多いようです。北村が芸術監督として振付・演出を担当しますが、その作品は映像・音響・照明など他分野のアーティストとのコラボレーションといってもいい性格を持ち、映像ディレクションの兼古昭彦、音楽担当の粟津裕介(初期は江村桂吾)、照明デザインの関口祐二との共同製作といってもいい作品であり、特に近年は兼古、粟津のプレゼンスは増してきていて、本日お見せする予定の最新作「パラダイスローグ」ではクレジット上は

構成:北村明子 兼古昭彦 粟津裕介
振付・演出:北村明子 音楽監督・演奏:粟津裕介 映像・美術:兼古昭彦

という風にクレジットでは複数アーティストのコラボレーションによるものであるということがより、明確化しています。音楽担当の粟津裕介は白井剛の発条トのメンバーですが、最近は発条トとしての活動はほとんどないので、兼古昭彦のようにレニ・バッソのメンバーでこそはないですが、3月に上演予定の「ELEPHANT ROSE」でも音楽を担当していますし、最近はほとんどレニ・バッソと行動をともにしており、単なるスタッフを超えた関わりを持つようになっています。

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 それでは具体的に作品を見てもらいたいと思います。まずお見せするのは「Slowly,Slow for Drive」です。

 北村明子/レニ・バッソ 「Slowly,Slow for Drive」
 @恵比寿・イーストギャラリー
 (1998/3/26-29 4ステージ) 全自由前売り3000当日3300 
 構成・振付・演出:北村明子 ライティング・デザイン:関口祐二 
 作曲・サウンドディレクション:江村桂吾 ビデオ・グラフィックス:兼古昭彦
 出演:前島弥恵子、内村晴美、吉原未央子、野澤秀代、泉水利枝(Zinzolin)、
 棚川寛子、佐々木玲子、金井久美 (北村明子は出演せず。)


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 1998年の作品で会場となっているのは恵比寿のイーストギャラリーというところで、ギャラリーなんですが、ここは以前バブル時代にスポーツクラブでここはプールだったところなんですね。この公演あたりから、Nestの中心スタッフであったライティング・デザイン:関口祐二の作曲・サウンドディレクション:江村桂吾らが加わり、ビジュアルアーティストの兼古昭彦が参加。現在のカンパニーの形式がほぼ整いました。見たらすぐ分かるようにこの当時は北村明子による振付・ダンサーの純粋にダンス的な要素を除くと照明・音響・映像といったビジュアル・プレゼンテーションの部分ではdumbtypeの影響を受けていることが歴然と分かりますね。特にプロジェクターによる英語の文字の映し方なんかそうなのですが、実はこの少し前の公演では言語テクストを口でセリフとして読み上げたりしてそこがすごくカッコ悪かったりしたのですが、これはやはりカッコいいですよね。
 次が欧州、米国だけでなくアジア、南米など世界中で上演され、レニ・バッソの代表作となった「FINKS」です。この映像はストックホルムDanse Husでの公演を収録したものです。収録日時は不明ですが、ツアーの間にも内容は進歩していることがうかがわれ、先にお見せしたyou tubeのバージョンとは少し違うということに注目してみてください。
(映像を見せる)
 このようにレニ・バッソの作品にはいっさい物語性(ナラティブ)な要素はなく、ダンスは純粋に抽象的(アブストラクト)な運動として具現されます。ここが従来のモダンダンスなどとはまったく違うところで、抽象性という意味ではマース・カニングハムなどもそうなのですが、ダンスの運動性が
映像や音響などが構成する空間造形と激しく交錯するというのがレニ・バッソの特徴です。特にこの
 さて、こちらは「Ghostly Round」という作品です。こちらも現在ワールドツアーをして回っている作品です。


 最後に「Paradiselogue」という作品を見せます。これが現時点での最新作なわけですがこれは全編見ていただきたいと思います。
(映像を見せる)
 クール&スタイリッシュと北村ならび彼女の作品のことを称してきたのですが、この「Paradiselogue」という作品は少し趣きが変わって、コミカルな要素が前面に打ち出されてきます。実は北村はコンテンポラリーダンスに本格的に取り組む以前の十代の時からきわめて優秀なショーの作り手として知られていたのですが、この作品などは純粋にダンスという以外の要素も数多く作品に取り込まれていて、北村の別の一面もうかがわせてくれるところが興味深い作品です。これまでの作品の中に位置ずけると異色作ともいえそうですが、結論は3月の新作を待ちたいところですが、これは作風が大きく変化しつつある転換期の作品と考えられるかもしれません。
参考映像
Nest


Rond 米国フィラデルフィアのカンパニーへの振付作品


マントソーとの共同製作作品

*1:代表はイデビアン・クルー、海外でいえばマリー・シュイナールあたり