下北沢通信

中西理の下北沢通信

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3月のお薦め芝居(2005年)



3月のお薦め芝居


3月のお薦め芝居

by中西理



 




 3月1日から引越しで新しい住所(最寄りの駅は地下鉄の谷町九丁目)に移りました。引越しのせいでしばらく大阪日記を更新できないでいたら、覿面にアクセスが激減。今月からはしっかりと更新していきたいと思っているので見捨てないでほしい。




 イチオシをまず演劇から挙げていこう。今月も先月同様ダンス・演劇ともに東西で注目の舞台が目白押しで、スケジュールかぶりまくり。カレンダーを眺めながら、どうしようかと究極の選択を迫られ、懊悩する日々が続きそう。先月も書いたが岸田戯曲賞を受賞したばかりの岡田利規の受賞後第1作となるチェルフィッチュ「ポスト※労苦の終わり」」★★★★にまずなんといってもまず注目したい。これは昨年上演されえんぺ大賞の最優秀新人公演に選んだ「労苦の終わり」の全面的な改訂新作版。これから結婚するカップルと結婚が破たんしたカップルの関係を細密画のように描き出すことで展開される岡田版「結婚論」ともいえる作品である。
 「喜劇悲劇」という雑誌の「今年の収穫」アンケートに2004年最大の衝撃はチュルフィッチュの岡田利規の登場。これは日本現代演劇において平田オリザ以来の事件であると書いたのだが、ハイパーリアルな口語劇でありながら、平田らによる群像会話劇とは明確に異なる方法論を現代演劇に導入した刺激的な舞台をまだ未見の人はぜひとも一度見てみてほしい。




 一方、関西では毛皮族毛皮族襲来」★★★★による毛皮族の関西初登場が注目。なのだが、残念ながら1ステだけの公演ということもあり前売りチケットはすでに完売。私自身が見られるかどうかも疑問ではあるのだが、立ち見当日券が若干枚出るらしいからそれに挑戦してみる価値はあるだろう。夏には本公演での大阪公演も決定しているので、もしだめだった時はそちらでということになるのだが、私はここの最大の魅力はレビューにあると思っているので初毛皮族にはこちらの方を薦めたい。それだけにチケット完売は痛いのだが、なんとかならないだろうか。




 ダンスではJCDN「踊りに行くぜ!!」in東京★★★★(3月18、19日、スフィアミックス)がなんといってもイチオシ。コンテンポラリーダンス普及のためのNPO「ジャパン・コンテンポラリー・ダンス・ネットワーク」が企画する「踊りに行くぜ!!」は全国で選ばれた28組のダンサーらが、全国13都市を行脚してきたが、今回の東京公演はそのうちから秀作だけを集めたいわばベスト版。天野由起子の新作がひさびさに見られるのも楽しみだが、なんといっても注目は東京公演だけのスペシャルバージョンとして、あがた森魚の音楽を使った福岡まな実(大阪)のダンスに急遽あがた自身が生演奏で参加し、共演することが決定。関西の若手ダンサーのなかで最近、進境著しい福岡ではあるが、あがたとの共演となれば次に見られる機会があるかどうか。これはもう必見だと思う。




 海外からの来日公演もローザス「ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ」★★★★マリー・シュイナール「ショパンによる二十四の前奏曲」★★★★と注目の舞台が目白押し。ローザスはいまさらいうまでもないの感ありだが、特にマリー・シュイナールは「とにかく馬鹿馬鹿しいオバカ系」らしく、前回の来日公演ではノーマークで見逃して悔しい思いをしたので、今回はぜひとも見てみたいと思っている。





 弘前劇場「F.+2」★★★★にも注目。弘前劇場長谷川孝治の作品には現代口語の地域語(弘前方言)を駆使した群像会話劇の本公演と少人数の出演者による暴力的な関係性を描いたFRAGMENTシリーズの大きく分けて2つの系列の作品群があるのだが、この公演では後者を代表する作品である「F.+2」を若いキャストを起用して再演する。




 青年団「御前会議」★★★★はひさびさの平田オリザの新作。「忠臣蔵OL編」「ヤルタ会談」と続いた会議シリーズの第3弾ということになる。
歴史上の出来事を新しい意匠を持って現代に甦らせるこのシリーズで平田が取り上げるのは
日本の降伏が決まった御前会議。この主題を平田は今回はどんな趣向で会話劇に仕立てあげるのか。重い題材を軽やかに料理してみせる平田シェフの才人ぶりが楽しみだ。




 関西で注目したいのはくじら企画「サヨナフ ピストル連続射殺魔 ノリオの青春」★★★★。1969年、まさに昭和の高度経済成長期のただなかで起きた19歳の少年によるピストル連続射殺事件。犯人、永山則夫が獄中で著した自伝小説「無知の涙」を手掛かりに、資本主義社会から取り残されていったひとりの少年の姿を浮き彫りにした大竹野正典の代表作を殺人事件が簡単に繰りかえされる昨今の状況を踏まえながら、再び上演する。初演では少年ノリオを演じた川田陽子の演技が忘れがたい印象を残したが、キャストを入れ替えての今回の再演バージョンではどんな芝居を見せてくれるのだろうか。




 しりあがり寿原作・天野天街脚本・演出のKUDAN PROJECT真夜中の弥次さん喜多さん」★★★★の名古屋公演にも注目したい。同じ原作をクドカンが監督した映画もほぼ同時期に封切りになるはずなので、ぜひ見比べてみたい。関西の公演があったばかりだが、私は公演が重なって見ることが出来なかったのでなんとかこちらで見るつもり。




 遊気舎の俳優でもある演出家谷省吾が率いるいるかHotel「RISTRANTE OGGI DOMANI」★★★★KAVC)も楽しみな舞台。前回の本公演を見逃したので個人的にもひさびさの印象。以前、女優の宝庫と書いた時代とはキャストがかなり入れ替わっているのがちょっと気になるが、若い俳優をうまく使うことには定評のある谷だけに今回はどんな隠し玉を用意しているのか。期待して待ちたい。




 大阪では建築コンペによって作られた仮設劇場<WA>を会場としての「大阪現代演劇祭」もスタート。まず、注目したいのはWI'RE「スカリトロ」★★★。サカイヒロトは円形劇場であるこの特異な空間でどのような舞台を見せてくれるのか。ゲストに東野祥子(BABY-Q)、クシミヒデオ(赤犬)、久保亜紀子らが参加するのも楽しみ。




 即興の要素を加味して、すべてをそぎ落としたような本公演とは少し方向性の違うダンスを見せてくれそうなのがアンサンブル・ゾネ「『見る』ものとしてのダンス」★★★★である。前回公演で著しい成長を感じさせた伊東愛をはじめ、ダンサーが普段とは違ったどんな魅力を見せてくれるのかにも期待したい。




 ダンスでは黒田育世率いるBATIKのメンバーがそれぞれソロ作品を披露するBATIKトライアル★★★★(森下スタジオ)も注目。一昨年のトヨタコリオグラフィーアワードにノミネートされたボヴェ太郎によるボヴェ太郎ダンスシリーズ★★★(京都芸術センター)も気になるところだ。



 私は「踊りに行くぜ!!」で東京なので見られそうにないのが癪の種だが、関西のダンスファンはもちろんコンテンポラリーダンスってなにと思っている人にぜひともお薦めなのがコンテンポラリーダンスin新世界★★★★(3月19日)。公演はスパワールドの大階段近くで行われる野外の無料公演だが、一昨年は大雨、昨年は大雪。特に昨年はあの身体表現サークルが雪が舞い散るなかをあのフンドシ一丁の姿で踊り、
感動の嵐(?)を呼ぶ伝説的な公演となった。今年も北村成美率いるしげメイツが参加、カラオケに乗って踊りまくる「カラオケダンス天国」など期待の演目がずらり。暇なひとはぜひ新世界に出掛けてみよう。



 
 演劇・ダンスについて書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)があればぜひ引き受けたいと思っています(特にダンスについては媒体が少ないので機会があればぜひと思っています)。特にチェルフィッチュについてはどこかにまとまった形で書いておきたいと思っているのだけれど、どこか書かせてくれるという媒体はないだろうか。
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中西