下北沢通信

中西理の下北沢通信

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中村修也「女帝推古と聖徳太子」

中村修也「女帝推古と聖徳太子光文社新書ISBN:4334032338
いささか旧聞に属することになるが、今年の正月にNHKテレビで聖徳太子を主人公にしたドラマをやっていて、仕事の関係で全部は見られず前半部分だけを見た。私の中では世代的にも聖徳太子のイメージは山岸涼子の漫画「日出処の天子」(しかも読んでからだいぶたつので詳しいことは忘れてしまっている)だったのだが、最近ちょっと史実(とされているの)はどうだったんだろうと気にかかり、書店に平積みされていたこの本を購入して読んでみた。
この辺りの歴史には根本資料となるのが日本書紀しかなく、しかもそれがきわめて高度に政治的に歴史を書き換えた可能性の高い書物なので、それだけでは分からない謎が多いのだが、この本の提出している「推古が女帝として即位しなければならなかったのか?」「なぜ、聖徳太子は即位して大王(天皇)にならなかったのか?」という謎はその最たるものといえよう。
著者の推論は一番目の謎に対しては「竹田皇子を大王位につけたかったため」ときわめてはっきりしていてある程度の説得力があるのだが、「なぜ、聖徳太子は即位して大王(天皇)にならなかったのか?」については厩戸王子は大王になりたくなかったからという答えで、それだけ引っ張っておいてそれが答えかよとの感があった(笑い)。