下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ニブロール「ドライフラワー」

 ニブロールドライフラワー(パークタワーホール)を観劇。
 どうにももったいないというか、惜しかった公演というのが第一印象。これまでのいくつかの舞台(「駐車禁止」「コーヒー」「NO−TO」)で日常的な暴力にさらされている都市生活者の不安を主題にした作品を作り続けてきたこの集団だが、この作品ではそういうのとは違う新たなアプローチに踏み出した。それはとても刺激的であって、いままでになかった表現の予感を期待させたし、事実いくつかのシーン、映像はとても素晴らしいアイデアを盛り込んだものだった。ただ、残念なことにこの舞台においてはそうした要素が未整理のまま舞台に放り込まれたという印象が強くて、
それがどうもひとつの方向性にフォーカスしていかない。全体にバラバラの印象が強いのだ。しかも、せっかくのアイデアが見せ方の問題でうまく機能していない感もあった。典型的だったのはラスト近くの紙ふぶきを降らせてその後ろで映像とダンスが同時展開される場面である。紙ぶぶきに照明をあてていたということもあってせっかくの凝った映像とダンスの組み合わせが紙ふぶきに邪魔されて見えないのだ。
 この集団の場合、再演を続けていくにつれて作品の完成度が高まっていく傾向はこれまでにもあったから、そのための素材だと考えればこの舞台にはたくさんの宝石の原石が眠っている。練り直しての再演に期待したい。