下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「具体」回顧展@兵庫県立美術館

 「具体」回顧展@兵庫県立美術館を見る。
 関西を拠点に現代美術のフィールドで活躍した「具体美術協会」の回顧展を兵庫県立美術館で見た。「具体」については最近、現代美術に興味を持って美術館・ギャラリー巡りをしだして以降、いろんなところで耳にしていてすごく気になる存在であったのだが、これまでその作品をまとめて実際に目にする機会はなかったのが、今回の展示でそれを目のあたりにすることが出来て非常に興味深かった。
 具体美術協会は1954年7月に、戦後美術の活性化を目的として結成された組織で、吉原治良吉田稔郎、嶋本昭三らが設立。リーダーである吉原の「人のまねをするな」「今までにないものをつくれ」とい厳しい指導のもと、72年に吉原の死去により解散するまでの18年間にわたって、今までの美術の枠組みにとらわれないユニークな作品を生みだした。「具体」回顧展は結成50周年を記念して、開催されたものである。
 「具体」の作品では一般的には既存の美術の枠組みを壊したパフォーマティブな作品を生みだしてきたということで、初期の作品の評価が高いようなのだが、今回全体を概観して見たところ、後期の作品に今の現代美術の流れに近いポップな作品が多く、それは私にとっては新たな発見であった。特に面白かったのは今回の再制作ではあるが、白い部屋を家具も壁の記号で埋め尽くした向井修二の「記号の部屋」、草間弥生を思わせるようなドットで埋め尽くされた小野田實の絵画。「レヴィストロースの世界1」の菅野聖子といった作家たちであった。
 この辺りの作品は60年代から70年代初期と今から考えると30年以上前の作品でありながら、これが例えば森美術館の「六本木クロッシング」にそのまま置かれていたとしてもなんの違和感もない作品であり、そういう意味での時代を先取りした新しさを感じさせた。
 一方、映像で制作風景を見ることができた嶋本昭三、白髪一雄といった初期の具体を代表する美術家の作品あるいは作品へのアプローチは既成の美術の枠組みを壊したという歴史的な価値認めざるをえないにしても、どうも今見てあまりピンと来るようなものではなかったというのが素人の正直な感想である。
 嶋本が瓶を投げ付けて作品を制作している姿とか、足で絵を描いている白髪の映像などは本人がマジであるだけに今見ると思わず笑ってしまうような馬鹿馬鹿しいオカシサがあって、それはそれで面白くないことはないのだけども、こういうことをこの人たちが10年以上も続けていたのかと思うとそれを評価してきた周囲の状況も含めて「ちょっと待ってくれ、それでいいのか」と思ってしまうのである(笑い)。
 そういう馬鹿に真剣に取り組んでいるいるところが、「具体」の魅力といえなくもないのではあるが……。