今年のトヨタコレオグラフィーアワード「次代をになう振付家賞」は白井剛が受賞。オーディエンス賞は初日が康本雅子、2日目が遠田誠となった。
「ひょっとしたら」などと思ったのは見られなかったせいと身体表現サークルのインパクトがけっこう強かったせいで興奮して、ついつい大本命の存在を失念していたからだ。しかも、舞台の完成度重視というトヨタコレオグラフィーアワードのこれまでの基準もすっかり忘れていた。終わってみれば審査員全員一致の結論ということで、びわ湖ホールで見た白井剛の作品の完成度の高さを考えても、まあ順当な結果だといわざるをえないだろう。
実際、白井は始まる前から過去の実績からも絶対本命視されていたわけで、何人かから実際のパフォーマンスの出来が白井としてはあまりよくなかったという情報を聞いていたにしても、他の作品にこの下馬評を逆転して文句を言わせないで受賞できるだけの抜群のクオリティーがあったかというと、私が「これは」と思った身体表現サークルの作品にしてもこれまでもトヨタの基準であった動きの精度などの点で明らかな欠陥があつたことは認めざるをえず、同じくこれまではソロ作品は受賞していないというもうひとつ選考基準を勘案したとしても、白井を受賞させないという選択肢はあるはずもなかった、ということだ。
後から漏れ聞いたところでは*15人の選考委員がそれぞれ2位までを投票したところ白井剛だけでなく、次点の遠田誠までひとりを除いて全員一致だったらしく、これを見ても最終選考におけるトヨタの基準(振付の「独立性」、作品の完成度の高さ、ムーブメントの精度が高いこと、など))が揺らいでないのが分かる。
さらに分かってきたのは身体表現サークルの評価は2日目だけをとれば「最悪」だったらしく、まったく理解されなかったらしい。これには少しショックも受けたが、これまでのこのアワードの枠組みからすればさもありなんとは思うし、私個人は身体表現サークルがいい、とは思ったが、実は「トヨタの基準はまったく保守的で許しがたい」とも思っていない。それはそれで見識だと思うからだ。
さて、今回の白井の受賞で関西勢3勝、伊藤キムと輝く未来2勝である(しかも次点の遠田もそうだった)。そして、これは偶然ではないとも思った。実は2年前の東京コンペの審査発表の席上で伊藤キムが最近の東京の一部のダンスのあり方に苦言を呈したが、「ダンスにおける不易流行」の側面からそのことの意味についてもう一度考えてみるべきかもしれない。
*1:公式の発表というわけではないのでそこのところはよろしく