国性爺合戦
平戸浜伝いより唐土船の段
千里が竹虎狩りの段
楼門の段甘輝館の段
紅流しより獅子が城の段
言わずと知れた和籐内(鄭成功)の物語*1だが、文楽で見たのは初めて。「楼門の段」以降は歌舞伎でも見たことがあり、よく知られた物語ではあるが、人形芝居である文楽の特性を生かした仕掛けを駆使したスペクタクル(?)を見せる珍品というべき「平戸浜伝いより唐土船の段」「千里が竹虎狩りの段」がくだらなくて突っ込みどころ満載で面白かった。平戸浜の大はまぐりと鴫の闘いを見て、和籐内が軍法の奥義を知るというくだりがあるのだけれど、これがおかしくて思わず笑ってしまう。これって、近松門左衛門作だよな。和事と時代物では違うとはいっても、ここのところなんかを見たら到底同じ人が書いたとは思えない。
尺の大きさこそないけれども、ほとんど怪獣同士の闘いだよね。もっと可笑しいのはこの後の「千里が竹虎狩りの段」では和籐内の虎退治が描かれるのだが、今回の文楽の上演ではこの虎がまるでトラッキーみたいに愛嬌があって、可愛いのはどうなんだという突っ込みがまずあるにはあるが、結局、単なる怪力無双で虎を降参させたみたいなことになっていて、そうだとしたら、前の段で知ったという兵法の奥義ってなんだったんだと思ってしまったのだが、どうなんでしょう(笑い)。それにしてもこの段ではこの着ぐるみの虎がそれこそ客席に乗り出して客いじりをするなど大活躍。これって本当に文楽かと思ってしまったのだった。