批評家である
東浩紀が書いた小説だというので気になって読んだのだが、これは哲学的思弁小説とはそういうものではなくて、普通によくできたハード
SF小説じゃないかと思った。知り合いはこの作品は評判がいいようなので
文学賞の候補になるんじゃないかと言うのだけれども、これだけSFらしいSFだとそれは無理じゃないかと思うのだが、どうだろう。逆に言えばジャンルの賞、つまり
日本SF大賞の候補にはなるかもしれない。というより当然有力な候補になってもおかしくない。SFとしては平行宇宙という主題自体は
フィリップ・K・ディックなどを持ち出すまでもなく、以前からあるものでそれほど目新しいわけではないけれど、
量子計算機科学、検索
性同一性障害などという個々のア
イデアのディティールは魅力的で啓発されるところが多かった。