ゲーム、アイドルなどサブカル全般の批評家・ライターであるさやわかによる連続対談企画の第6回は「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」を書いたポピュラー音楽批評家、柴那典との初音ミク現象についての対論だった。初音ミクおよびにボーカロイドについては自分でも演劇評論*1で取り上げたこともあり、関心は持っていたのだが、特に最近の状況は時系列での動きの変遷のスピードが速すぎて、以前無手勝流でニコニコ動画やYoutubeなどの動画をあたってみたことがあったが、ほとんど群盲象をなでるの類でほとんど全体像は分からず、逆にネット上にアップされた膨大な量の動画を前に絶望的な気分になったという記憶がある。
実は初音ミク現象全体についてはまだよく理解していないところもあるということもあって、以前書いた評論では音声合成ソフトウエアとしての初音ミクについてのみ主として語ってきたが、そうしながらも音楽ジャンルとしてのボカロやニコニコ動画やYoutubeなどの動画サイトを媒介とした多数のアマチュア作家らによるN次創作の集合知としての初音ミクのこともどこかで取り上げることをしないとこの問題に対して十分に論じきったことにはならないであろうことは気になっていた。
会場で新刊の「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」も販売されていたので、さっそく購入して読んでみた。これまでの初音ミク論の多くがいわゆるキャラクター論、あるいはボーカロイド(音声合成ソフト)としての技術論だったのに対して初音ミクをポピュラー音楽史上のムーブメント(サード・サマー・オブ・ラブ)と位置付けて、2007年から13年までの初音ミクの音楽と初音ミク現象とはなんだったのかを新たな視点でとらえなおそうとしており、非常に刺激的な評論だった。
- 作者: 柴那典
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2014/04/03
- メディア: 単行本
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*1:シアターアーツ寄稿「平田オリザ/初音ミク/ロボット演劇」http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/10001216