作・演出:玉田真也 舞台美術:濱崎賢ニ(青年団) 照明:井坂浩(青年団)
音響:池田野歩 制作:西崎萌恵、足立悠子 宣伝美術:小西朝子
衣装:正金彩(青年団) 総合プロデューサー:平田オリザ
制作協力:木元太郎(アゴラ企画) 技術協力:大池容子(アゴラ企画)
企画制作:青年団、(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
出演:
永井秀樹:藤村
黒木絵美花:里中
ブライアリー・ロング(以上、青年団):ナオミ
吉田亮 :倉持
木下崇祥:加藤
玉田真也:太郎
青年団演出部所属の劇作家・演出家である玉田真也の新作「怪童がゆく」を小竹向原のアトリエ春風舎で観劇した。玉田は慶応大学の学生劇団の出身で、2010年に青年団演出部に入団している。参考までに挙げれば青年団とは無関係だが平田オリザが桜美林大学時代に指導経験のある教え子だったマームとジプシーの藤田貴大(1985年生まれ)もほぼ同世代であり、世代的には柴、藤田、三浦直ら私がポストゼロ年代演劇と呼んでいる作家たちとほぼ同世代となる。
青年団出身の若手演出家の舞台は現代口語演劇を出発点とはしながらもいかにそこから離脱して新たな形式を獲得するかをひとつの主題となってきた。玉田は最近の動向にいわば逆らいながらも群像会話劇という形式にこだわり続けてきたわけだが、青年団がもともと平田の劇団であることからすれば彼らの試みこそいわば青年団における「保守本流」といえなくもないだろうと考えられるのだ。現代口語演劇の様式から大きく逸脱し離れていった2010年以降の現代演劇のなかで、玉田が群像会話劇・現代口語演劇の平田オリザの形式が色濃く感じる舞台を作り続けているからだ。
「怪童がゆく」で描かれるのはある大学の文学部のゼミ合宿である。冒頭で永井秀樹が演じる大学教授の藤村と大学院生でゼミ合宿を手伝いに来ている倉持が現れる。少し遅れて作演出も担当する玉田が演じる藤村の息子の中学生、太郎が登場するが、最初の場面だけみてもこの親子があまり上手くいってないことが分かる。
平田オリザの演劇のことを「関係性の演劇」と名付けたが、それは平田の演劇が微細なニュアンスをはじめ現代口語の会話を再現することで登場人物間の隠された関係性を提示することにあった。
もっともこれは何も平田に限ったことではなく、90年代〜00年代にかけては岩松了、深津篤史、あるいはその後大きくスタイルを変更するが、当時の松田正隆、宮沢章夫もこうしたスタイルを代表する作家だった。