下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団リンク キュイ「きれいごと、なきごと、ねごと、」(2回目)@アトリエ春風舎

青年団リンク キュイ「きれいごと、なきごと、ねごと、」(2回目)@アトリエ春風舎

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作 綾門 優季
演出 櫻井 美穂

出演
尾﨑 宇内(青年団
折舘 早紀(青年団
小寺 悠介(青年団
寺田 凜(青年団
中藤 奨(青年団
大橋 悠太

スタッフ
美術:渡辺瑞帆(青年団)/音響:櫻内憧海(無隣館/お布団)/ 照明:山岡茉友子(青年団)/舞台監督:島田曜蔵(青年団)/ 宣伝美術:原田くるみ/制作:谷 陽歩

前回の観劇の感想で以下のように書いた。

出演するのは大橋、尾崎、小寺、中藤の男優4人と寺田凜、折舘早紀の女優2人。女優2人が姉妹のうちのだれか2人を演じて、残りは男優のひとりが回るのかなと予想するのが普通。そう考えて芝居を見始めるのだが、予想は大きくはぐらかさせる。
 櫻井美穂の演出ではまず男役と女役の性別が入れ替わる。女優2人がそれぞれ兄(寺田)と彼氏(折舘)を演じる。
これに対し、残りの男優4人が入れ替わり立ち代り3姉妹を演じる。さらに特徴的なのは3姉妹の関係はこの舞台の柱となる重要な事項であるにもかかわらず、姉妹とそれを演じる俳優には1対1の対応関係がなく、姉妹のどのひとりも残りの4人の男優(大橋、尾崎、小寺、中藤)が次々とリレー方式で演じ継いでいくことだ。
 誰がどの役を演じるかについて3人の姉妹は愛雨が黒のロングウィッグと赤い布、白雨は白い布に茶色のウィッグ、翠雨はショートカットのウィッグとピンクの布、それぞれを身につける。それを持った俳優がその役であるというルールになっている。
翠雨のクラスメイト・溝口の声はボーカロイドをさらに機械的にしたような機械的な音声がその役を担う。

  ところがもう1度作品を見てみると実際の上演はここに書いたようにクリアで静的な構造ではなくてもう少し流動的で複雑なのだった。
 一回目の観劇の後に二回目を見る前にこの舞台について考えていた時に次第に浮上してきたのは「きれいごと、なきごと、ねごと、」のライトノベルとの共通点だった。この作品はライトノベル的演劇なのだ。
 ライトノベルではかならず作品の表紙やページ内に登場人物の漫画風イラストがついている。そして、風雨の小説だけを読んでいる人にはあまりよく分からないかもしれないが、これが非常に重要なのだ。それはライトノベルに登場する登場人物というのは基本的にキャラクターであって、それぞれの人物についての詳細で微細な描写が作品内でされるということはあまりない。
 その代わりになされるのが登場人物の基本的なキャラクター設定とビジュアルを補完する漫画的なイラストなのだ。
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 そのキャラクター設定の仕方が非常にライトノベル的。三女翠雨のキャラクターが「三姉妹の三女。高校一年生。ショートカットの儚げな美少女。その雰囲気に庇護欲をそそられるのか、異性にやたらモテる。」など。容姿についてこと細かく触れるというわけではなく「美少女」と大上段から書いてしまうところがいかにもラノベ的だし、そういう感覚からするとエヴァンゲリオンに例えるならば翠雨というのは綾波レイだなというのが細かく書かなくても了解されてくる。
 そうなると「茶髪で気の強そうな美少女」という次女白雨(はくう)はアスカ、「黒髪ロングの大人びた美少女」という愛雨はエヴァにそのままというキャラはいないけれど、あえて言えば葛城ミサト的な役回りなのかなということも想像できたのだ。