僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of 欅坂46
4/3(金)公開『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』予告編/公式
新公開日9/4(金)決定!『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』新予告編/公式
欅坂46のことにそんなに詳しいわけではない。むしろ、これまでそれほど興味はなかったといってもいいのかもしれない。私はももクロファンで秋元康系列のグループを仮想ライバルで打倒すべき相手とみなすような心性が知らないうちに刷り込まれてきたということもある。
とはいえ、この映画を見ていると確かに欅坂46のセンターの平手友梨奈を中心とした刹那的な魅力が多くのファンを惹きつけてきた理由も分かる気がした。
しかし、同時にその魅力というのがももクロならびにその絶対的なセンターである百田夏菜子の魅力とは対極的であるということもはっきりと分かった気がする。
映画を見て改めて考えさせられたのは平手友梨奈の圧倒的な存在感であり、急成長していったアイドルグループにはそういう存在が不可欠なのかもしれないと思ってしまった。これと近く感覚を感じたのはやはり同じ監督がドキュメンタリーを撮っているAKB48時代の前田敦子*1である。集団グループにはそれぞれの規模に応じた存在の形態があるとは思うが、AKB48の黎明期の快進撃はセンター前田敦子の絶対的存在感を抜きには考えることができなかったし、ライバルと見なされた大島優子の輝きも前田敦子あってのものだったと考えている。AKBグループはその後、選抜総選挙というシステムを作り出し、一時代を築いたが、あくまで遠くから見ていての感想だが、前田のいたAKBとその後のAKBはもはや異なるグループなのだとさえ考えている。
ただ、この映画で映された平手友梨奈を見ているとその存在が聖性を帯びて感じられるのはそこに供犠的構造がある*2からなのではないかというのが感じられるのだ。そして、前田でも平手でもその魅力が発揮されるのは彼女らが何か心に大きな闇を抱えていて、それがパフォーマンスを通じて奔出されてくるように思われるところにあると思う。
一方、ももクロの百田夏菜子がモノノフによって頻繁に「太陽の子」「太陽神」と例えられるのは彼女の存在は圧倒的に「陽」*3であるからだ。私は卒業した有安杏果のファンであったのだが、圧倒的な「陽」の夏菜子に対して、彼女は「陰」の影を潜めていた*4。
夏菜子は太陽神の巫女のような存在であり、パフォーマンスにおいて神は時に彼女に下りてきて、その姿を顕現するし、時にその言葉は箴言として我々の前に提示してくれることもある。
昔、AKB48の前田敦子をイエス・キリストに準えた批評家がいたが、いまのモノノフもある種の宗教信者めいて見えるかもしれないのは我々の多くが実は「笑顔の天下を取りたい」という百田夏菜子が国立競技場の聖火の前で残した箴言を本気で信じているからだ。そして、それは日々実践していくような目標であって、激しく輝いて消える花火のような一過性のものではない。
「僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of 欅坂46」という映画を見ていて改めて思ったのは秋元康をはじめとする欅坂の運営が平手の存在をどのように考えていたのかという疑問である。欅坂がこのようなものとして具現していったのは平手がいたからということでしかなくて、そこにはメンバーの意志が反映されていたとは思えない。秋元自身も平手という特別な存在を得たことで、そこでその後のAKB48ではなくなってしまっていた前田敦子的なものの復活を目論んでいたということはないのだろうか?いずれにせよ、それは長続きするはずはないものであった。
欅坂46は実は集団名を変えて、新たなグループとして再出発する*5ということを発表している。この映画も再出発を前に欅坂46の総括として企画されたものではあるのだろう。新しいグループがどのようなものになるのかはまだ分からないのだが、映画を見て思ったのは鍵を握ることになりそうなのはTAKAHIROの存在ではないかと思った。単に振付をするというだけではなく、現場でメンバー個々に寄り添って欅坂の演出の中核を担っているのが映像から伝わってくる。改名後のコンセプトは秋元康から降りて来ると思われるが、それをメンバーも納得するように落とし込んで現実のものにしていくのは彼の手腕にかかっている部分が大きいように思う。コンセプトを変えるのはいいけれど、そのために彼をはずすようだと崩壊への道を歩みかねないだろう。
駆け抜けた5年間の軌跡を追う、欅坂46初のドキュメンタリー
公開2020/09/04(金)公開
監督高橋栄樹
出演欅坂46
解説2016年にデビュー後、独創性と圧倒的なライブパフォーマンスで多くの人を魅了してきた欅坂46、初のドキュメンタリー映画がついに公開。2020年1月に絶対的センターの平手友梨奈が脱退を発表。その後の動向に注目が集まる中、7月16日に開催された無観客ライブでグループ名を改名し再出発することを発表。その模様も含む彼女たちの激動の5年間を追ったドキュメンタリー。
*1:
DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る
*2:分かりやすく言えばここで書かれたような構造が見て取れる。舞台芸術における分かりやすい例としては「春の祭典」がある。1000ya.isis.ne.jp
*3:モノノフの中で百田夏菜子を象徴する場面が日産スタジアムでのこの虹である。
ももいろクローバーZ ももクロ夏のバカ騒ぎ 桃神祭 2014「天手力男」
特報「ももクロ夏のバカ騒ぎ2014 日産スタジアム大会~桃神祭~」LIVE Blu-ray&DVD/ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER Z)
*4:ソロになってからの自作曲を聴けばそれははっきり分かる。
有安杏果 – Runaway MV【LIVE ver.】 Ariyasu Momoka – Runaway MV【LIVE ver.】
*5:グループ名は櫻坂46になったようだ。news.yahoo.co.jp