下北沢通信

中西理の下北沢通信

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感謝の恩返しスペシャル企画 朗読劇「半沢直樹」

感謝の恩返しスペシャル企画 朗読劇「半沢直樹

人気テレビドラマ「半沢直樹」のスピンアウト朗読劇(2本立て)を映像配信(Streaming)で観劇した。今回の「半沢直樹」は歌舞伎俳優、小劇場系の舞台俳優らの怪演が目立ち、テレビドラマファンならぬ演劇ファンも楽しむことができる内容になっているが、そうした配役を活用して、今回のドラマでは前半部分でほぼ出番が終わったキャストを中心に完全に新作である朗読劇を上演した。人気ドラマについて、テレビ放映終了後に主要キャストをそのまま起用して、舞台版が作られるということはよくあるし、いくつかそういう舞台を見たこともある。しかし、一連のシリーズの放映がまだ続いている段階で、オリジナル脚本のスピンアウト演劇を上演するというのはあまり例がないことではないか。
 「黒い二人の日記帳」は劇作家・演出家としても活躍しているMONOの土田英生が出演のみならず脚本も担当。本編同様に南野陽子とコンビを組んだ。本編ではこの二人は憎々し気な悪役に徹していた感があるが、二人が粉飾決算にからんで逮捕された後の後日談となる今回の話では本編でのキャラを残しながらも、一転してコメディーとして笑える内容にもなっていて、土田がこういうもので笑わせることを的確に演じるのは自分の脚本でもあるし、できて当然のところがあるが、驚かされたのは南野陽子の達者さである。大阪のおばちゃん的な語り口は見事なもので、大言壮語を吹くという役柄は上沼恵美子を彷彿とさせるほど。半沢本編でも悪役ぶりに新境地を開いたのではと思っていたのだが、この土田脚本を演じた南野陽子はしたたかに見えながら、あほなところもあって、愛嬌もあるという意味で本編以上に親しみを覚えるキャラクターを演じてみせた。ドラマでもこういう役柄で出たら、もうひと花咲かせることができるのではないか。
 一方、賀来賢人(森山雅弘役)と尾上松也(瀬名洋介役)による「初恋の味」は俳優二人の魅力を引き出してはいるが、物語としては途中でオチ(結末)が見えてしまうのが欠点だろうか。本編でもこの二人は好青年的な役柄を好演しているが、どちらも人物造形にアクがある人物ではないだけにスピンアウトでこの組み合わせということになると物語は地味なものとならざるをえなかったかもしれない。

「黒い二人の日記帳」
出演:南野陽子(平山美幸役)×土田英生(平山一正役)
脚本:土田英生

「初恋の味」
出演:賀来賢人(森山雅弘役)×尾上松也(瀬名洋介役)
ゲスト:沢城みゆき 声の出演:大塚明夫
脚本:谷口純一郎

トークショー南野陽子土田英生尾上松也賀来賢人

[演出]
粟島瑞丸

[企画・製作・主催]
TBS、TBSラジオ