下北沢通信

中西理の下北沢通信

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MONO「隣の芝生も。」@座・高円寺

MONO「隣の芝生も。」@座・高円寺

作・演出|土田英生
出演|水沼 健 奥村泰彦 尾方宣久 金替康博 土田英生 / 石丸奈菜美 大村わたる 高橋明日香 立川 茜 渡辺啓
舞台美術|柴田隆弘 照明|吉本有輝子(真昼) 音響|堂岡俊弘 衣装|正金 彩 演出助手|山田 翠 演出部|磯村令子 舞台監督|青野守浩
イラスト|川崎タカオ 宣伝美術|西山榮一(PROPELLER.)・大塚美枝(PROPELLER.)
Web製作|山口良太(slowcamp) 平野正樹
宣伝|小山佳織 間屋口 克 制作|垣脇純子 本郷麻衣 谷口静栄 池田みのり
協力|Queen-B 柿喰う客 青年団 東京サムライガンズ radio mono  
企画・製作・主催|キューカンバー
京都芸術センター制作支援事業

「隣の芝生も。」は旧来のMONOメンバーに最近、土田英生が一緒に舞台を作り始めている若手たちをキャストに加えた新しい座組みによる新生MONO。今回の収穫は大村わたるだったかもしれない。
 土田の作劇のひとつの特徴は演じる俳優に向けての当て書きである。MONOの出演俳優たちとは20年以上一緒に芝居を作ってきたが、作品ごとに物語の設定は違っても登場人物それぞれの性格設定や関係性などはそんなに変わらないということはある。
 実はこの日は本番の後にアフタートークがあり、土田英生と奥村泰彦が登場して、一応、司会役で大村わたるも出てきたのだが、その時のキョドリ方というか、天然のおかしさが芝居中での役のおかしさと同じだったので思わず笑ってしまった。
 アフタートークでは土田と奥村により、大村の日常の挙動不審ぶりが紹介された。中でも人と付き合うときの距離感がおかしく、異常に親しげなときもあるようなのに1カ月ぐらい会わないでいると「ボクのこと嫌っていませんか」みたいなオーラを出して、他人行儀な接し方に変わってしまっているというエピソードなどはなぜかおかしくて思わず笑ってしまった。
 少しはデフォルメしていたとしてもその不思議なおかしさはそのまま「隣の芝生も。」で大村が演じた人物のおかしさにつながっており、こういうのが引き出せるのも土田ならではの才能だ。大村がしばらく土田の芝居に継続して出演するのであれば土田はなかなかの逸材を手に入れたといってもいいのではないか。
 大村は現在、青年団と柿喰う客のダブル所属になっており、そちらでも個性のある側面は発揮しているのではあるが、平田オリザ中屋敷法仁も世界観のほうが大事と言うタイプで当て書きをすることはないので、その意味で大村のそれまでに見たことがない部分の魅力を引き出してくれた土田との出会いはどちらにとっても幸運だったのではないか。