下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmai.comまで連絡お願いします。

MONO『アユタヤ』@東池袋あうるすぽっと

MONO『アユタヤ』@東池袋あうるすぽっと

f:id:simokitazawa:20210307103635j:plain
MONO「アユタヤ」

「アユタヤ」=写真上=は江戸時代のシャム(現在のタイ)のアユタヤの日本人町を舞台とした群像会話劇である。アユタヤの日本人町と言えば山田長政が作り繁栄を極めたことで知られるが、この舞台が描くのは長政が去った後のアユタヤで起こった出来事である。長政自身が貧しい駕籠かきの身分から現地の王族にまで立身出世したとされるように様々な階層の人々が集まり、現地の人と交わり暮らしたユートピア的な部分が強調されてきたが、舞台では多様な階層が集まったことによる身分や出自に基づく差別意識が描かれ、コメディータッチの中で現代でも変わらないような日本人の意識のありようがあぶり出されている。繁栄を極めたアユタヤは日本人同士の対立による疑心暗鬼、現地人との軋轢、そこで起こる相次ぐ放火などでここを去る人が次々と増えて衰亡していくのだ。
 MONOは京都で設立後30年を超え、存続しつづけて小劇場の劇団としてはかなり老舗の部類に入る。水沼 健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博ら以前からのメンバーは相変わらず達者だが、ここに来てここ数年で加わった若手劇団員も交え、混然一体とした統一感のある劇団ならではの見事なアンサンブルを見せてくれたのではないかと思う。
 今回は時代劇であったが、現在のメンバーであれば今後これまでのこの劇団では難しかったようなことも含めて、いろんなシチュエーションの演劇への挑戦が可能ではないかと感じさせた。作演出の土田英生は出演者に合わせてキャラクターをあてがきしていくようなタイプの作家であるため、客演に頼らずに自由に使える手ごまが増えたということは作れる舞台の種類が増えるのではないかという期待が膨らんだ。

作・演出 土田英生
出演 水沼 健 奥村泰彦 尾方宣久 金替康博 土田英生 石丸奈菜美 高橋明日香 立川 茜 渡辺啓