下北沢通信

中西理の下北沢通信

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MONO第50回公演『なるべく派手な服を着る』(作演出土田英生)@吉祥寺シアター

MONO第50回公演『なるべく派手な服を着る』(作演出土田英生)@吉祥寺シアター



MONO第50回公演『なるべく派手な服を着る』(作演出土田英生)@吉祥寺シアターを観劇。2008年に客演を迎えて初演した作品*1をここ数年のうちに加入した若手の劇団員と一緒に再演した。

一見ありえそうだが、よく考えると絶対にありえないようなシチュエーションを前提にしたシチュエーションドラマというやつで、今回は6人兄弟の家族の物語がベースとなる。余命いくばくもないと医者に宣告された父親の元に家を出ていた兄弟がひさしぶりに戻ってきた、というところから話ははじまる。この後、物語は四つ子の(とされている)上の四人の兄弟と彼らに溺愛されている末弟を中心に進行していくのだが、実は主人公であるのは目立たなくて、ほかの兄弟からいつも忘れられた存在になってしまっている五男だという皮肉めいた設定に土田らしいひねりが利いていて面白い。

初演のレビューではこのように書いたが、基本的な感想は今回もそれほど変わらない。ただ、初演から15年を経ての再演で、初演を演じたオリジナルメンバーそれぞれの年齢も50代半ばと上がっていることで、実家に住んでいた父親が亡くなりそうになり、離れて暮らしていた兄弟が集まってくるという状況そのもののリアリティーはより上がってきていると思う。とはいえ、絶対にありえないようなシチュエーションというのは変わらないから、ともそれば単なるコントの設定のようになってしまいかねないところを作者によるメンバーそれぞれへの当て書きにより、(観客にとってはおなじみの感もある)それぞれの人物像の関係性を生かした配役で相変わらず楽しませてくれ、しかも例えばザ・ドリフターズのように十数年たっても中心メンバーが入れ替わることがないのが、MONOの最大の魅力だと思う。MONOを見ているとそのことは当たり前のように感じるけれど、同じぐらいのキャリアの劇団と比較してみるとこれは奇跡的なことではないかとも思えてくる。そして、若手のメンバーもオリジナルメンバーとは役割が違うとはいえ、この作品では後半キャラが激変してしまう女性キャラの役どころなど難しい演技をこともなくこなして見せており、劇団として充実してきていることも感じさせられた。

[出演]奥村泰彦 水沼 健 金替康博 土田英生 尾方宣久 渡辺啓太 石丸奈菜美 高橋明日香 立川 茜
[スタッフ]

舞台美術:柴田隆弘 照明:吉本有輝子(真昼) 音楽:園田容子 音響:堂岡俊弘
衣裳:大野知英 演出助手:neco(劇団三毛猫座) 演出部:習田歩未 舞台監督:青野守浩 
イラスト:川崎タカオ 宣伝美術:西山榮一(PROPELLER.)、大塚美枝(PROPELLER.)
制作:垣脇純子、豊山佳美、谷口静栄、山田航大

協力:キューブ、リコモーション、radio mono
企画・製作・主催:キューカンバー
提携:公益財団武蔵野文化生涯学習事業団
助成:文化庁文化芸術文化振興費補助金舞台芸術創造活動活性化事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
制作協力:サンライズプロモーション東京
京都芸術センター制作支援事業