下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

百田夏菜子歌う主題歌MVが公開。映画「すくってごらん」@新宿TOHOシネマズ

映画「すくってごらん」@新宿TOHOシネマズ


「赤い幻夜」生駒吉乃(Vo.百田夏菜子)MUSIC VIDEO-Short Edit-


映画『すくってごらん』特別映像(バレンタインver. )

尾上松也×百田夏菜子『すくってごらん』予告編

すくってごらん 劇中歌プレイリスト

左遷銀行員
誘い(いざない)
虚無日々
Numbers
今でも眩しくて
小赤
すれ違いのラブソング
ブレない男
恋の幻影(まぼろし)
鼓動の理由
Go your own way
オンリーユー・オンリーミー
月夜
ささやき
この世界をうまく泳ぐなら
赤い幻夜【主題歌】

映画「すくってごらん」を見る人は誰もが百田夏菜子が演じる生駒吉乃に魅入られて恋に落ちてしまうのではないか。そんな風に思わせることができて時点でこの映画は半ば成功を収めているようなものだと思った。しかも興味深いのは原作に登場する生駒吉乃は素朴でカワイイのだが、百田夏菜子の演じる吉乃は原作のイメージとはかなり異なり、ミステリアスで時に妖艶ささえ感じさせるような陰のある女性にも感じられることだ。これは女優として驚くべきことでもあって、アイドルとして普段活動している時のひたすら明るい百田夏菜子像ともまったく違う。この映画の中にのみ住んでいる人物だ。
原作漫画「すくってごらん」は「ちはやふる」が競技かるたについての漫画であるように競技としての金魚すくいにまつわる漫画である。競技として金魚すくいの技術のあれこれなどディテールに踏み込んだ形の描写をしている。
一方、 映画は尾上松也のエンターテイナーとしての側面に焦点を合わせ、コメディーとしてもミュージカルとしても楽しめるものに仕上がった。ミュージカル映画としては曲のよさや映像の美しさも含めて、極めて高いクオリティーを実現したと思う。実はこの音楽というのは原作の漫画には出てこない要素だ。ほぼ監督である真壁幸紀のアイデアであるといってもいいだろう。ヒロインである生駒吉乃(百田夏菜子)がピアノを弾くシーンが実に魅力的だが、歌だけではなく、このピアノ演奏をはじめ、他にも楽器を演奏する場面が随所に出てくる。実は原作では金魚すくいの対戦(試合)として描かれていることのいくつかが映画では楽器演奏や歌でのやりとりとなっている。そして、その分、実際の金魚すくいの場面は減ってしまっているのだ。
 つまり、原作では登場人物それぞれの個性や思いは金魚すくいの対戦に託して語られているのだが、これが音楽に置き換えられてしまっているのだ。音楽劇としての質は高いので、それだけで楽しめるし、見られてしまうのだが、ドラマ部分が薄く感じてしまうのは「金魚すくい=音楽」のメタファーがもうひとつスムーズには重なり合っていないからではないか。

2021年3月12日(金)公開 / 上映時間:92分 / 製作:2020年(日本) / 配給:ギグリーボック


解説 世界初の金魚すくい漫画として知られる大谷紀子の同名コミックを、映画初主演の尾上松也と、初のヒロイン役となる百田夏菜子をキャストに迎えたハートフルドラマ。東京本社から左遷された元エリート銀行員が“金魚すくい”を通じて成長していく様を描く。『ボクは坊さん』の真壁幸紀が監督を務める。共演に柿澤勇人石田ニコル笑福亭鶴光ら。

ストーリー エリート銀行員の香芝誠は、ひょんなことから東京本社から片田舎の町へ左遷されてしまう。荒んだ気持ちを抱える誠だったが、金魚すくい店を営む吉乃と出会い、一目惚れする。吉乃のことが頭から離れない誠は、金魚すくいを通して彼女に接近しようとするが……

スタッフ・キャスト

監督 / 真壁幸紀

原作 / 大谷紀子

音楽 / 鈴木大輔

尾上松也 百田夏菜子 柿澤勇人 石田ニコル 矢崎広 大窪人衛

清水みさと  辻本みず希 北山雅康 鴨鈴女 やのぱん 竹井亮介  川野直輝 笑福亭鶴光

(C)2020映画「すくってごらん」製作委員会 (C)大谷紀子/講談社