下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

Perfumeの配信ライブ “P.O.P”Festival (Perfume Online Present Festival)

Perfumeの配信ライブ“P.O.P”Festival (Perfume Online Present Festival)

Perfumeの配信ライブコンサートなのだと思って見始めたが、夜に本格的なライブも用意はされているが、同時多発的にメンバーのやりたい企画を多チャンネルで配信していくというイベントらしいということが見始めてしばらくしてようやく分かってきた。
いきなりのゲーム実況やゲストを招いてのガールズトークなどに面を食らう場面もあったが、やはり圧巻と言えたのは最後に観た配信によるオンラインライブ「Perfume Imaginary Museum "Time Warp"」であった。

Perfume Imaginary Museum “Time Warp” Special Teaser Movie
 配信によるライブをこれまでいくつも見てきたが、ライブの臨場感を重視したもの*1と配信ならではの作品性、世界観を作り上げたもの*2と両極があるように思われた。Perfumeの場合はもともとそのライブ自体がライゾマティクスの真鍋大渡との共同作業によるメディアアート的な要素の強いものであることもあり、後者に当たるようなライブになること自体は予想がついたが、MVや作りこんだ映画的な映像を精度の高い身体表現とシンクロさせることで、リアルタイムオペレーションしていくパフォーマンスの総合力はVRなどを駆使しているといわれる海外アーティストの配信と比較してさえ、群を抜いたものに見えた。
Perfumeのパフォーマンスの歌唱は音声が加工されているため、あらかじめ録音されたものに口の動きを重ねたリップシンク(いわゆる口パク)だと勘違いしている人がいるようだが、この日のライブ中のあおりと歌唱がなめらかに移行していることなどを見ても、生の歌唱をボイスチェンジャー的なソフトウエアでリアルタイムに加工しているのだろうことは明白である。身体に対する負荷も相当なものだと思うが、これまでは終了後の息遣いひとつにしてもそういう「生」っぽさをあまり見せないような演出が取られていたような気がする。
 この日は配信で生身では皆の前に立てないこともあってか、パフォーマンス後の生の呼吸音とかをいつも以上に見せていたのではないかと思う。そして、そういう工夫でただのMVに見えてしまうのを防ぐ工夫があったのではないかと思った。

オンラインフェスティバル「”P.O.P”Festival『Perfume Imaginary Museum "Time Warp"』」
セットリスト

1 Opera

2 GAME

3 エレクトロ・ワールド

4 GLITTER

5 Chrome

6 edge

7 Visualizetion

8 再生

9 Time Warp

 リアルタイムオペレーションと書いたが、Perfumeのパフォーマンスがあまりにも正確無比で狂いがないためにそのパフォーマンスと完全にシンクロしている映像のどの部分がリアルタイムの処理をしているのか、それともあらかじめ作りこまれたものにPerfumeが合わせているのかが、区別が出来ないほどである。ただ、パフォーマンスの部分については意図的にグリーンバックのライブ会場の実際の姿とパフォーマンスの後の荒い呼吸も見せることで通常のライブでは排除するような生感をあえて強調していたのも印象的だった。
 クールが特徴のPerfumeのパフォーマンスではあるが、この配信はグループ結成20周年、メジャーデビュー10周年の記念公演の側面もあり、もともと同じ趣旨で予定されていた2月の東京ドーム公演がコロナ禍により突然当日に中止が決まった時の映像から始まり、その悔しさをぶつけるようなものとして、仮想世界に作られたもうひとつの東京ドームの映像からスタートし、全体としてもこれまでのPerfumeの歴史を振り返るような感動的なものでもあった。
f:id:simokitazawa:20200921130959j:plain
video.unext.jp

[Official Music Video] Perfume 「Time Warp」

*1:横浜アリーナでのサザンオールスターズのライブなど。

*2:代表的なのはももクロ佐々木彩夏演出によるライブ。