下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

アメフラッシツアーファイナル ここから進撃開始 AMEFURASSHI 1st Tour〈Close to You〉@新宿ReNY

AMEFURASSHI 1st Tour〈Close to You〉@新宿ReNY

f:id:simokitazawa:20211127171039j:plain
f:id:simokitazawa:20211127170926j:plain

アメフラっシ東名阪ツアーAMEFURASSHI 1st Tour〈Close to You〉のファイナルとなる東京公演に参戦。新宿ReNYは音響設備が整っていて重低音がよく響く会場で1部冒頭の「DISCO-TRAIN」「DROP DROP」「 BAD GIRL」「Rain Makers!!」と続くブロックで、その重低音な中でも負けないボーカル、ダンスパフォーマンスにアメフラっシの底力を感じた。初めて見た「DISCO-TRAIN」、スタダフェス以来の現場での「DROP DROP」が素晴らしい。この2曲では特に小島はなの力強く声が伸びていくような歌唱がはまっていて、惹きつけられてしまう。こと歌に関しては以前はアメフラの2トップは愛来鈴木萌花だと思ってきたのだが、小島の急成長で愛来、小島の2トップ感が増してきた。潜在的には歌い手としての素質がある彼女が自信をつけてエース格に育ってきたことで、ソロ部分が短いスパンでどんどん入れ替わるだけではなく、主旋律となるソロに掛け合いのようにハモりやフェイクなどが入って非常に複雑な構成となっている最近の楽曲を苦も無くこなし始めている現在のアメフラに無敵感を感じた。
しかもこうした難曲をこなしながらも激しいダンスもこなすが、これもかなり複雑な振付であるのにダンスグループ並みの精度で遂行してみせ、あまり呼吸の乱れもみせていない。余裕を持ってやれているようにも見えるのでそんなに難しいことをやっているように見えないかもしれないが、歌、ダンスのそれぞれパフォーマンスできるグループはいてもそれを同時にこの完成度でできる女性グループは日本にはあまりいないのではないか*1
 アメフラっシの楽曲は「メタモルフォーズ」を契機に現在の洋楽的な楽曲にシフトしたと感じている人が多いと思うのだが、今回のライブを見て分かったのは第二部で披露されたデビュー曲「ミクロコスモス・マクロコスモス」や第一部の「Dark Face」からガールクラッシュ的クールな格好良さには首尾一貫したものがあって、当時はメンバーの表現力の限界もあって楽曲制作側の意図するパフォーマンスが出来ていなかっただけではないのかと思った。
 パフォーマンスの完成度の高さから韓国のアイドルと比較されることも多いが、アメフラっシにもアメフラの楽曲にも韓国のアイドルグループにはあり得ないような多様性がある。そのひとつが「Over the rainbow」「フロムレター」「STATEMENT」のような自らの魂の叫びを歌い上げるような楽曲。
アメフラはメンバーの歌い方、声質にもひとりひとり違いがあり、こういうバラード、ミディアムテンポの歌を主体とした楽曲は個人個人の歌の魅力を存分に見せられる曲は韓流のアイドルは絶対に歌わないような楽曲傾向のものだし、自分たちに起きた過去の出来事、そしてこれからへの決意を歌い上げる「STATEMENT」では時に愛来などは感情移入しすぎて涙ぐんでしまう時もある。愛来はこれをよしとはしていないよう*2だが、かつての有安杏果伊藤千由李など感受性の豊かさもパフォーマーとしての魅力だし、これはアメフラの大きな武器だと思う*3
 アメフラっシはここ1年ほどで歌やダンスにおいて大いなる進歩を見せたが、実は一番大きな変化はステージング、ステージ上から観客とコミュニケーションをとり、動かしていく力だ。これを得意とするのがももクロだが、少し前までは自分たちのパフォーマンスを完璧にすることに集中することで観客が視野に入っていない部分もあったのが、今年の夏に多数参加したアイドルフェスとライブ直前のリリースイベントで試行錯誤した経験値が今回のライブでは存分に生かされたのではないだろうか。特に以前は小島はなが観客へのあおりを担当などと決まっているとほかのメンバーはあまり積極的にはあおりに加わらないところもあったが、今はそれこそ融通無碍に全員が関わるような態勢となり、今回の会場はジャンプ禁止だったからここでは観客にジャンプの代わりにスクワットさせる「メタモルフォーズ(スクワットバージョン)」をやるなど会場のレギュレーションによりきめ細かな対応力も身につけた。
 ももクロのような動員の倍々ゲームにはなりにくいのが現在のアイドル現場の実情だとは思うが、コロナの状況を見極めたうえでということにはなるが今後ぜひ実現して欲しいのがオールスタンディング会場でのライブ。大音響でのライブ上演が可能で踊れるようなフロアを持った会場がいいと思うのだが、GIG TAKAHASHIなどで経験したSTUDIO COASTなきあと、大箱のクラブスペースってどこがあるのだろうか?とりあえず、今回の新宿ReNYもホームページによると椅子席だと300人程度の小スペース*4だが、スタンディングなら800人ぐらいまで入れられるようなので、コロナ状態がスタンディングが可能なぐらいに収束したらここでもう一度というのはありなのかもしれないが。ちなみに浪江女子発組合がライブを行うLINE CUBE SHIBUYAのキャパは1956人。フルキャパ入れるのかどうかは不明だが、AE会員先行で落選者がかなり出ているから完売することは間違いないと思われる。

AMEFURASSHI 1st Tour〈Close to You〉
新宿ReNY

1部
M1 DISCO-TRAIN
M2 DROP DROP
M3 BAD GIRL
M4 Rain Makers!!
MC
M5 Dark Face
M6 月並みファンタジー
M7 Over the rainbow
M8 フロムレター
M9 轟音
M10 メタモルフォーズ(スクワット)
MC
M11 SENSITIVE
M12 Lucky Number
M13 グロウアップ・マイ・ハート
M14 MICHI
M15 STATEMENT

EN1 明後日の方向へ走れ
EN2 Staring at You
MC 感想

2部

M1 DISCO-TRAIN
M2 DROP DROP
M3 BAD GIRL
M4 Rain Makers!!
MC
M5 月並みファンタジー
M6 ミクロコスモス・マクロコスモス
M7 雑踏の中で
M8 フロムレター
M9 ハイ・カラー・ラッシュ
M10 メタモルフォーズ(スクワット)
MC
M11 SENSITIVE
M12 Lucky Number
M13 グロウアップ・マイ・ハート
M14 MICHI
M15 STATEMENT

EN1 明後日の方向へ走れ
EN2 Staring at You
MC感想

ダブルアンコール
EN1 DISCO-TRAIN

2021年11月27日(土) 新宿ReNY
1部 open 12:45 / start 13:30
2部 open 17:15 / start 18:00

*1:戦略的にはヒャダイン、石川ゆみによるギリギリ感の魅力を見せた初期ももクロとは真逆である。アイドルファンの一定層がそういう生っぽさを求めるのも確かなのでそこがアメフラの課題ともいえる。

*2:これは夏菜子が感極まっても泣くことをよしとしていない美学を持っていることに深い影響を受けているかもしれない。

*3:逆に鈴木萌花は歌唱力は抜群で杏果や千由李、そして柏木ひなたの後継となりうる素材だが、感情が表に出にくい、あるいは歌に感情をこめて感極まるというところがあまりないのが、課題だと思う。

*4:アメフラっシの場合、今回も二部が完売と右肩上がりで観客動員は増え始めてはいるが、6人体制スタートのukkaのライブ会場舞浜アンフィシアターが定員2000強、客席1席おりで約1000人だったから、まだまだこれからということは間違いないだろう。ちなみにクリスマスライブの会場神田スクエアホールは椅子席で約450席。