下北沢通信

中西理の下北沢通信

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2021年アイドル&ライブ ベストアクト(年間回顧)たこ虹ラストライブ、快進撃のアメフラっシ、演出力目立つあーりんソロ、圧倒的歌唱力見せた有安杏果、ももクロ2年ぶりの復活ライブ……。

2021年アイドル&ライブ ベストアクト(年間回顧)

2021年アイドル&ライブ ベストアクト

1,たこやきレインボーラストライブ「Departure」Zepp Haneda*1
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2,アメフラっシツアーファイナル「AMEFURASSHI 1st Tour〈Close to You〉」@新宿ReNY*2
3,佐々木彩夏ソロコンサート「AYAKANATION2021」横浜アリーナ*3
4,ももいろクローバーZ「ももいろクリスマス2021~さいたまスーパーアリーナ大会」さいたまスーパーアリーナ*4
5,有安杏果 サクライブ 弾き語りツアー2021」追加公演@@名古屋ダイヤモンドホール*5*6
6,浪江女子発組合「2021年JA浪江 組合総会 あいのりきっぷ」@LINE CUBE渋谷*7
7,TEAM SHACHI「OVER THE HORIZON はちゃめちゃ! パシフィコ!」@横浜パシフィコ*8
8,百田夏菜子ソロコンサート「Talk With Me ~シンデレラタイム~」さいたまスーパーアリーナ*9
9,私立恵比寿中学大学芸会2021 Rboot』 @東京ガーデンシアター*10
10,いぎなり東北産「大一番ライブ《TOKYO INVADER》」@立川ガーデンステージ*11

演劇ベストアクト*12、ダンスベストアクト*13に続いてアイドルライブの年間ベストアクトを選んでみた。こういうことを書くと頭おかしいと思われかねないけれど、この三つの表現はいずれも総合エンターテインメント*14でパフォーマングアートにおける隣接領域だと考えている*15
 ライブ自体の演出的な工夫やパフォーマンスのスキルなども選考の基準ではあるが、それでも、アイドルなりの特殊性はやはりある。メンバー全員の卒業が発表されグループとしての最後のライブとなったたこやきレインボーラストライブ『Departure』」は理屈抜きにまず最初に持ってこざるをえなかった。
 東京都のコロナ感染者数が急増しており現場に出かけるかどうか悩みに悩んだが、たこ虹は大阪での結成ライブにも偶然立ち会っており、このライブにはグループの最初と最後に立ち会いたいとの思いから出かけることにした。
 実はメンバーのグループ活動自体はこれで終わりはなく、新たなユニットによる活動の継続を宣言している。ライブの中でもメンバーが何度も「今後もよろしくお願いします」と繰り返していたが、それでもこのライブでもまだ「今後」の内容についてはいっさい触れられなかったから、ライブを見ながらavexは何でこんなに歌もダンスも素晴らしいグループの契約を打ち切ってしまったのか*16とのやりきれなさが残るラストライブとなった。ももいろクローバーZ私立恵比寿中学、TEAM SHACHIから若手のアメフラっシに至るまでスターダストプラネットの所属グループはダンスや歌唱のスキルの高いグループが揃っているが、この日のパフォーマンスを見てたこ虹はその中でも屈指の総合力を持っているグループであることを再確認させられた。(「Departure」の映像はネット上にはないので、下記は全員卒業を発表したオンラインミニライブ)

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 2021年はスターダストプラネットスタプラ)のももクロ妹グループでもっとも注目すべき活動をしたのがアメフラっシだった。内容が素晴らしいライブはいくつもあったが、ひとつ選ぶとすればシングル「SENSITIVE」のリリースを受けての東名阪ツアーAMEFURASSHI 1st Tour〈Close to You〉のファイナルとなる東京公演であろう。新宿ReNYは音響設備が整っていて重低音がよく響く会場で1部冒頭の「DISCO-TRAIN」「DROP DROP」「 BAD GIRL」「Rain Makers!!」と続くブロックで、その重低音な中でも負けないボーカル、ダンスパフォーマンスのスキルの高さにアメフラっシの底力を感じた。
 初めて見た「DISCO-TRAIN」、スタダフェス以来の現場での「DROP DROP」が素晴らしかった。この2曲では特に小島はなの力強く声が伸びていくような歌唱がはまっていて、惹きつけられた。こと歌に関しては以前はアメフラの2トップは愛来鈴木萌花だと思ってきたが、小島の急成長で愛来、小島の2トップ感が増してきた。潜在的には歌い手としての素質がある彼女が自信をつけてエース格に育ってきたことで、ソロ部分が短いスパンでどんどん入れ替わるだけではなく、主旋律となるソロに掛け合いのようにハモりやフェイクなどが入って非常に複雑な構成となっている最近の楽曲を苦も無くこなし始めている現在のアメフラに無敵感を感じた。

 
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冒頭でアイドルライブは総合エンタメだと述べたが佐々木彩夏ソロコンサート「AYAKANATION2021」はその典型のようなライブである。冒頭の映像で例年ライブの世界観が提示されるのだが、今回は特にその部分に力が入っていた。映像は本物の東京国立博物館をロケ地として、その内部で撮影されており、ドレスアップしてそこに来た佐々木彩夏(あーりん)が、壁に据え付けられた4つの額縁の前に立つ。しかし、額縁の中はまだ真っ白で絵は見えない。パフォーマンスが展開され、それが終わり、再び絵の前に立つと額縁の中には絵画作品が忽然と現れる。それまでのパフォーマンスがその絵画をイメージしたものであったことが初めて分かるという仕掛けなのだ。
 「美術大好き」という佐々木が自分の好きな絵画作品4つを選び、それぞれの作品からイメージされる衣装、楽曲、照明などを決定し、ステージ上に絵画を描くように展開していく。いかにもらしい主題ではあるが、それだけではないのではないか。ライブを美術展に準えたのはコロナでコールも禁じられ、静かに見ざるをえない観客に対し全員が黙って静かに作品を見ている美術の展覧会でも心の中では「凄い」とか「きれい」とか「いったい何を描いたものなのだろう」というような様々な心の声が渦巻いているように、こんな時だからこそ美術展のようにライブも楽しんでみてほしい。演出である佐々木彩夏のアイデアにはこんなメッセージが込められていたのではないか。

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 春夏冬と年に3回あるももクロの大箱ライブは2020年の春の一大事がコロナ禍で中止になったことに始まり、春夏冬春夏と5回連続で中止となってしまった。その間、配信ライブや手探りで再開した明治座でのライブなどはあったが、ももいろクローバーZ「ももいろクリスマス2021~さいたまスーパーアリーナ大会」@さいたまスーパーアリーナは恒例の大箱では2年ぶりの復活ライブとなった。下記の映像は運営が配信したものでアンコールの拍手とOvertureだけで、ほんの一瞬だけ「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」の前奏がかかるが、目玉はその曲の後半部分での10年ぶりのマーティ・フリードマンの降臨、現地での興奮が最高潮に達した瞬間であった。

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有安杏果のライブには有安杏果 サクライブ 弾き語りツアー2021」の仙台と名古屋と2度にわたって出かけた。実はMISIA 「Everything」などのカバー曲を披露した渋谷公会堂(LINE CUBE渋谷)での「サクライブ2020」が本当に素晴らしかったのだが、そのライブは一昨年の11月のこと。モノノフは現在の杏果に興味を持たない、あるいは否定的な人たちが多いようだが、ももクロメンバーが5人当時からは比べものにならないぐらい進歩しているように杏果の歌も段違いの進歩をみせている。食わず嫌いをせずに一度映像でもいいから確認してみてほしい。

有安杏果 サクライブ 2020 "渋谷公会堂公演"「Everything」MISIA /Ariyasu Momoka – 「Everything」MISIA
杏果の歌うカバー曲はいつもオリジナル曲以上に印象的だが、名古屋の追加公演では以前にスタジオで弾き語りで弾いたことのある「若者のすべて」がよかった。仙台公演では地元に関係のあるアーティストとして、「福笑い」を歌ったがこれもよかった。

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6位~10位に挙げたライブは長くなるのでここでのコメントは省くが当日の感想レポートへのリンクを張ったので興味を持った人は参考にしてほしい。

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:simokitazawa.hatenablog.com

*3:simokitazawa.hatenablog.com

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:simokitazawa.hatenablog.com

*6:simokitazawa.hatenablog.com

*7:simokitazawa.hatenablog.com

*8:simokitazawa.hatenablog.com

*9:simokitazawa.hatenablog.com

*10:simokitazawa.hatenablog.com

*11:simokitazawa.hatenablog.com

*12:simokitazawa.hatenablog.com

*13:simokitazawa.hatenablog.com

*14:simokitazawa.hatenablog.com

*15:ダンスの関係者には腹を立てる人がいるかもしれないが、特にダンスとある種のアイドルライブ=例えばももいろクローバーZのライブ=を見る時の見方は私には区別がない。

*16:契約打ち切りと解釈されているが、実は新グループがそのまま所属する可能性もあり、その点についてはよく分からない。