下北沢通信

中西理の下北沢通信

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有安杏果 サクライブ 2020 "渋谷公会堂公演"「Everything」/ MISIA

有安杏果 サクライブ 2020 "渋谷公会堂公演"「Everything」/ MISIA


有安杏果 サクライブ 2020 "渋谷公会堂公演"で遭遇した「Everything」/ MISIAのカバー。これまで見た有安の歌の最高到達点のひとつであった。ももいろ歌合戦ではかつての仲間たち4人が八面六臂の活躍ぶりを見せ、特に百田夏菜子の「ロマンスの神様」は素晴らしく、昨今の成長の著しさを感じさせたが、その間有安だって寝ていたわけじゃないことを有安アンチ以外のももクロファンに知ってほしいと思う。再度の非常事態宣言でももクロのライブもスタダフェスも延期となったが、ほぼ同時期に予定されていた有安のライブも延期に追い込まれた。そういう時にあえてこの歌をYoutubeにアップしたのはやはりライブの時に書いた下記の文章にあるような思いが、この歌には込められていたからではないかと思う。逢いたい想いのまま 逢えない時間だけが過ぎてく 扉すり抜けて また思い出して あの人と笑い合う あなたを……。

MISIAの「Everything」は歌が上手いと言われている人にとっても歌いこなすのが難しい歌で、無謀な挑戦と言われても仕方ないところだが、以前だったらこういう実力に対してぎりぎりの歌を歌う際には頑張りや必死さが前面に出てしまったものだが、今回はそういう感じは受けないで音楽に寄り添うように歌いこなせている事実にスキルの積み重ねの努力の跡を感じた。考えてみれば、これまでも本人ゆかりの曲とはいえ「小さきもの」(林明日香)や武道館ライブでは宇多田ヒカル「FIRSTLOVE」も歌っているから、有安らしい選曲かもしれない。

MISIAの「Everything」の歌詞には「逢いたい想いのまま 逢えない時間だけが過ぎてく 扉すり抜けて また思い出して あの人と笑い合う あなたを」という部分があり、もちろんこの歌は「あなた」との恋愛のことを歌っているのだが、杏果はここにライブをやり、ファンの前で歌いたかったけれどそれができなかったもどかしさを仮託して歌っているのではないかということ。もう、一方の「何度でも」はもっとストレートで、これは東京が震災に襲われたという極限状況のなかで患者と向き合って戦う医療スタッフを描いたドラマ「救急病棟24時」の主題歌であった楽曲。この歌のライブ映像のコメント欄を見て見たら、医療関係者やさまざまな苦境にある人たちの書き込みが数多く書き込まれており、杏果はこの歌について何もコメントはしなかったけれども、熊本の震災の時に作った自作の「小さな勇気」と続けて歌ったことには明らかに込められた意味があると思う。そして、うかつなことに忘れていたけれど、この人はもともとそういう人だった。

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