下北沢通信

中西理の下北沢通信

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手越祐也とももクロの圧倒的なパフォーマンスに脱帽。黒フェス2021 〜白黒歌合戦〜@有明・東京ガーデンシアター

黒フェス2021 〜白黒歌合戦〜@有明・東京ガーデンシアター

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ももクロにはお世話になっている先輩アーティストが主催、毎回のように参加しているフェスがいくつかあるが黒フェスは松崎しげるの主催フェス。規模こそ大きくはないが、東京近郊で開催され、毎年9月6日と平日開催も多い日程ながらもスタート以来毎年参戦してきた*1
会場となった東京ガーデンシアターは収容人数8000人のキャパだが、何と観客を2000人と4分の1にまで絞り込んでの開催となった。これでは到底採算は取れないと思うのだが、それほど万全の措置を取っての開催だったということも考えるとその心意気に対して感じ取るものがあった。
 メインの目的はもちろんももクロではあるけれど、他ではなかなか見ることができないような人が見られるのが黒フェスの魅力だ。そういう意味で今年の目玉が手越祐也であったことは間違いないだろう。歌唱力があることはジャニーズ事務所時代にテレビで見て知ってはいたが、ソロでの生パフォーマンスを初めて見てバックダンサーと一緒に踊ったダンスの切れ味などパフォーマーとしての実力の高さを再確認させられた。実質3階席というような場所からの観戦であったが、このくらい離れた場所で見ると人によってパフォーマンスが届いている人とそうでない人がいることが歴然と分かってしまう。そういう意味では手越のパフォーマンスはただ届いているというだけでなく、ソロの歌唱でかつ初めて聴く楽曲ばかりであるのに細かい表情あるいはニュアンスのようなものまではっきりと伝わってくる。モノノフの中でも男女間のことでの評判でいまだに「ももクロには近づくな」などというリアクションが少なくない手越だが、この日のライブパフォーマンスを見て、ももいろ歌合戦にぜひ呼んでもらいたいと思ったし、川上さんがすでに声をかけている可能性がけっこう大きいのではないかと思った*2

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フェスでもフェスそれぞれの性格に合わせて攻め方を変えてくるのがももクロだ。アウエー仕様のロッキンとも、主への挨拶代わりの印象も強く毎年カバー曲を披露している氣志團万博イナズマロックフェスとも異なり、「通好みかつ最新アップデートされた楽曲で攻めてくる」と以前の黒フェスレポートで書いたが今回のセットリストもそれに準じたものだった。

黒フェス2021 ももクロセットリスト
「境界のペンデュラム」
「DECORATION」
「吼えろ」
(茶番:コロナ上がりの夏菜子が咳き込むからスタート)
「黒い週末」

とはいえ、あーりん、夏菜子が療養から復帰したとはいえまだ慣らし運転の感もあった@JAM EXPOと比べて、今回はいきなりトップギアに入れた感のある全開のパフォーマンスで完全復活をアピールした。面白く思ったのは直近の@JAM EXPOのセットリストが「DNA狂詩曲」「クローバーとダイヤモンド」「天国のでたらめ」「走れ!」だったので、1曲のダブりもなかったこと。文字通りにあーりんと夏菜子の復活をモチーフとした前回ライブのセトリに対して、今回はももクロの楽曲の中でももっとも速いBPMで超絶技巧ともいえる「境界のペンデュラム」*3*4「DECORATION」の連発で、いまだ「走れ!」「行くぜっ!怪盗少女」がももクロのイメージである他アーティストのファンに現在のももクロを強烈にアピールし、スキルの高さを見せつけた。
一転してもともとヤンキース時代の田中将大投手の登場曲で今年は阪神のルーキー佐藤輝昭が登場曲にしている「吼えろ」が続くが、モノノフ的な注目は冒頭、夏菜子の「吼えろ~~」のロングトーンで息が続くかどうか。文字通り完全復活のノロシを上げる熱唱であった。
 そして、その後がこの日の最大の問題となった「夏菜子の咳」茶番演出である。3曲が終わって、ももクロライブはいつも終わりの挨拶の時にかかるBGMがかかり、メンバーそれぞれが簡単な挨拶を始める。そして、夏菜子の番になった時に突然咳き込みはじめて、後ろを向いて咳き込んでいる夏菜子に場内がざわざわしはじめたところにいつも通りのイントロがかかり「黒い週末」がスタートしたのだ。ももクロのいつもの茶番ではあるのだが、帰り道のファンの声で聴こえてきた中には「コロナ上がりの夏菜子にあんなことをやらせたのはだれだ」というように怒り収まらずというファンの意見も聴こえてきた。答えは川上さんがメンバーと相談して決めた以外の答えはありそうにないし、嫌なら夏菜子自身が拒否するだろうという風にしか思えなかったし、いかにもももクロらしいと思ったのだが、モノノフにはともかく一般客を置き去りにしたような演出には思わず笑ってしまうとともに「名実ともに完全復活だな」と思ったのであった。
 個人的に胸を熱くしたのは早見優松本伊代森口博子の往年の人気アイドル3人が本田美奈子の「Oneway Genaration」*5*6を歌ったことだった。私が大好きな曲だったということもあるが、この3人で「いま」歌ったということに象徴的な意味を感じたからだ。本田美奈子といえば白血病で早逝したのは有名だが、森口博子とは同じ年のデビュー。「Oneway Genaration」は彼女の代表曲であるというだけでなく、今年亡くなった田村正和の主演ドラマ「パパはニュースキャスター」の主題歌でもあった。作曲は筒美京平。最近物故したばかりの二人への追悼の意味合いは当然あるだろう。作詞は秋元康であり、この曲の知名度以上に芸能史的な意味がある歌でもあり、この歌を早見優松本伊代森口博子が歌うことにも感じるものがあったのだ。この歌こそ年末にももいろ歌合戦で歌うのに相応しい歌なのではないか。
豆柴の大群も初めて見た。WACKのアイドルでは他にないメンバー色もあり、クロちゃんがプロデュースしたらしい極めてアイドルらしい楽曲とボーカル熱唱型の松隈ケンタプロデュース曲が共存しているのが面白い。ただ、これは豆柴の大群だけに言えることではなくて、他のほとんどのアイドルもそうなのであるが、後から出てきたももクロと比べてしまうとまるでパフォーマンスの魅力が観客にまで届く射程距離が違うなとも感じてしまった*7
 そして射程距離なんてことを言いだしたら、松崎しげるのそれがとんでもないことだけはとにかく間違いがない。ラストの「愛のメモリー」はこの広いホールを隅から隅まで完全に手中のものとしているし、西武ドームやスタジアム級の会場になってもそれが変わらないのはモノノフが一番知っていると思う。

2021年9月6日(月)
東京ガーデンシアター
開場:16:30
開演:17:30

出演:
松崎 しげる / ももいろクローバーZ / 早見優 / 松本伊代 / 森口博子 / 手越祐也 / 豆柴の大群 / 神奈月 / オーイシマサヨシ / mao / 市川由紀乃
※順不同

出店:
<FOOD>
日本橋 たいめいけん
・パティスリー・ビィズ・ショコラ
<SHOP>
・Music Garden

主催/企画/制作:黒フェス実行委員会
協賛:有明ガーデン東京ガーデンシアター/横尾材木店/ニッスイ/JOYSOUND

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*1:昨年はももクロもリモート参加、私も配信での観覧となった。

*2:ももいろ歌合戦にジャニーズ事務所のタレントが出たことはないが、これまでは良好な距離を取ってきただけにそのあたりをどう配慮するかがポイントだが、有力Yotuberはカジサックやフィッシャーズをはじめこれまでも出演しているし、そういうカテゴリーの出演ならば理由がつきやすいかもしれない。地上波ではないが、AbemaTVやBS、CS局もからんでいるももいろ歌合戦への出演は手越側にもメリットは大きいはずだ。

*3:
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*4:
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*5:www.youtube.com

*6:
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*7:この日豆柴の大群のパフォーマンスを見ながら、彼女たちだけでなくukkaやアメフラっシ、CROWN POPなど実力派でZepp Tokyoぐらいの規模の会場なら十分すぎるパフォーマンスができるグループもこの日のような8000人規模のホールでは舞台後方の観客にも届くようなパフォーマンスができるのかどうか。一度見てみたいとも思うが集客力とは別に限界はあるんだろうなとも思わせた。そして、そんなことを想像させたのは豆柴の大群のパフォーマンスがよかったからでもある。