下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アオガネの杜「みにまむごっず」@アトリエ春風舎

アオガネの杜「みにまむごっず」@アトリエ春風舎


 青年団所属の中村馨によるプロデュースユニット「アオガネの杜」の新作「みにまむごっず」(作・演出 中村馨)をアトリエ春風舎で観劇。お腹に宿していた命を失った妹、誉々(よよ)とその兄である救(きゅう)と妻、日登美(ひとみ)の三人を中心に生と死についての哲学的な思索を描いた作品である。
 コロナ禍以降若手演劇人の作品に生と死の境界線を取り上げたような作品が多い。この「みにまむごっず」もそうした作品と言っていいとは思うが、自分の子供が早産によって亡くなってしまったことをなんとか自分の内に受け入れるために仏教の「色即是空 空即是色」からスタートし、それを量子物理学などの現代の科学的な知見を入れながら、独自の理論として構築していくという設定を入れ込むことにより、一種の魂の救済を描いている。その手つきには理屈っぽさと臨死体験のような幻想性が混交して提示されているようなところがあって、その理屈のガジェット性は演劇作品としてはまだまだこなれていない部分も垣間見えるが、これまであまり見たことがないようなユニークさも感じた。

作・演出 中村馨
主な登場人物は3人。
誉々(よよ)、日登美(ひとみ)、救(きゅう)です。
誉々は1年前、お腹に宿していた命を失ってしまいます。心身共に疲弊し、兄である救とその妻である日登美の住む小さなアパートに居候させてもらうところからお話が始まります。一つだけ気まずいというか、問題なことに、日登美のお腹には新しい命が宿っていて、誉々の前で日登美のお腹はこれみよがしにどんどん大きくなっていくのです。
誉々は自分の悲しみを紛らわせるため、無理数の小数が無限に小さな数字まで続くことから、存在と不在のちょうど境界線にいる世界最小単位の神「みにまむごっず」を想定します。そしてそうすれば世界は有限のパターンを繰り返していることになり、理論的に自分と我が子が再会できると証明した気になるのですが・・・


アオガネの杜
劇作家・演出家の中村馨が2024年に設立した演劇作品を上演する団体です。

出演
伊藤拓(青年団) 田崎小春(青年団/melomys) 小川直優太(劇団二進数) 武田紗保

スタッフ
作・演出:中村馨
照明:本地赳生
照明操作:角
音響:菱沼裕大
舞台監督:蒼乃まを(青年団)
演出助手:新田周子(SPM)
記録写真:コトデラシオン(十六夜基地)
宣伝美術:岸裕真
デザイン:小林千秋
制作:飯塚なな子
協力:シバイエンジン、青年団、melomys、劇団二進数、SPM、十六夜基地、(劇)ヤリナゲ