下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

Aokid×橋本匠『we are son of sun!』(世界初演)@象の鼻テラス

Aokid×橋本匠『we are son of sun!』(世界初演)@象の鼻テラス

横浜ダンスコレクション2016コンペティションⅠ 受賞者公演

横浜ダンスコレクション2016で審査員賞を受賞したAokid×橋本匠。美術やデザインなど、幅広い活動に定評のある2人は、身体と物とが等価に置かれたポップで居心地がよい空間を生みだし観る人を魅了する。

2.13 [tue] 19:30
2.14 [wed] 19:30


 会場となった象の鼻テラスはかつてままごと(柴幸男)が公演会場として利用したことはあったが、通常はカフェとして使われているスペースだ。
 横浜ダンスコレクションのコンペティションI2016審査員賞の受賞公演を赤レンガ倉庫や野毛シャーレの劇場として使われるフリースペースではなく、あえてここを選んだというのがAokid×橋本匠らしいといえるかもしれない。この場所は周囲がガラス張りになっていて、特に夜間では海も含み港の夜景が臨める絶好の場所となっているのだが、Aokid×橋本匠『we are son of sun!』は公演で使ういろんな道具(木の棒、赤いロープ、模造紙など)と並んでガラス越しに見える港の風景はこの作品にとっての重要な要素となっており、サイトスケープな作品の魅力をおおいに発揮した。
この作品はともにダンスと美術など複数の領域にわたってマージナルな活動を続けているAokidと橋本匠の共同制作作品だ。ただ、私個人としてはAokidはKENTARO!!のカンパニー「東京ELECTROCK STAIRS」で妙にへたれなダンスを踊っていたことが気になっていたころから知っていたこともあり、彼と橋本のコラボ作品として受容した。Aokidのアーティストとしての魅力は、単独の公演で見せるなんともへたれな個性はワン・アンド・オンリーではあるが、コラボ名人であって、それも相手によってその表現が千変万化する面白さにある。
 最近では「choreograph」「RE/PLAY Dance Edit」と多田淳之介作品に続けて出演しており、ブレイクダンサーとしての技術を持ちながら、そうじゃないっぽい個性的なキャラクターを発揮しているが、橋本匠と一緒に公演する時のAokidはほぼ「遊ぶ人」である。Aokidと橋本匠の2人はここでは舞台上に用意されていた紙、棒、ロープなどをいろいろに使って幼児の「ごっこ遊び」のように遊び続ける。
 興味深いのはいろいろ置いてある様々な道具がほとんど本来の目的では使われないことで、例えばギターが置いてあるが、ギターを弾いて歌ったりすることはない。Aokidがギターを抱え込んで踊ったりするのに使った。模造紙とペンは用意してあってもそれで何かの絵を紙に描くということはなく、紙の一部を破って、くしゃくしゃにしたり破ってバラバラにして、ばら撒いたりするのだった(笑)。
 こうした一見ゆるい内容なのだが、これは実際にはかなり緻密に設計されて演出されているのではないかと思う。おそらく、ダンスプロパーの方面からの風当たりは強いのではないかと思うが、このタッチは面白いと思った。