下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ままごと 『ツアー』 @横浜STSPOT

ままごと 『ツアー』 @横浜STSPOT

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2018年4月21日(土)~4月30日(月・祝)



「これは旅、さよならを探す旅。」

女の息子は死んだ。眠る女。その横で眠る夫。その間で眠っていた女の息子。
目を覚ました女はいつものように息子の顔を撫でる。息子の呼吸は止まっている。
それは女の息子が5ヶ月生きた次の朝。女の息子は理由なく死んだ。

それから半年後。女は目を覚ます。外はまだ暗い。ベビーベッドやバウンサーはまだ部屋にある。
女は身支度をはじめる。いつから決めていたのだろう。今かもしれない。
女は衣服を整え、メモを残して家を出る。「ちょっと出かけてきます」。

女は車を発進させる。久しぶりの車の運転。カーステレオのスイッチを入れる。
ラジオ番組が聞こえる。音楽が流れ出す。ナビが目的地の入力を促す。目的地はない。

街を抜けて、車は高速道路を走る。郊外を過ぎ、山間へ。空は次第に明るくなる。
女はサービスエリアで小休止をする。行き先のないドライブ。
女は売店でコーヒーを買う。すると女はイヌに話しかけられる。

作・演出 柴幸男(ままごと)

CAST 大石将弘(ままごと|ナイロン100℃)、小山薫子、端田新菜(ままごと|青年団

TIME TABLE 2018年4月21日[土] – 30日[月祝]
21日[土]15:00 / 17:00 / 19:00
22日[日]13:00 / 15:00 / 17:00
23日[月]19:00 / 21:00
24日[火]休演日
25日[水]19:00 / 21:00
26日[木]19:00 / 21:00
27日[金]19:00 / 21:00
28日[土]13:00 / 15:00 / 17:00
29日[日]13:00 / 15:00 / 17:00
30日[月祝]13:00 / 15:00 / 17:00
※受付開始は開演の30分前、開場は20分前。
※上演時間は約45分(予定)。

柴幸男の代表作「わが星」と「あゆみ」はどちらも「誕生と死」が語られていた。今回の「ツアー」はそれと比べたら長い射程を持つ物語とはいえないが 「死(喪失)と再生」が主題であり、上演時間45分の小品でこそあるが、2大傑作を彷彿とさせる部分は確かにあって、いかにも「柴幸男らしさ」を感じさせる作品であった。
幼い息子を亡くした女性(小山薫子)がその現実を受け入れることが出来ず突然車を飛ばして旅に出る。そして旅先で何とも不思議な女(端田新菜)と出会う。女は音楽フェスにやってきたバンド「ブレーメンズ」のメンバーだが、「仲間に置いて行かれて取り残されてしまった」という。
 そして、クラヤミ*1と呼ばれる謎の怪物(人々の悪い念が実体化したものだなどとされる)に追われたり、逃げ回っているうちに深い森の中に迷いこんだりと不思議な冒険譚が綴られていく。
  「ツアー」という表題はもちろん旅行のことなのだが、さいきんは瀬戸内国際芸術祭など地域の活動も多い、「ままごと」の活動そのものを語っているようにも思える。だとすると端田新菜が演じる不思議な女はその象徴なのかもしれない。
 

*1:村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に出ているやみくろを連想させるが、「特にモデルにしたということはない」とのことだった。