下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

庭劇団ペニノ「笑顔の砦」RE-CREATION@KAAT

庭劇団ペニノ「笑顔の砦」RE-CREATION@KAAT

2019年09月19日(木)~2019年09月23日(月) 

作品情報



日本海に面した小さな漁港町。

漁師たちが住むアパートに、ある家族が引っ越してくる。

兄弟のように仲良く、笑いの絶えない日々を送る漁師。

認知症の母親を持つ家族。

まるで違う二つの部屋、二つの時間。

しかし、次第に影響し合い、何気ない日常は変化していく。

本当はただ笑って生きていたいだけなのに。

2007年に岸田國士戯曲賞にノミネートされたタニノクロウの物語作品の原点。


作・演出:タニノクロウ

出演:井上和也 FOペレイラ宏一朗 緒方晋 坂井初音 

   たなべ勝也 野村眞人 百元夏繪  (五十音順)

スタッフ

美術:カミイケタクヤ 

照明:阿部将之(LICHT-ER) 

音響:椎名晃嗣

演出助手:北方こだち

演出部:さかいまお

映像:松澤延拓 

舞台監督:夏目雅也・ニシノトシヒロ(BS-Ⅱ)

宣伝美術:山下浩介 

制作助手:柿木初美 

制作:小野塚央 


■お問合せ

お問い合わせ:niwagekidan@gmail.com

       080-4414-2828(平日11時〜19時)

提携:KAAT神奈川芸術劇場

助成:芸術文化振興基金

共同製作:城崎国際アートセンター(豊岡市

企画:庭劇団ペニノ

主催:合同会社アルシュ

 改訂版以前の上演を大阪精華小劇場で見ているはずだったが、こんな筋書きだったかというぐらい思いだすことができない。
 そんな中でもこれだけは忘れないでいたのは左右に並んだ2つの部屋でまったく無関係な2つの物語が同時並行で進行していくというアイデアで、似たような趣向はポツドール三浦大輔がよく活用していたが、どちらが先だっただろうか。ただ、印象や効果は全然違う。三浦のそれが互いに交流のある同じ世界の人物らを描き、あっちがああだった時こっちはこうだったというのを並行して提示する。いわば平田オリザの同時多発会話の拡大版のようなところがあったのに対して、この舞台では下手側の部屋に親方(船長)の部屋を訪れる漁師たちの生活、上手側には海が見たいと言い出した認知症の母のためにここに引っ越してきた市役所勤めの息子とその娘のようすが描かれ、観客はそれをアリの巣を観察するかのように覗き込む感覚で見ることになる。
 それぞれの部屋の主たちの生活には引越しの際に息子が挨拶に訪れた時以外にはほぼ接点はない。最初、漁師のひとりが隣に引っ越した家に娘がいることを聞きつけるという描写があり、少し古びた道具立てから彼らのうちの誰かが娘に恋心を抱くのかななどと山田太一的な展開を考えたりもしたのだが、そういうことはまったく起こらず、互いの立てる音が聴こえてきたりして、時折生活のリズムがシンクロする程度で、漁師たちのうちの1人は母親ががんで余命いくばくもないという連絡が入り、父親一人が残された実家に帰るし、認知症の母親を抱える家族もここでは彼女の病気に対応することが難しいことが分かり、短い時間で引越していく。
 老いることの孤独や迫りくる死ということが突き付けられる作品でもあり、救いがないという意味では青年団リンク やしゃご「アリはフリスクを食べない」などと相通じるものがあるのだが、庭劇団ペニノの作品にはどこか惹かれるものがあってそれが何なのか、舞台を反芻しながら考えている。
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