下北沢通信

中西理の下北沢通信

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劇団普通第8回「病室」@池袋・スタジオ空洞

劇団普通第8回「病室」@池袋・スタジオ空洞

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「病室」は表題の通り4人部屋(4ベッド)の入院病棟の病室を描いた会話劇。おそらく、脳梗塞脳出血などで運び込まれた入院患者の病室で、この病室には病状が比較的軽かったために下半身の麻痺などはあるが、意思疎通が可能な4人の入院患者が入院している。患者とそこを訪問する家族たち、看護師や医師ら病院のスタッフなどを描くことで、それぞれの患者家族のそれぞれの人生模様が浮かび上がってくる。
 平田オリザらが生み出した現代口語演劇の延長線上にあるが、効果的に地域語(茨詭弁)を活用しているのが特色。方言を活用した会話劇は弘前劇場と渡辺源四郎商店、劇団野の上(山田百次)などによる津軽弁、時空劇場時代の松田正隆の長崎弁、最近では小松台東の宮崎弁と前例には事欠かないのだが、それぞれ方言使用の目的も異なるようで、その中で劇団普通は訛りが入っているのは一目瞭然で分かるが、東京周辺の観客に言葉の内容が分からないということはないということから、出来事をよりリアルに見せるという効果があるのではないかと思う。この作品では入院患者の子供世代が東京に出て働いているということが描かれているが、この「行こうという意思があれば日帰りもできるだろうが、近いかといえば遠くもある」という微妙な距離感が家族の間にある微妙な距離感を象徴するような仕掛けになっていて、それが茨城弁のセリフともあいまってステレオタイプに陥らないリアルを与えているのではないかと思った。
 入院患者を描いた舞台作品としては平田オリザの「S高原から」があるが、「病室」と「S高原から」を比べてみると、「病室」にははるかに日常的なリアリティーがある。とはいえ、その分、現実にもこういうことはあるかもしれないということを超えた物語世界としての広がりはないし、現実を反映しているのかもしれないが、今時息子の(おそらく)オタク的な趣味と全否定して、勉強だけしていればいいなどと言い放つ父親の存在はいかにもステレオタイプな存在と見えてしまって、「そんな人いないだろう」としか思えなくて、個人的にはそういうところは気になってしまった。

入院患者たちを描く、
劇団普通の方言芝居


地方の病院で入院生活を送る患者たちとその家族、病院関係者。その不安と希望と現実が交錯する日々の生活や人間関係、そして人生を作者の実体験を交えて描いた群像劇。
全編茨城弁で紡ぐ劇団普通、初の方言芝居。


その部屋には、喋れるものが集まっている。



日時:2019年9月24日(火)~29日(日)24日(火)19:30 ※初日割引
25日(水)19:30
26日(木)19:30
27日(金)14:00※平日昼割引/19:30
28日(土)14:00/19:30
29日(日)14:00
受付開始・開場は開演の30分前
会場:スタジオ空洞
作:石黒麻衣
演出:石黒麻衣
出演:用松亮
渡辺裕也
折原アキラ(青年団
澤唯(サマカト)

函波窓(ヒノカサの虜)

古田希美恵
松本みゆき(マチルダアパルトマン)
小林未歩

石黒麻衣
スタッフ:演出助手 阿部ゆきのぶ
照明/撮影 ふくしまけんた
宣伝美術 関根美有