青年団リンク キュイ「景観の邪魔」(綾門優季作)Aプログラム@こまばアゴラ劇場
「景観の邪魔」はオリンピックの後2040年ぐらいまでの未来の東京を描きだす。ここでは東京は地震と水位上昇で半分以上が水没してしまっている。綾門優季はそこに住む複数の若者たちを描きながら、東京のそれぞれの場所にいるという土地神さまの動向を通して、東京の没落を描いていく。綾門作品は暴力的で乾いたタッチのものが多いが、今回の滅び行く東京向けのオマージュは見ていて少しせつなくなってくるような情感を感じた。
初日にしてはやや客が少なかったが、東京五輪を翌年に控えた今こそ見るべき作品ではないか。Aプログラムに出演しているのはのんびりしてとぼけた味わいの 新田佑梨(青年団)、ばやき口調がペーソスをさそう長沼航(散策者)、 意思の強そうなところが魅力の野村麻衣(悪い芝居)の3人。あまりない組合せだとは思うが、芝居の質感の違いが絶妙のアンサンブルとなった。
ボトルを並べて、底から光を当てた井坂浩の美術(美術と書いたがこれは照明らしい)も暗闇で光ると美しく、舞台の雰囲気を盛り上げたのではないかと思った。
作:綾門優季 演出・上演台本:橋本清(ブルーノプロデュース)
どんどん嫌いになる方向にいかないでほしい、と毎日のように思います。東京のことです。僕の故郷は東京ではなく、上京してきた頃はすぐに慣れるだろうとタカをくくっていたので、未だに東京に体が慣れていかないことに、驚きを隠せません。中途半端な旅人として、いつもここにいるような気がします。大好きな劇場も大好きな劇団もあるのに。大好きな場所も大好きな人もいるのに、嫌いになりそうなのは辛いです。愛憎半ばする東京を『景観の邪魔』に精一杯、敷き詰めたつもりです。都民の皆様、予め謝っておきます。ごめんなさい。僕はこのように考えました。
綾門優季
青年団リンク キュイ
専属の俳優を持たない、プロデュース・ユニットとして活動中。劇作を綾門優季が担当し、外部の演出家とタッグを組みながら創作するスタイルを基本としている。戯曲は「震災、テロ、無差別殺人など、突発的な天災・人災を主なモチーフとすること」を特徴とする、独自の世界観を構築している。2013年、『止まらない子供たちが轢かれてゆく』で第1回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞。2015年、『不眠普及』で第3回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞。
出演
【Aプログラム】
新田 佑梨(青年団)
長沼 航(散策者)
野村 麻衣(悪い芝居)
【Bプログラム】
長野 海(青年団)
里見 真梨乃
高須賀 あき乃(明るい人類)
冨田 学
野村 麻衣(悪い芝居)
松﨑 義邦(東京デスロック)
スタッフ
作:綾門 優季
演出・上演台本:橋本 清(ブルーノプロデュース)照明:井坂 浩 (青年団)
音響:櫻内 憧海(お布団/青年団)、近藤 海人
映像美術:柳生二千翔 (女の子には内緒/青年団)
舞台監督:島田 曜蔵 (青年団)
衣裳:正金 彩(青年団)
音楽監修:カゲヤマ気象台(円盤に乗る派)※Bプログラムのみ
フライヤーデザイン:谷 陽歩
演出助手:児玉 健吾(かまどキッチン)
制作:半澤 裕彦(青年団)
制作助手:山下 恵実(ひとごと。/青年団)
インターン:渡邊 遥夏(跡見学園女子大学)